12、人生の先輩達。
神父の修行は一応終わったので、次は医者の勉強になる。
ほら、回復魔法もあるのはあるけど、一般的なものではないから医療技術も中世ヨーロッパ感強い割に、想像よりは発達していた。
父様は回復魔法が使えなかったから、おじい様は自分の後は別の医者を招いて診療所を続けるつもりだったらしい。
やっぱり、神父と兼任で医者するのって魔法ありきであってもなければなかなか難しいようで。
俺が診療所も続けようか、と初めて聞いた時、
「自分が医者として救えなかった命を、神父として自分で神の元へ見送るのがはじめは辛くて辛くてなあ~」
と、しょんぼりしながら言っていた。
将来俺が診療所も継ぐかはまだ確定じゃないんだけど、回復魔法が使える以上知識は欲しい。
魔法はイメージが大切だから。
これもおじい様に教わるのかな、と思ってたんだけど、領地内に腕のいい先生がいるそうで、ちょっと距離はあるけどその先生の元へ通いで修行しにいくことになった。
回復魔法なしの純粋な治療の仕方も学んだほうがいいっておじい様が。確かにそうだよなぁ。魔法はメンタル面とか自分のイメージが最善の状態じゃないと下手すりゃ発動もしないし。
「知識と技術、そして経験は自信になる。学んだ事は必ずお前の力になる。頑張りなさい」
のほほんとしたおじい様が格好良く見えた。いや、黙っていればかなりのロマンスグレーな見てくれなんだけどな。
でもなー!あの父様にかなーりそっくりな中身だからなー!
父様の見た目は、俺が産まれる前に亡くなったって言うおばあ様に似ているらしい。
俺は父様似。つまり、おばあ様似。
中身の、のんびりしたところなんかは本当そっくり親子。でも年の功ってやつなのか、おじい様は父様のみたいに泣いたりしない。
俺は父様そっくりだけど、中身は母様似って言われている。号泣している父様を見つめる表情が瓜二つだって。
...でもそれは、誰でも同じ表情になるんじゃないかな...。
修行先の先生は、おじい様よりもっとご年配の大ベテラン医師だった。オリオ先生という。
「メーガネ家の息子か。よく来た。気張らずやんなさい」
普段の言葉数は少ないほうで、寡黙な方かも知れない。
でも患者さんへは真摯に向き合う素晴らしい医師だった。一言一言に重みがあって、技術も、これが魔法じゃないのか、と何度も思った。
よく洗濯した服を着て、治療の前は必ずよく手を洗え。
患者の話しによく耳を傾けろ、子どもの熱は便秘を疑え腹を触れ、吐き気がある時に無理に飯を食わせるな、水分をこまめに飲ませろ。少しづつ。
この辺の患者はよほどでなければ医者にはかからん、全員が大病であるやもとまず疑ってかかれ。
あとは、治すと言ってやれ。治る、じゃない、わしらが意地でも治すんだと。
治すなんて医者ごときがおこがましいと言うヤツもおる。
わしらは神じゃない。
助けられん事もある。
自分に腹が立つほどにある。
だが、わしが言わねば、誰が患者に治すと言ってやれるんだ。
神の救いの声はわしには聞こえん。
もちろん患者も聞こえん者ばかりだ。
まあ、もしかしたら、中には聞こえとる奴もいるかもわからんがな。
聞こえんから、聞こえる声で話してやれ。
治療している間だけ、そいつの神のようなものなんだ医者は。
自分で自分を神だと思うんじゃないぞ?
患者にとっての、話して触れられる、目に見えてすがれる対象になって生きる力を引き出すんだ。
助かる怪我でも、本人がもう駄目だと思っちまったらコロッと逝っちまう事がある。
嘘みたいにあっさりな。
だから、こいつは必ずなんとかしてくれるって思わせる、そんな魔法をかけるんだ。
わしは魔法は使えんがな、必ず生きるんだって心の底から思い込ませる魔法をかけるんだよ。言葉でな。
だから、自信なんてなくても患者の前では自信たっぷりで吹かせ。
「必ず治してやる、踏ん張れ」ってな。
上の言葉は、普段あまりはなしをしないオリオ先生から少しづつ教えられた事だ。
先生の診療所は、いつでも先生に救いを求める患者であふれている。
つまりそういう事なんだと思う。
前世で医療系、勉強しとけば良かったなぁ。
でも成績良くなかったから難しかったかも知れないけど。
今思うと前世の世界は凄かったなぁ。
再生医療とか言ってたもんな。
そんなんこっちじゃ魔法でしか無理だよ。
地球人すげぇなぁ。
魔法も凄いけど使える人間が少なすぎる。
その分だいぶチートだけど。
医者の修行はずっと続けるつもりでいる。
幸い、うちのおじい様はまだまだ現役だし、父様も言わずもがな。
俺のまわりには頼りになる人生の先輩がたくさんいる。学ぶべき事は多い。
今日もオリオ先生と一緒に、患者へ優しく語りかける。
「大丈夫ですよ。我々が治します」
もちろん回復魔法もガンガン使ってるよ。修行中の身ではあるけれど、診察中に練習はないからね。必ず助けるよ。
必ず治してやる、のくだりは、あくまでレイモンドの世界でのお話しであります。ご理解の程宜しくお願い致します。




