27.魔法のない世界
誤字脱字、拙い文章すいません。
私は産まれた瞬間から何も持っていなかった。
私は捨てられた。
10歳になる頃には私は男共の玩具だった。
当時の私にそれがおかしい事だ教えてくれる人間などいなかった。
それが普通の事で、私だけじゃないと信じていた。
他人にとって私は自身の欲求を満たす道具でしかない。
私は人になりたかった。
人ならば、人間ならば、復讐をするのだと。
それは私に教えた。
だから、私は殺すのだ。
話は数日遡る。
世界から魔法もスキルも消えた日から1週間が経った頃だ。
現在わたしは神崎さんの計らいでわたしはナルハック郊外にある家に住ませてもらっている。
素朴な家だがどこか落ち着く住みやすい家だった。
わたしは今ナルハックで商売をしている。
決して裕福ではないが充実した生活を送っていた。
そんなある日の事だった。
コンコン
戸を叩く音がしする。
「はい、少し待って下さい」
わたしが戸を開けると勢いよく神崎さんが飛び出し、抱き着かれる。
「久しぶりでーす!」
「わっ、神崎さん?どうしたんですか突然、女王の仕事が忙しいって」
神崎さんは現在ナルハックの女王だ、昔この国を救った関係で元々王の上の位に彼女は置かれていたらしい。
彼女が封印から解かれた今、名実共にナルハックの女王となった訳だ。
そんな環境のなかで忙しい毎日を送っているはずの神崎さんの突然の来訪にわたしは驚いた。
「抜け出してきたでーす、大臣達の頭が固すぎて疲れたよパトラッシュでーす」
「なんですか、それ」
「oh...この名シーンを知らないでーす?」
神崎さんは偶に訳の分からない言い回しを使う。
なんでも召喚される前の世界のものらしいのだが、わたしには記憶がないので覚えがない。
そもそも神崎さんが召喚されてからわたしが召喚される迄かなりの期間が空いたはずなので記憶があっても知っているかは不明だが。
「それで疲れたから抜け出してきた、それだけじゃないですよね」
「もっちろんでーす!リリィに伝えたい事がありまーすよ!」
神崎さんは笑顔で言う。
疲れたから抜け出したよりもその伝えたい事をわたしに伝える為に抜け出して来たという方が彼女の真意のようだ。
「巫女って人の目撃情報でーす!」
「えっ?本当ですか!」
巫女さんはあの日、世界から魔法が消えた日にその姿を消していた。
わたしも商売の傍ら巫女の情報を集めていたのだが、めぼしい情報は手に入らなかった。
「本当でーす!本人も巫女と名乗っていたそうですし、リリィに聞いた特徴とも合ってまーす」
「巫女さん…よかった、わたし、わたし…もう会えないって…う、うぅぅぅ」
わたしは泣いた、巫女さんの事は既に亡くなっていたのだと思っていた。
そんな巫女さんが生きていたのだ。
嬉しくない訳がない。
「そ、それで目撃情報って何処でですか?」
「それはでーすね、ここから東の方の国でですね、ハリフェウスと言う所でーす」
「…ハリフェウス、そこに巫女さんがいるんですね」
「いえーす!」
だが、わたしには交通手段がない。
船は魔法が無くなった時に沈んでしまっていた。
「どうすればそこに行けますか?」
「それは簡単でーす、私を同行させてくれればいくらでも船はだしまーす」
「え、どうして?」
「私もその巫女って人に興味がありまーす会ってみたいでーす」
神崎さんは笑顔で言てっいる。
恐らく断ってもついてくるだろう、そもそも断った場合ハリフェウスまでの交通手段がない。
もともとわたしに断るという選択肢はなかった。
「わかりました。わたしを巫女さんのところまで連れて行ってください!」
「絶対に甲子園に連れていきまーす!」
「甲子園…てなんですか?」
「oh…知らないですかー。一度言ってみたかっただけでーす気にしないでくださーい」
「はぁ」
また神崎さんの世界の言い回しだろうか、わたしは首をかしげるが神埼さんは笑って誤魔化すばかりだ。
「それでいつ出発するでーす?」
「でも、王女の仕事が忙しいんじゃ?」
「ちっちっちぃ、そんなもの大臣たちに任せておけば大丈夫でーす!」
なんとも一国の主とは思えない言動だが神崎さんはどうやら本気で言っているらしい。
なんだかよくわからないがそう思わせるに値する表情をしている。
端的にまとめると駄目な大人の顔だった。
ここ数日でこの国の色々な人々と関わってきた。
昼間から遊び、酒を飲み、まるで我々が人生の勝者だとでも言いたげにその日を謳歌する人々を。
今の神崎さんの言動、表情は、そんな駄目な部類の大人達そのものだった。
その道の人々を何人か見てきたが全く同じものを感じる。
「大丈夫なの、この国」
ため息交じりに心情を吐露するが神崎さんには届かなかったのか、親指を立ててなにかをアピールしている。
この国はもうだめかもしれない。
少し前までの頼りになるお姉さん感はどこに行ってしまったのか。
魔法やスキルと一緒に消滅したのか。
「結局いつ出発するでーす、私はなるべく早い方がいいと思いまーす!あ、仕事さぼりたいとかじゃなくてですねー、巫女さんが心配だなーて思ってるからでーすよ!」
神埼さん、本音全然隠せてませんよ。
わたしは思ったことを口には出さずにそうですえスルーという大人の対応をする。
「そうですね、わたしも早く行きたいのは山々なんですけど遠出するなら準備が、そうですね……三日後にしましょう」
「了解でーす、三日後に港で!会いましょー」
独特の言葉の区切りで了承し、神崎さんは帰っていった。
「ふぅーあの人なんだか変わりすぎじゃない?」
なぜか高い神崎さんのテンションから解放され、息を吐く。
そう、わたしの神埼 京子という女性に対する評価は出会ってから日を追うごとに目まぐるしく変わっていた。
初めて出会った日、彼女はクリスタルに封印されておりその外見を見る事しか敵わなかったが、その漂うカリスマ性や、気高さのようなものを感じた。
実際に封印を解いてから話した時もいかにも頼りがいのありそうなイメージ通りの人だった。
たが今はどうだろう、魔法がなくなりわたし達が勇者でも英雄でもなくなった現在。
彼女に頼もしさを感じるだろうか、いやない、断じてない。
英雄だったから、力があったから、などとそう言う事ではないのだ。
カリスマ性などの、スキルの力ではない、その人間が元来持ち合わせている能力のことだ。
現在の神埼さんは女王として日々激務に追われているらしいがしっかりと仕事はこなしていると聞いていた。
だが現に今日、抜け出してきているではないか。
「…どうしてあんなになっちゃったんだろう」
わたしは溜息を吐くが内心はすこしうれしかったのかもしれない。
勇者として世界を救う使命を背負わされた女性が笑顔で現在を過ごせていることに。
あの明るい性格はあのままの世界だったら見ることは無かったかもしれない。
どうして、世界から魔法が消えたのかはわからないがもし人為的なものだというのならその人が真の勇者なのかもしれない。
少なくとも救われた存在がそこにいるのだから。
それは正しい事だったのだろう。
そんなことを考えながら今日は眠りにつく。
「もうすぐ…会えますよ…巫女…さ…ん……レースも…きっと…見つける…から……………すぅーー……」
続きます。
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