30.乗船
誤字脱字、拙い文書すいません。
「それでどうやって巫女さんのところに向かうんですか、ハリフェウスでしたっけ?」
神崎さんと2人港へ向かう歩き道。
晴れやかな青空の下、2人は歩いていた。
「いえーす、ハリフェウスへは船で向かいまーす」
「船ですか」
「いい船が用意できてよかったデーす」
わたし達が乗ってきた船は魔法が消えたせいなのか、波に飲まれたのかは分からないが見つけることができなかった。
魔法も動力に組み込まれていたと巫女さんから聞いた事があったのでおそらく沈んでしまったのだろう。
そのため乗り物の心配をしていたのだが、流石は女王様だ。
船の1つや2つ直ぐに用意できるらしい。
港に着くと明らかに規模のおかしい船が一隻ゆらゆらと水面を漂っていた。
あれに乗るのは流石に気が引けてしまう。
他にも幾つか船は見えるのだからそのどれかがわたし達の船だろう。
そうであって欲しい。
その船のサイズは大きすぎる程に巨大なのだがそれは許容しよう。
大きいだけだならまだいいのだ。
だが、そのカラーには苦言を呈さずには居られない。
何故ピンクなのだ、ピンク、わたし達女性の中でもかなり扱いにくい色ではないか。
多くの場合は子供っぽく見えてしまう色だ。
アクセントとして1部に使うのならそれも良しだ。
何故真っピンクなのだ、この船を設計した人間は一体どんな脳内をしているのか、わたしには理解できない。
そしてあの船首像だ。
黄金の巨像。
水面で反射された光を像がさらに反射し、あの一帯を見ているだけで目が痛くなる。
光のせいでハッキリとは見えず、かろうじてそのシルエットから女性の像と言う事だけは分かる。
剣を携えた女性だ。
その像の周りの部分には龍の死骸のような彫刻が多数見える。
嫌な予感がした。
いや、そんなはずはないだろう。
だってもしそれがわたしなら発狂ものだ。
そもそも、彼女はこれについてどう思っているのだろうか。
その時雲が太陽を隠す。
反射し合っていた光は消え、その像をハッキリと視界に捉える事が可能になる。
それを認識した瞬間に後悔した。
その像のモデルの人物を横目でみる。
「これが私たちの乗る船、【クイーンキョーコ号】でーす!」
神崎さんは、ノリノリで船を指さして船の紹介をしていた。
「いやいやいやいや、これはないですよ」
「わっつ!どうしてでーす!この国で最高の船ですよ!」
神崎さんは驚いたように言うが、驚いたのはこっちだ。
まさか用意されている船がこんなのだとは思いもしなかったし、神崎さんの精神はどうなっているのだろう。
わたしなら自分をモデルにした像があしらわれた船など乗りたくもないし、なんなら廃船にするだろう。
それを神崎さんはキラキラした目で見ているし、嬉しそうだ。
本当にあのクールだった神崎さんは何処に消えてしまったのか。
もしかしたら神崎さんもユニークスキルを持っているのかもしれない、【幼児退行】とか。
「神崎さん、もう一度良く見て下さい」
わたしは船首像を指差して言う。
神崎さんは像を見て一言。
「どうしたです、かっこいいでーすねー!!」
歓喜の声を上げる。
もうダメだこの人。
「…………………」
神崎さんはノリノリだし、これ以外の船を用意するには時間がかかるらしいし、巫女さんの所には早く向かいたいので。
仕方なく乗船を決めた。
唯一の救いは乗り心地が非常にいいという事か。
そんなゴタゴタもありながら真っピンクの巨大な船は港を出航したのだった。
驚く事に乗船員はわたしと神崎さんの2人だけで、操舵などは全て神崎さんが1人でやるという事だ。
こういう所は頼り甲斐のあるお姉さんの部分を残していたらしい。
「そう言えばどのくらいでハリフェウスに着くんですか?」
「うーん、半年くらいでーすねー」
ん?、神崎さんはサラッと言ったが、半年?半年と言ったか。
いやいや聞き間違いだろう。
確認しよう。
「すいません、もう1回言ってもらっていいですか?」
「半年くらいでーす」
頭が真っ白になった。
半年、半年もかかるのか、いや、そんなに時間はかけれない。
わたしはあの未来を体感した。
あんな事になる前に必ず巫女さんを救いたい。
だから一刻も早くハリフェウスに向かわなくてはならないのだ。
「な、なにか、方法はないんですか?早く行かないといけないんです!」
「そうですねー、ない事、もない、でーす…」
神崎さんは力弱く答える。
言いたくない方法なのだろうか。
だが、わたしは聞かなくてはならない。
「教えて下さい」
「…分かったでーす」
神崎さんは一つため息を吐いて言う。
「幾つか方法自体はありまーす、ただ現実てきではないでーすよ」
「それでも、可能性があるなら、教えてください!」
神崎さんは頷き、話し始める。
「1つ目がユニークスキルの保有者を探す事でーす、これは殆ど不可能でーす。世界にら10人しかいない保有者の中からさらに船を早く進める異に使える能力となると、かなり厳しいでーす。2つ目が船を変えることでーす。この船はナルハックでは最高の船でーす。でも、もっと科学の発展した国の船ならもっと速い船があるはずでーす」
神崎さんが言い淀んだ意味がわかった。
ユニークスキルの保有者を探す事は不可能、ならば、選択肢は2番しかない。
そしてこの世界で最も科学の発展した国。
「ウルカトル…」
わたしはその国の名を口にする。
わたし達が召喚された国。
全ての始まりの国だ。
神崎さんにはこの時代の事を話した時にウルカトルの事は説明していた。
だから言いたくなかったのだろう、わたしの為に。
だがふと疑問が過ぎった。
ウルカトルは魔法と科学の共存により巨大な力を得ていた。
魔法が消えた今、ウルカトルに、それだけの船を作る技術があるのだろうか。
「でも、ウルカトルの科学は魔法が無くなって衰退したんじゃ」
「それは大丈夫でーす、ウルカトルは間違いなく今でも最も発展した国デーす。なんとかって科学者が1人で建て直したらしいでーす」
神崎さんは仮にも一国の女王だ。
その耳には多くの情報が入ってくる。
そんな神崎さんの情報は十分に信憑性の高い物だろう。
何より科学者には心当たりがある。
「グリフィス・オドネル…」
わたし達の前に最初に立ちはだかった強敵の名を声にだす。
間違いなく最強の敵だった。
前回のナルハックでの襲撃も神崎さんがいなければわたしは死んでいただろう。
そんな顔も知らない人物を思い浮かべる。
ウルカトルに行くのに抵抗がないと言えば嘘になる。
だが、行かない訳にはいかないだろう。
巫女さんを救う為ならそれくらいの事はやらなくてはどうする。
「行きましょう!ウルカトルに!」
「リリィ…わかったでーす!」
こうして進路は決まった。
わたし達の長い長い旅の始まりだった。
続きます。
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