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二つ名

前回に次話旅立ちとか書きましたがそこまで行きませんでした


ブクマ、評価感謝です、じわじわ増えてきてうれしいです

 朝起きたコウは、いつもの鍛錬をこなすため、昨日と同じく館の裏の広場を使って日課をこなす。

 その際、驚くべきことがあった。

 昨日、コウが身体強化魔法を使い、その身体で放った技で破壊されたはずの兵舎が元に戻っているのである。

 確か執事のクロウが対処したはずだが、まさか1日で元に戻るとは。

 おそらくは魔法で何かしたが故の結果なんだろう、ほぼ何でもありだからな・・・。

 そう考えつつも部屋に戻り、汗を流したあと部屋で柔軟をしていると、ノックがされる。


「コウさん、起きてますか?」


 どうやらアルメリアが起こしに来たようだ、その声に返事をすると食事の用意ができているとのことなので、柔軟を終わらせて部屋を出ると、アルメリアは待っていたようでドアのすぐ脇に立っていた。


「すまないな、待たせたようだ」

「いえ、コウさんはまだ屋敷の中に不慣れかと思いましたので、ご案内しようかと」

「ありがとう、アルメリア」


 まだ館の部屋割りなどうろ覚えだったコウはこの申し出に乗っかり、案内してもらう。

 食堂に着くと、すでにカインやアーネスト、ミリアは席に着いており、軽く談笑をしていた。


「アルメリア、おかえり。コウ君もおはよう」

「がっはっは!お嬢自ら出迎えされるとは、コウもなかなかやるではないか」


 アーネストのからかいにアルメリアは頬を少し赤く染めて、席に着く。

 その様子を見たカインは、苦笑しつつコウを見やる。

 

「コウ君は今日、冒険者ギルドに登録に行くことになるが、場所もわからないだろうし、アルメリアに連れて行ってもらうといい」

「俺としてはありがたいが、いいのか?」

「はい!まかせてください!」


 ものすごく張り切っているアルメリアに、苦笑して席に着く。

 すると待っていたかのように食事が運ばれてきた。

 昨日と同じく山盛りとなったパンが中央に、今日は野菜たっぷりのスープとオムレツのようなものがメインのようだ。

 コウとアーネストの前には他の人と比べると明らかにでかく、軽く二倍はあるだろう。

 昨日の食べっぷりからこのように対応してくれたようだ。


「では、本日も日々の糧を得られることに感謝を」

「「「「感謝を」」」」


 手を伸ばし始めた一同に倣いコウも手を出すと、スープはじっくりと煮込まれているのか野菜のうまみが凝縮されたようなうまさがあり、もうこれだけでパンが進む。

 しかして、オムレツを割ると食欲を刺激する匂いが広がる。

 中はどろりとした餡状のもので包まれたひき肉だろうものが入っており、その餡は香辛料を使用しているのか肉の味をより昇華させ、まわりの皮(おそらく卵でいいのだろう味がする)とともに食べるとまた味が変化し、これまたパンが進む。

 気が付けばまたも山盛りだったパンはなくなり、コウは一息ついた。


「ちょっと増やしてもらったはずだけど・・・まだいけそうだねぇ・・・」

「がっはっは!やはりおまえがほしいぞコウ!」

「何度も言うがお断りだ」


 あきれたようなカインと、しつこくも騎士団に誘いをかけるアーネスト。

 それをあしらうと、冒険者ギルドとやらに向かうためアルメリアに声をかける。


「アルメリア、少し休んだら案内を頼めるか?」

「はい!だいじょうぶです!」


 しばしの食休みの後に、アルメリアに案内されて館をでて、しばらく街中を歩くとなんだか西部劇で見るような酒場っぽい建物がある。

 まさか、あれじゃないよなぁ・・・と思っていると


「コウさん、あの建物が冒険者ギルドリュト支部です」


 みごとに西部劇風酒場を指さしアルメリアが言う。

 内心「うわぁ・・・」とあきれているとアルメリアがその建物に近づき、スイング式のドアを押して入っていくのを見てコウはそれを追いかける。

 コウが遅れてはいると、アルメリアが冒険者風の男たちに囲まれており、コウは少し警戒、戦闘モードになりかけるが、よく聞けば昨日の件で傷を治してもらった者たちがお礼を言っているようだった。

 中はギルド部分と酒場の部分があるようで、酒場の方で仲間と話し合ったり分け前を分けたりとそういうスペースなのだろう、もちろん祝杯を挙げてまっ昼間から酒を飲んでる奴らもいた。

 聖女様聖女様と、あきれるほどにお礼を言われており、アルメリアが困った風にこちらを見て、助けを求めてくると、冒険者風の男たちの視線だけでなく、ギルド内にいたほぼすべての人間の視線がコウに集まった。

 何やら仲間たちと話をしているのだが、こちらに視線を向けたままであり、何とも居づらい空気である。

 内心何なんだと思いつつも、アルメリアにたかる輩をしっしっと追い払うと、そいつらはすぐに仲間だろう者たちのもとへ戻っていった。


「ありがとうございます、コウさん」

「いや・・・なんか視線を感じるというか思いっきり見られているんだがなんだろうな」

「コウさんはこの街の英雄ですから!」


 アルメリアに聞くとそんな答えが返ってくる。

 向けられた視線は好奇や中には畏怖といった視線も交じっており、とても英雄に向けるような視線ではないんだが・・・

 とりあえず登録を済ませるためにカウンターの方へ向かう。


「ようこそ、冒険者ギルドへ」


 受付嬢だろう人物がそう言って、ちらりとコウの横に立つアルメリアを見ると、


「聖女殿がいるということは・・・あなたが『魔人』殿ですね?」


 ・・・は?

 コウは聞き間違いかと思い聞き直すと


「あなたがA級モンスターを単身討伐した御方なのでは?」

「あのクマウサギのことなら・・・間違っていない」

「ではやはりあなたが魔人殿ですね、お待ちしておりました」

「まてまて、なんだその『魔人』ってのは」

「はい?報告では単身A級モンスターを、しかも素手で倒したとのことですが、濃密な魔力をまとい、単身A級モンスターと圧倒、倒したその姿はまさに『魔人』としか言いようがなかった・・・とのことです」


 事務的な口調ですらすらと答えてくれる受付嬢。


「すごいですコウさん!いきなり二つ名ですよ!」


 アルメリアは何やら興奮したようで喜んでいるようだが。


「その言い始めたやつは誰だ」


 そういって酒場になっている部分に視線をやると、こちらを見ていたやつらが一斉に目を逸らしたのが分かる。


「特に誰が・・・というわけではないので、特定は難しいですね」


 にべにもなくそういわれたコウは、まぁいいかと半ばあきらめていた。


「とにかく登録を頼む」

「こちらの用紙に必要事項を書いてください、と言いたいのですがすでにカイン様のほうから話は聞いていますので、登録に必要なことはほぼ済んでいます」

「ほう、それは面倒がなくて助かるがあとはなにをするんだ?」

「確認のために本人に確認するくらいですね、あとは奥でマスターと会って話をするくらいでしょうか」

「それは面倒事の予感がするんだが・・・」


 コウはマスターと話をすると聞いていやな予感しかしなかった。

 受付嬢はそんなコウの気持ちを知ってか知らずか続ける。


「名前はコウ、出身地などは迷い人のため不明、使用武器は無し、とりあえず確認したいのはこれだけですね。お間違いありませんか?」

「ああ、それで構わない」

「はい、それではコウさんはCランクからとなります。ランクなど説明は必要ですか?」

「そうだな、軽くでいいから頼む」


 そう答えたコウは、ギルドのシステムについて教わる。

 まずランクはEから始まりD、C、B、A、Sと上がっていくが、コウはいろいろと加味されたうえでCランクとなり、登録時点での飛び級は最高Cまでとのこと。Cランクともなれば一人前、Bランクで一流、Aランクは超一流、Sランクは規格外となるらしい。

 依頼はランクにかかわらず一年間受けずにいると除名されてしまうらしいが、Sランクは除外とし、依頼を受けずともその資格は剥奪されないらしい。

 ランクアップは、その力を認められるか、依頼を一定数こなすかで上がるかどうか通達がされるようで、コウはすでにBランク候補でもあるらしい。おそらく依頼を一つこなせば試験を受けるか通達されるとのことだ。

 冒険者同士でのいさかいは、特に取り締まったりはしないが、殺害ともなるとさすがに動くらしい。

 もちろん殺したからすぐ処罰されるわけではなく、どちらが悪かったかなど取り調べをされたうえで、判断される。


「そんなもんでいい、あとは何かわからんことがあったらその時にでも聞くさ」

「そうですか、それではこちらがコウさんのギルドカードとなります。身分証明にもなりますので、紛失されませんよう。もし紛失された場合は一万フォルとなりますので、お気を付けください」


 渡されたギルドカードは大き目のクレジットカードのようなものだった。

 あとこの国の通貨はフォル、というらしく値段の価値は前の世界と同じである。


「ああ、わかった。ところでマスターとやらはいるのか?」

「ええ、ではご案内いたしましょう」


 数名受付嬢がいるのか、あっさりと席をはずし、案内を申し出てきた。

 こちらです、と先導されてついていくコウとアルメリア。

 案内された先は館に似たような執務室で、そこにいるのがマスターなのだろうが、何やらうんうんうなっていた。

 

「ギルドマスター、魔人殿がお見えですよ」


 その受付嬢の言葉に顔を上げたギルドマスター。


「おお、まっておったぞ!」


 その容姿はカインの真逆と言っていいだろう。カインが髪も髭も豊富で、細身なのに対し、髭なしでスキンヘッドでがっしりした体、さらには左目に斜めに刀傷のようなものが残っており、どこのやくざだと言わんばかりの40才ほどの男だった。


「ああ、まずは自己紹介と行こう、わしはガイウスという。元Aランク冒険者で、何の因果かギルドマスターなんぞになってしまった男だ」

「ああ、俺はコウという」


 あっさりと終わらせたコウに、それだけか?という目を向けてきたが首肯する。


「むう、つまらんな・・・まぁいい、登録は終わったか?まぁそこのシーリィは優秀だからすぐ終わっただろう」


 シーリィというのか、そういえば聞いていなかったなと、視線をやると軽く頭を下げてくる。


「それでお前さん、この街を出ていくんだろう?ついでと言っちゃなんだが、ある商隊の護衛を頼みたい」

「護衛ね・・・次の町まででいいなら問題ないな」

「とりあえずはそれで構わない、頼めるか?」


 思ったよりは普通の依頼みたいだが、ある商隊ってのが気になるな・・・聞いてみるか。


「かまわないが、その商隊はなんかいわくつきとかじゃないだろうな」

「ああそんなんじゃない、いろんな貴族のところに出入りしているからな、確実性がほしいだけだ」

「確実性がほしいのに俺なんかに頼むのか?」

「確かにぽっと出のおまえさんに頼むのはおかしいかもしれんが、カイン殿が推す人物だしかまわんだろう、他にも何パーティか冒険者もいるし、商隊の方にも確認はとっている」


 特に問題はなさそうなので、受けることにする。


「助かる、では一週間後北門の方に行ってくれればそのまま出られるはずだ」


 それで話は終わりのようなので、コウは退室する。

 アルメリアとともに、ギルド内を通り、そのまま外に行こうとすると後方からざわざわと「やめろ」だの「しらねえぞ」などの声に紛れて、コウたちに声がかけられる。


「おぉう、おまえさんが『魔人』かぁ?ただのひょろっちい兄ちゃんじゃねえかぁ」


 そこにいたのは馬鹿でかい斧を持った大柄な山賊っぽい冒険者?で、コウのことを知らないのか、こちらのことを見下したように見てくる。

 さらにはアルメリアにぶしつけな視線を浴びせ、好色な色が目に見える。


「いい姉ちゃん連れてるじゃねえかぁ、ちょっとおれっちに貸してくれよぉ」


 そう言ってこちらのことを威圧してくるが、アルメリアのことも知らないとなるとよそ者か?

 アルメリアが視線から逃げるようにコウの後ろに姿を隠す。


「お前みたいなバカに誰が渡すかよ」

「あぁん?にいちゃん、おれっちを馬鹿といったかぁ?」

「馬鹿だろう。俺を知らんのはともかく、アルメリアを知らんのならよそ者だろうが、手を出そうとするならここの冒険者すべてを敵に回してもおかしくはない」

「なんだとぉ?・・・だが今更引くわけにはいかねえなぁ、おれっちと決闘しろぉ、おれっちが勝ったらその姉ちゃんはおれっちがもらうぅ」


 どうやらただのバカどころではなく底抜けのバカのようだ。

 こんなのが冒険者でいいのかね?明らかに悪いやつにしか見えないが。


「別にかまわないが、っと」


 コウがかまわないと言った瞬間に斧を振り下ろしてきた。後ろにアルメリアがいるため避けずに斧の腹の部分を押して逸らす。

 ばきゃっ、とギルド内の床が壊れるが。


「どうやら命がいらんと見える。今後のためにもお前のようなのが冒険者では一般人に被害が出そうだし、少なくとも二度と戦えないようにしてやろう」


 そういって魔力を纏い、身体強化されたコウはそこらの人間では出せない凄みがあった。

 相手は今更ながら、手を出してはいけない人物に手を出したと分かったのか、震えながらに謝罪をするが


「今更許されると思うなら底抜けを超えたバカだなお前は」


 一刀両断するコウに、当たればどうとでもなると思ったか斧を振り回してきた。すでに後ろにいたアルメリアは退避させているので、心配はないが、あえて受ける。


「『金剛身コンゴウシン』」


 受ける前にに使う魔法は、金剛力の防御版というべき魔法であり、その魔力をすべて防御に使うというもので、その効果はほぼ物理攻撃無効となるほどだった。


 ギィン!とまるで金属同士がぶつかったかのような音がでるコウの体。

 それを見た相手とギルド内の冒険者たちが目を剥いた。


「そんなばかなぁ・・・。おれっちの攻撃が効かないなんて・・・」


 この男は攻撃力特化というべき冒険者であり、討伐依頼ならばなかなかの成績だったため、特に問題とならない限りは放置とされていた。

 しかしアルメリアに手を出そうとした時点で、もはやこの男は詰んでいた。

 さらにコウに手を出すなどダメ押しであった。

 コウは肩に当たっている斧をつかむと、腹の部分に掌打を入れる。


「『破刃ハジン』」


 その一撃であっさりと斧が壊れる。

 この技はコウが無手のため昔よく使っていた技で武器を破壊するというものだった。

 今ではそんな武器にも精通しているため、武器をもって襲われても格下ならば軽くあしらえるが、この男は徹底的に恐怖を植え付けてやろうと決めたため、わざわざ武器を破壊する。

 まずは頼みの綱の武器を破壊し、次に膝を回し蹴りで破壊。

 反対側も丁寧に破壊してあげると、何やら泣いて懇願してきているが、無視して肩をつかみ、ゴリッ、と無理やりはずしてやった。

 当然反対側も同じように外すと、もはや気絶しているようだった。

 さてどうしようかなと思っていると。


「そこまでにしてやってくれ」


 ギルドマスターであるガイウスが来ており、コウのことを止める。

 すでにやりすぎな感じではあったが、コウとしてはもっと破壊できるところがあるんだが・・・と思っていた。

 ここまでひどいことができるコウだが、基本的には優しいほうではある。

 残虐性が垣間見えるのは敵と定めたものに対してだけであり、昔数々の修羅場を潜り抜けてきたコウは、ここまでしなければ生き残ってはいなかっただろう。徹底的に破壊することで、敵対するということすらしなくなるようにしむけるため、ここまでするのである。


「どちらにせよ、こいつはここで終わりだろう」


 そういうガイウスの声に嘆息し、


「まぁ、あとは任せるよ」


 そういってアルメリアを伴い、ギルドを去る。

 その際、後方から「やはり魔人か・・・」とか「いや、あれは破壊神とかじゃないか」とかいろいろ聞こえてきたが、気にしないことにして館へ足を向ける。

 はやくも二つ名が増えそうなんだが・・・


いかがでしたでしょうか?


ギルド登録時は絡まれるのはお約束なので馬鹿な男に犠牲になってもらいました。


次こそ旅立の時かも

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