31.遭難
誤字脱字、拙い文章すいません
照り付ける太陽に焼かれる2人の少女がいた。
「神崎さん…」
「どうしたでーす…」
今にも息絶えそうな声で2人は会話している。
「暑いです」
「知ってマース」
身体から水分は消え失せ、朦朧としてきた意識の中声を絞り出している。
そうしなければ今すぐにでも意識を失いそうだからだ。
そう、わたし達は現在死にかけていた。
事の発端は出航した次の日にまで遡る。
「神崎さん…どうして食料がこんなに少ないんですか?どう見たって半年分ないですけど」
「元々半年かけてハリフェウスまで行くつもりだったからでーすねー、そんなに長期間もつ食べ物なんてないでーす。だからいくつかの国に立ち寄って買い込むつもりでーす」
なるほど、確かに。
それはそうだろう。
「まぁ、当分は大丈夫でーす」
「そうですねー」
と、ここまではよかったのだがそれから一週間後、食料が尽きたのが始まりだ。
「神崎さん、食料が尽きたのですが」
「大丈夫でーす、そろそろ【カンドナ】という国に着くはずでーす」
「…辺り一面海なんですが」
「ま、まぁ、気の所為でーすよ」
神崎さんは汗を流しながら言っている。
焦っているのがひしひしと伝わってくる。
「焦ってるのが丸わかりなんですが」
「気の所為でーす」
と神崎さんは即答した。
とりあえず考えても仕方ないので体力の消費を抑えるためにわたしは寝ることにした。
そして現在、一日を寝て過ごして3日が経過した。
太陽が照り付け、わたし達の身を焦がしていく。
ただでさえ飲まず食わずで3日だ、体力はもちろん精神的に限界に限界が来ていた。
そしてさらに問題なのがわたしの隣で倒れているこの人、神崎さんだ。
あんなに強かった神崎さんはもういないのだとはっきりと自覚させられた。
神崎さんは一食抜いただけで動けなくなってしまったのだ。
遺言は、
「ゆとりに飯抜きは勘弁…でーす。がくっ」
そう言い残して神崎さんはほとんど動かなくなってしまった。
そうして操舵手を失った我らが【クイーンキョーコ号】ますます身動きの取れない状態に陥ってしまい、わたしの人生の中で一番かもしれないほどのピンチを迎えていた。
照りつける太陽、鳴りやまないお腹。
段々と遠のいていく意識をギリギリのところで引き留めている。
やはり黙りきっていても精神を消耗するだけだと思い、神崎さんに話しかける。
「神崎さん、生きてます?」
「……生きてまーす。ピンチになってからしぶといのがわたし…でーす」
神崎さんは返事をしてくれたのでひとまず生きている事に安心する。
確かに本人の言う通り、倒れるのも早かったが、神崎さんはなんとか耐えているようだ。
先にくたばるのはわたしの方かもしれない。
「大体なんでこんな暑い日に外にいるんですか、わたし達」
「船内の方が暑いから…でーす、蒸し焼きになりまーす」
「ああ、そうでした。あははは」
この船に冷房なんてものは存在しなかった。
当然だ、今まではそんなもの魔法でどうにでもなっていたのだから。
そしてこの船は魔法がなくなる前、神崎さんが封印されていた時に造船されたらしい。
そんな船に冷房なんて夢の装置が設置されている訳なかったのだ。
それどころか船内は蒸し風呂状態だ。
そのため船外に逃げて来ていたのだ。
この照り付ける太陽も船内の気温に比べたらいくらかましということだ。
日光に打たれ続けていると頭がぼーっとし始める。
これは本当にダメかもしれない。
「神崎…さん、ちょっと無理かもです」
「…………」
返事はない。
身体の感覚が浮いていく。
意識も薄れ、自分の身体が自分のものでないような感覚。
そして意識が完全に切れた。
「あっ、お姉ちゃん起きた!」
「起きた!起きた!」
ふかふかなベットの上で意識を取り戻すと見知らぬ女の子が2人いた。
そっくりな外見、少なくともわたしには見分けが付かない女の子達だ。
双子だろうか。
その子達はわたしの寝ているベットの周りをぐるぐると走り回っている。
見知らぬ天井を見上げて生きている事を実感する。
「わたし…生きてるの。神崎さんはっ!」
ベットから起き上がろうとすると、激しい頭痛に襲われた。
そのままベットに倒れこんでしまう。
「つぅぅぅぅ」
頭を押さえて呻き声を上げるが、痛みは引いてはくれない。
「お姉ちゃん大丈夫?」
「大丈夫?」
走り回っていた女の子達がわたしのベットに駆け寄って心配してくれる。
「ちょっと待ってて、パパ呼んでくるからー」
「パパーパパー」
2人はそう言って直ぐに走り去っていく。
しばらくしてから二人の幼女に連れられて一人の男性がやってきた。
細く弱弱しい体つきだが眼鏡の奥に見える眼光だけは鋭く輝いている。
男はわたしに近づく。
「おそらく疲れが出ただけだろう。あと数日もすれば元気になる」
それだけ言って直ぐに立ち去っていった。
「良かったね!」
「よかった!よかった!」
2人の女の子が飛び跳ねて喜びを表現する。
「ねぇ、ここはどこ?」
「私達のお家だよ」
「だよー」
「…この国の名前を教えて?」
『ハトリス!』
2人が声を揃えて叫んだその名を理解するまでに数秒の時間を有した。
「…ハト…リス…?」
ハトリス、ここはあの国なのか、わたし達が…大勢の人々を殺したあの…国になのか。
感情が押し寄せてくる。
息が詰まる。
ここはわたしがいていい空間じゃない。
わたしなんかにここで生きる資格はない。
罪悪感が全ての感情を支配していく。
「あ、ああ、ああああ」
あの光景が。
あの感触が。
血と絶叫の中に居るわたし。
逃げ惑う人々を泣き叫ぶ人々を殺したあの時間が鮮明に思いだされる。
あの時どうしてあんな非道になれたのか今のわたしには全くわからない。
だが、だからこそ、あの日、あの時の記憶が精神に多大なダメージを与える。
「ああ、ああああ」
絞り出すよに声が涙が零れる。
「どうしたのお姉ちゃん!」
「パパ呼んでくる!」
記憶のフラッシュバックは止まらない。
「ああ、あああ、あ」
悔やんでも悔やみ切れない過去が襲いかかってくる。
全身が締め付けられるような錯覚に襲われる。
「少し眠れ」
男の声と共に腕に冷えた感触が突き刺さる。
思考が止まり、強烈な眠気のようなものに襲われる。
力も入らず倒れこむ。
「安心しろ、危険な薬ではない。直に目も覚める」
最後にそんな声が聞こえて意識が沈んでいく。
続きます。
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