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18、旅の始まり。

おはようございます。

あまり眠れませんでした。

勇者様はゆっくり休めた?



そりゃようござんした。

こちとら日本中に素性やら性癖やら恋愛履歴(履歴なし)まで晒されてると知っちゃあ、身悶えからの寝返りが止まらねぇってなもんでござんすよ。


ささ、勇者様。

たんと朝餉をお食べになっておくんなせぇ。

もうじきに長い旅路の始まりでござんすよ。腹が減っちゃあ戦もできねぇって昔っから言うじゃあねぇですかい。


「レイ、やさぐれからのキャラ崩壊が酷い」


「はい。存じております」


朝食前のやり取りである。

いい笑顔で熟睡出来たと言う勇者様ことハルカ強い。知らない家だろうに。よく眠れたのならなによりだが。


「ゲームの中では何度か来た事あったから、知らない家って感じでもなかったよ」


「あ、そうか。それもなんか不思議な感覚だわ」


「うん、わたしも」


でも、間取りとかまでは知らないけどね。

ゲームだと着いたらすぐ客室かレイモンドの部屋だったから。


話しを聞けば聞く程に、彼女はゲームとしてこの世界の事を体験していたんだと理解できてしまう部分が増えて行く、その違和感。


「ゲームだとこれからどう進むの?」


「王都に向かうよ」


「一応馬車で向かうつもりでいたけど、それで大丈夫?荷物もあるからさ」


「うん。馬とか乗れないから助かる。

そうか。荷造り必要だよね。何準備すればいいんだろう?」


「ゲームだとその辺どうなの?」


「えーと、スタートの時は初期装備と初期のエンだけだったよ、確か」


そう、この世界の通貨はエンと言う名だ。

なんの捻りもないが、俺としては覚えやすくて助かっている。


「食料や着替えなんかはないのか」


「...ゲームの中ではおなかすいたりしなかったし...。

装備をかえる以外で着替えもしなかったもの。汚れるとか考えもしなかった」


「あー。だよなぁ。でも実際に着るってなると鉄鎧を装備するにしたって、素肌で直接鎧付ける訳じゃないしなぁ」


中に下着やシャツを着る。そして当然着ていれば汗もかくし洗濯も必要になる。


「不思議ね。すぐに出発していたシーンだったのに沢山の準備が必要だなんてね」


「馬車で三日の距離だからね。着の身着のままってわけにはいかないよ」


「三日もかかるの!?」


クリックして移動、とはならないのだがなかなか感覚の差は埋まらないようだ。


「わかってはいるつもりなの。キミ勇の世界にきてから、普通にお腹はすくし眠くなるし。お風呂だって入りたい。疲れるし、風邪だってひいたし。

昨日の勇者見極めの儀式だって、あんなに騒ぎになるなんて思わなかった」


勇者がみつかった!

あたりは歓声に包まれた。

こうして勇者は魔王退治に旅立った。


...みたいなスタートらしい。


大雑把!

めちゃくちゃ大雑把!


「そういえば、こっちに来て半年だっけ?

半年の間どうしてたんだ?」


「それが聞いてよ!

勇者見極めの儀式のイベントは知ってたの。

まあ、一番最初のイベントだしね。

いつやるのか聞いたら年に一回で春にやるから半年後だって言うし。神様なにしてくれてんの!ってなったわ」


「本当に適当なんだな...。大丈夫か心配になってきた」


最初はハルカの見た目もあって、他国、しかも遠くの国からの難民扱いで保護してもらえたそうだ。

そこから自活の為、紹介された仕事をしながら待っていたんだとか。


「旅立つ前にする事、たくさんあるわ。

借りてた部屋もそのままには出来ないし、仕事場にだって声かけなきゃ。お世話になった人達に挨拶したいし」


ゲームの世界なのかも知れないけれど、生活している人間からすればやっぱり現実なんだ。


「そうだね。手伝うよ」


結局、レイモンドとハルカが旅立つまでに二日程かかった。

その間、荷物を準備する段階で、ハルカのアイテムバッグには無限に物が収納できて、かつスターテス画面で中身が確認出来ると知った。


「アイテムバッグすげぇ!スターテス画面とか!」


ちなみに俺はアイテムバッグもないし、スターテス画面も出せなかった。悲しい。本当に悲しい。


ハルカのアイテムバッグのお陰で、見た目小さなポーチにかなりの量の旅支度がすべて入った。

重くはならないし、食べ物も悪くならないとめちゃくちゃ高性能。

これからどういう旅路になるかわからないので、野営用品も水も大量に準備した。

正直、それいるか?って物も入っているが、ないよりはあったほうが、と過保護なメーガネ家の面々に色々持たされた。


「もう大丈夫だから!父様、パン屋丸ごと買い占めるのやめて!

え、もう会計も済んでる!?もおぉー!!」


「母様!?そんなに同じ下着ばっかり大量にいりませんから!使い捨てにでもするつもりですか!

ちゃんと洗いますから!自分で!

ジャブジャブの実の粉と洗濯板持ちましたから大丈夫です!

あっ!ハルカのバッグに突っ込まないで下さ...、もぉぉー!」


「あ、おじい様、はい、はい、ありがとうございます。

内服薬は助かります。医療用具は一式持っていくつもりです。

え、こんな貴重な薬、いいんですか?ありがとうございます!」


こんな有様だった。おじい様から貰った薬は嬉しかったが。

わが子が勇者と旅に出る。

思う所もあっただろうに、あの父様ですら泣かずに、普通に出かける前の挨拶でもするかのように、


「気をつけていってらっしゃい」


と笑顔で送り出してくれた。

いつも通りのその姿に気づいたら、軽い気持ちでいた俺のほうがなんだか泣きそうになった。


「必ず二人で元気に帰ってらっしゃい。レイモンド、ハルカ様をしっかりお守りしてね」


母様が笑顔で俺を抱きしめる。次にハルカも。


「いって、きます!」


こうして、俺とハルカの旅がはじまった。



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