第97話 『魔人の剣聖』
「なんでまたここに来たんだ?」
「修行しに来たんだ」
「修行?」
「俺たちを剣術で強くしてほしい」
「強く…?………理由を訊いてもいいか?」
兄貴は遠慮がちに訊いてくるが、俺はどう返答しようか迷っていた。
『魔王になって世界に君臨するため』と言ってもいいのだろうか。
もし言ったら、兄貴は俺の依頼を断るかもしれない。
それどころか、俺を倒そうとするかもしれない。
そんなことになれば、俺は兄貴を殺さなければならなくなる。
そんなことはしたくない。
そんなことを考えていると、兄貴が、
「………いや、やめた」
「え…?」
「おまえのことだ。何か教えることができない理由があるんだろ。俺が何かしておまえの使命を阻害したくはないからな」
「……そ……そうか」
よくわからんが、何とかなったようだ。
「修行って言ったか?任せとけ。俺はこの二年間、何度も修行を頼まれて何人もの弟子を作ったんだからな」
「弟子って、何人くらいなの?」
ルシアが疑問に思ったことを率直に訊く。
「ざっと百人くらいだな」
「「「百人!?」」」
このたったの二年間で?
そんなまさか。
と思ったが、兄貴の表情はいつまでも真剣だった。
きっと嘘ではないのだろう。
「じゃ、話も済んだことだし、修行始めるか」
ケリウスがやる気に満ちた表情をし、両手の拳を打ち合わせた。
「と言っても、剣で修行するのはまだ後だ」
「え?」
「どういうことだよ、兄貴」
「剣に触れさせるのはある程度の力を身に着けてからだ」
「それって…………」
「おまえらはまずここで訓練してもらう」
そう言って兄貴が指差した方向は、俺たちがここに来るまでに通った森の中だった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
剣の修行するために来たってのに、まさか森で訓練することになるとは思わなかった。
森の中にたどり着き、最初に訓練するのは俺だった。
どうやら兄貴が強くなるために仕掛けたトラップがこの森の中には数えきれないほどあるらしい。
兄貴が説明した内容を思い出す。
「ルールは簡単だ。この森の中には俺が作ったトラップが大量にある。その仕掛けを避けつつ、俺がいるゴールに向かうんだ」
淡々と内容を説明していくが、それってかなり困難な修行じゃないか?
まぁでも、修行だから仕方ないか。
俺たちは黙って兄貴が話すルールを聞き続けた。
「一応言っとくが、即死トラップもあるからな?」
兄貴は俺たちを脅すようにニヤリと悪い笑みを浮かべた。
俺が言えたことじゃないが、兄貴もこの二年間でかなり変わったな。
「とりあえず、これで基礎的なルールの説明は終わったから、森の中について来い」
俺たちは兄貴について行き、森の真ん中まで来た。
俺は悪魔で冷静にこの先を通るつもりだ。
悪いが、俺はここで死ぬつもりはない。
俺はニヤリと不気味な笑みを浮かべると同時にトラップのある森の中へと走り出した。




