15、日本語!?
その後の混乱は大変なものだった。
勇者=神話級のレアポップ
みたいなものなので、例えるなら田舎のお祭り会場に大人気アイドルが飛び入り参加したような状態になった。我ながらわかりにくい。
観客は大興奮、ファンが感動で倒れ(この場合、神を熱心に信仰する方々をさす。ご高齢の方が多かった)、さらに話しを聞きつけた人達がゾクゾク集まり収拾がつかない危ない状態に。
人々が勇者を一目見ようと押しかけてくるので、教会内部は人の圧でどんどん危険な状態になっていった。
「危ないので押さないで下さーい!下がってー!
皆さん危険です!押さないでー!!」
誰かメガホンをくれ!!
あちらこちらで、
キャア!
痛い!
踏まないでよ!
勇者はどこだ!
押すな!
と叫び声があがりだす。
勇者は身長が低めの少年だった。
近くにいた筈なのに、人、人、で姿が見えない。
このままでは怪我人が、最悪死人が出る!
「ダメだ、仕方がない!下がれないなら!」
『止まれぇ!!!!!』
自分の中の、ありったけの魔力を込めて詠唱もくそもない魔法を放った。
ぐわっ、と地響きが鳴ったと思うと、次々と教会内部の人達が止まる。倒れ出す人もいる。
よしっ!!
ああああっ!
ごめん、やっぱりよしじゃないー!
人が多すぎて、人の上に人が倒れ込んでる場所もある。
自分より大きな人間の下敷きになる人がいたら大変だ。
教会の外から覗いていた人達が、急に倒れ出した人達を見てギョッとしている。
「動ける方!みんな手を貸して下さい!
倒れてる人優先に、外へ運び出して下さーい!!」
全ての扉を開放し、入口に近い人からスタンの魔法を解いて外へ出てもらう。
俺の魔法に耐性があった父様とおじい様は動けたから、二人にも同じようにそれをひたすらに繰り返して、やっと事態が収拾した頃には日が傾きはじめていた。
幸いにも、怪我人は居なかった。
初仕事から大変な事になるところだった。
...いや、大変なことになってますね、はい。
ひとまず人混みから救出された勇者様は、メーガネ家に保護と言うか、匿うことになった。
「ひ、ひどい目にあった...」
勇者である少年は、力なく呟いていた。
「ああ...、本当にひどい目にあった」
まったく同じ感想なので心の底から相槌をうつ。
「あの。貴方、レイモンドさんですよね」
「はい。レイモンド・メーガネと申します。
今日は、なんというか、いや、俺のせいだけでは決してないとは思ってるんですけど...。
騒ぎに巻き込んでしまい申し訳ありませんでした。勇者様」
そうだよ、絶対あのかっるい神様のせいだけど、あの時の現場責任者って考えたら...、俺が謝罪するしかない。
神、許すまじ。
『この人、あの使えない回復役だった人だよね。
なんだかキャラが違うんだけど...。
顔はいいけど、もっと甘やかされたお坊ちゃんって感じで、鼻持ちならないキャラだったのに』
...。
.........。
え。
懐かしい言語が聞こえた気がする。
今のって、なぁ、今のって...、
日本語じゃないか?
「ね、ねぇ、今なんて言ったの?」
「え、あっ、なんでもないです。ごめんなさい」
違う、謝って欲しいんじゃない。
『違うんだ、ねぇ、俺の言ってる事、わかる?
久々だから、ちゃんと話せてるか自信ないんだけど』
久々どころか、レイモンドになってから誰かに聞かせる為の日本語を話した事がない。
俺、日本語話せてるか?
発音おかしくなってないか?
『わ、わかるっ!わかります!
日本語、日本語だっ!!』
勇者様が俺の両手を掴んで、泣きながら話しだした。
『どうして?なんで話せるの?
ねぇ、貴方も日本から連れてこられたの?』
日本から...、連れてこられた?
『違うの?あ、でも貴方レイモンドだもんね。こっちの人だよね?』
あれ?なんで?と呟く少年は泣きながら首を傾げている。
『勇者様...、...信じて、もらえるか...。
自信ないんだけど。いままでの俺のこと、聞いてもらえる?』
うんうんっ!
と何度も頷いてくれる勇者様。
何処から話そうかと思っているところで、母様が勇者様に夕食と風呂をすすめに来た。
勇者様は話しを続けたそうだったけど、すぐ終わるような話しでもない。
とりあえず、先に済ませてから勇者様に使ってもらう客間で話しをする事になった。
家族も勇者の事や神託の内容を聞きたそうではあったけど、まずは直接神託を受けた俺が勇者様と話してからその後の対応を決めるようにした。
今日は...、一日が長いな...。
内容も盛りだくさん過ぎてな。
勇者様が日本人だって事は間違いないようだが、どうも俺が知ってる異世界転生とはちょっと違う気がする。
はぁ~、まずは飯だ、風呂だ!




