運命の始まり 日常の終わり
二人が去った後
電柱の上の空間が喋る
「陛下、姫はご存命です」
「そうか・・・・・・」
意味深な表情で報告を受けたのは先程の二人がいた世界とは違う
いわば、異世界といったところ
しかし霊界と言ったものではなく
人がいて、食料となる生物がいて
緑豊かなところ以外はこの世界と相違ない
少し昔にひと悶着、つまり大きな戦争があった
一味違う運命を辿った日本という感じの世界
簡素に言うと戦争する人たちが強すぎて極端な滅びかたをして
緑が無造作あり、そこに生き残りの人間達で構築しているだけだから
ほとんどファンタジーの世界
なぜ、そこで異世界と交信する技術があるか?については
単に残ったロストテクノロジーだったから
それは世界を壊すほどの戦争を起こす世界だから
当然にすごい技術がある
でもそんな世界でも限度がある
こっちの世界でも電波の届かない場所からは
通話もできなくなることもあれば
できても制限があるところがあるように
異世界から見たら異世界で制限なしに通話は難しい
しかもこの世界は無数に色んな周波数が交差し、阻害されたりすることもある
そんなこんなで簡素な通信しかできない
一言、二言の通話は一分も経たずに終わる
その短い時間で命令が下るのは行く前に打ち合わせしておいたからだ
これだったらこうで
もしダメだったらこうだと
「まずはあの男か・・・・・・」
そう呟くとマニュアル通りに作戦に移る
そしてそんな報告がされていた同時刻
二人は呑気にファミレスでなに食べるかをあれは安くてうまいだったり
ドリンクバーでどんな飲み物を作るかとか
傍から見ると完璧に恋人というより友達同士の打ち解けた二人だ
「ねえねえ、サイダーにコーラ混ぜたらすごいことになるんじゃない?」
「やめろ、服にかかったらねちゃねちゃするだろ」
「えー、つまんない」
「棒読みやめろっ」
ファミレスに着くと何名か聞かれ席を案内される
無陸は周子の正面に座ったが周子は移動してさも普通に隣に座る
「じゃあ、ドリンクバーとハンバーグとごはんのセットで」
「私も一緒で」
いつもパンドラカレーの時は周子が助けてくれていたため
ファミレスには慣れていた
でも、毎回来る割にはハンバーグとごはんのセットにドリンクバーは固定注文だ
毎回の様にハンバーグを注文しているため
店員からはハンバーグの好きな客と思われている
あだ名的にはハンバーグコンビとでも言われているかもしれない
そしてハンバーグを食べ終えた二人はドリンクバーをデザートに
色んな味を実験してある意味で満腹になっていた頃に
ドアが一人でに開くのを適当に目をやった先に見つける無陸は、少しゾッと背筋がなぞられる
「いっいまっドアが一人でにっ!」
「ほう、幸せ過ぎて幻覚かい?」
「ちげえって!」
小さくそして強く反論したが
笑う周子の顔を見て
冷静になり客観的に考える
「まあ、見間違いだよな・・・・・・」
少し疲れたのかと思い周子が作ったもはやゲル状になった
サイダーともブルーハワイとも取れないカラフルなジュースを飲み干す
「いったね~、まさしくシャチョさんいい飲みっぷりダネーだねっ!」
「なんか違う方面行ってるぞ?とりあえず勘定はおれが払うから帰るぞ~」
「おお~太っ・・・・・・いや、逞しい?」
「迷うなら言うな」
軽くチョップして勘定を済まし夜道を二人で歩く
「こうしているとなんか付き合ってるっぽくない?」
不意に遠回りの告白をされる
しかし、これは毎回だ
救ってもらえるのはありがたいがたまにドキッとさせられる
でも今回は居心地がよかった
「そうだな」
そっけない返事だったが周子にとってはとてもうれしかったらしい
「うー、そんな反則はだめだよ・・・・・・」
久々に照れる周子を見る
でも考えてみると腐れ縁とはいえ
こいつとは縁は切りたくない
結構、大切な女子だ
まあ、女子というより親友だ
こういう時にしか勝てないので追い打ちをかける
「実はタイプなんだよな~周子って」
「それはこれに似ているからですかな?」
そっとカバンからセクシーな類の漫画をだす
一気に血の気が引いた
女子からしたら最低そのもので
一応、女子の周子にもバレたくなかった
そんな黒歴史を手中に収められて少し後悔した
追い込むんじゃなかったと
「一応、私に似てるよね~」
「なっ何が言いたいっ」
「いや~無陸が私のものになるなら?漫画ではできないことも好き放題にできるよ?」
「いや、ないな」
「えーっ!即答っ?!」
調子に乗らしたくないので急ごしらえの嘘を全力でつきとおす
「じゃあ、奥手を使うしかないなっ!」
やばい、調子に乗り始めるっと思った瞬間に
背景に違和感を覚える
「周子っ!」
なにかかはわからなかったが空間の景色が少し人型に歪んでいた
その何かから避けようと抱きしめるように周子を庇いながら転がる
「なかなかだな・・・・・・」
人型の歪が声を出す
そして徐々に姿が露わになった
長い白髪に青い目
ロシアの美少女のような雰囲気の男は
周子に向き直りひざまずく
「これはリタイナ姫・・・・・・ご無礼をお許しに」
「誰?」
少し怯えた様に無陸に隠れながら周子は答えた
それは簡潔に昔、誘拐されたことがあるためだ
その時を思い出すのは久方ぶりだがまた《リタイナ姫》というワードによってだ
周子は新学するたびその名で呼ばれ、その後に誘拐される一種の呪いじみたジンクスがある
「またっ・・・・・・なの?」
「何言ってんだよ、俺が守るから大丈夫だ」
普通に流れる様に放った声が周子を勇気付ける
「この時の為にどんだけ鍛えたと思ってんだ!」
さながらヒーローの様に拳を突き出す
しかし、かわされて距離が縮めないくせに
妙な感触を拳に味わう
当たっているは当たっている
だが柔らかいし風の感触と布の感触が同時に来る様な感じだ
「この程度か?偽ナイト様は」
軽く嫌味を放つと
今度は一瞬で間合いを縮め無陸の目の前に現れる
気が付いた頃にはお腹に掌底が当たる感触がした
「ぐはっ!」
その場で倒れこむと周子がそばまで分け目もふらずに駆け寄る
「だっ大丈夫っ!?」
倒れこんだ無陸はその場で気を失った
遠のく意識の中
涙目の周子を見ていた
意識の外で白髪の男が何か言っているのを感じたがなにかはわからないまま完全に意識を失う
「周子っ!」
布団を押しのけ上半身をバネの様に起き上がる
周りは清潔な白とそっけない茶色の棚が飾られた病室だった




