17、確かに人生ハードモードでした。
「ゲーム...、乙女ゲー?って。
それはさすがに...、無く、ない?」
「そうか。そう思うのか。
だよね、自分の日常を、これゲームですって言われても納得できるもんじゃないよね。じゃあ、知ってる内容言ってみるね」
「剣と魔法の世界で、魔物がいて魔王もいる。
そしてわたしは勇者。主人公だね。
貴方はレイモンド・メーガネ。
この街の神父で、回復魔法使い。
代々神父の家系で、勇者選定の儀式で神の神託を受け、勇者を見つける。
その後勇者と王都へ向かい、勇者パーティーの一員になる。
ふわふわ金髪、碧眼の美青年。
性格はちょっと高飛車で、上から目線。
好感度が上がると、ツンデレに。
世襲神父で親の跡を継いだばかりで、いまいちヤル気がない。
好みのタイプは母親(巨乳)。
マザコンが災いして、今まで恋愛経験がほとんどない。
ちなみに「最初に遭遇する攻略対象が、ショタのマザコンとかねーわ」とネットとわたしが騒然。
好感度の上げやすいキャラとして有名。
プレイした感想と、公式設定資料集からの情報だけど何か違うところある?」
「~~~~~~~っ!!!」
身悶えるしかないっ!!
ベッドへ身を預け、ゴロゴロと転がる。
「ああああああああっ!!」
合ってるうううーーー!
だいたい合ってるーーー!!!
設定に書いてあるの?「巨乳好き」!
死ぬ!恥ずかしさで死ぬ!!
え?好き、までは書いてない?
そこに救いはある?神はいる?
いねぇよなぁぁ!だって事実だもんなあぁ!
俺、言うほどマザコンじゃないと思ってたけど、公式が認めるマザコンだった!!
ショタじゃねーわ!ふざけんなショタとか言われた事ねーわ!
...こっちの世界に単語としてないだけか!?
好感度があげやすいキャラとして有名!!!
チョロいって事!?
バカな!??
...すいません、自覚あります。ああああ。
俺はチョロい男です...。もうそれでいいです...。
そして、「恋愛経験がない」!!!
辛いー。公式に言いきられるのマジ辛いー。
世間に公表されてるとか、本当辛いー。
「ワカリマシタ...、ほとんど、合ってます...」
何もかもを、勇者には全て知られていそうで怖い...。
「他に、その公式設定資料集には俺のエピソードってあるんですか...?」
「凄いダメージ受けてる...。
敬語になっちゃってる...。
うーん、他のエピソード?
学生時代のとか少しあった気がするけど、言う?」
「言わないで!お願い!言わないで!!」
ぜっったいにろくなエピソードじゃねぇ!!!
「ゲーム...、ゲームなんだ、そうか、ははっ」
妙に納得してる部分はある。
確かにゲームの世界っぽいって思った事は何度もある。
それにしても、設定のせいで恋愛が出来なかったとは。俺のせいじゃなかった、と少しホッとしたけど、それって結局俺がいくら努力しても無駄って事になりませんか。
確かに人生ハードモードだな!!
「信じて、貰えた?」
うん、アレだね。
「信じるしかない、かな?」
まだ考えがまとまらないけど、納得してる部分があるから、もう信じてしまっているのだろう。
「俺、乙女ゲームってやった事ないんだけど、これどんなゲームだったの?」
「男の人はあまりプレイしないジャンルだよね。
でもキミ勇は...、このゲームの通称ね。
キミ勇は、冒険要素が強くて、凄く作り込まれてたの。出来が良くてその辺りの評価が高くて。ロールプレイングゲームとしても結構幅広い層に人気あったんだよ」
「へぇー。あれ?男はプレイしない?」
「うん。あんまりね。女勇者が冒険しながら男性の攻略対象者と恋愛するゲームだから。男の人でもプレイしてる人もいたみたいだけどね」
「女勇者」
「うん」
「女勇者?」
「うん?」
「...女性?」
「え」
「つかぬ事をお伺い致しますが、勇者様のお名前は...」
「星野谷 遥っ!性別、女っ!」
俺の勘違いをお察しになられた勇者様が怒っておられる...!
自分がされて嫌だった事を「彼女」にしてしまった。
ショートカットに、こちらの世界の男の子が着る地味な色のダボッとした服装、最初の印象のみで完全に男だと思い込んでいた...!!
彼じゃなかったー!
そもそも乙女ゲームなら、主人公が男じゃ話しにならねぇー!
アッー!♂になってしまう!
「し、失礼しました。本当ごめん。男の子の服装だったから、てっきり同性だと思い込んでた」
「まぁ、違う国っていうかここ異世界だし、トラブル防止にそう勘違いしてくれたほうがよかったって言うか。それを狙ってたのもあるんだけど...。
日本人同士でずっと勘違いされるのはちょっとショック」
ああ、俺も女性に見られるとショックだからすごくわかる...。
「すいません、本当申し訳ない」
「あんまり謝られてもなんか腹立つな」
「わかる」
わかるならやめてよ、って笑ってくれた。
よかった。
うん、思い込みのフィルターを外せば、ちょっとボーイッシュなだけで可愛い女の子だ。
「なんだか、ちょっと眠くなってきちゃった」
「ああ、だいぶ遅い時間になっちゃったな...」
ベッドでゴロゴロしたまま会話してたから、さっきから身体はだるくなってきていた。内容が内容だから、頭は冴えていたけど。
...はっ!!!
「夜、若い女性の寝室のベッドに、男がいちゃダメだろ!!」
失念していた!!
「こっちの世界じゃ、同じ部屋で男女が夜を過ごしたら即結婚だと思われてもおかしくない!!」
まあ、日本でもそれはあるかも知れないけど。少なくともこちらの世界のほうが、そういう関係ですね、ご結婚ですね、と判断される。
「この状況はすごくマズイ。俺もう部屋出るよ。
話しはまた明日で。ごめんね」
「あ、うん」
慌ててベッドから降りて、自室に帰る為部屋の扉を開けると...。
勇者様の部屋の前に、複雑そうな表情で静かに涙を流す父様がいた。
「レイたん...。こんな遅くまで女性の部屋に...。
挙式の準備必要?」
「い、いらないいらない!」
ヤバイ、俺以外は勇者が女性だとわかっていたっぽい。
ヤベェ。
「やっぱりゲームキャラのレイモンドと違うなぁ」
勇者こと遥の呟きは、誰の耳にも届かなかった。
乙女ゲーム未プレイで書いてしまいました。
それ乙女ゲームじゃない、と思われたら...、とソワソワ。




