第95話 『竜王の加護』
槍を振り付けると、巨大な斬撃が光を浴びて竜王をすり抜けた。
竜王は一瞬で炭と化し、光が消える頃には既に消滅していた。
「終わった、のか」
安堵のため息とともに、一気に疲れが押し寄せてくる。
ピコンッ!
ん?
視界の目の前に板状のものが表示された。
―――――
スキル『竜王の加護』を習得しました。
―――――
ついに手に入れた。
『竜王の加護』の能力は、主に、肌に鱗を出すことができ、他にも爪を伸ばすことができる。後は翼をはやしたり、目を『竜の目』にすることもできる。
竜の目は遥か遠くの物を見ることができる。
ざっくり言えば、人間より視力が遥かに向上するってことだ。
そんなハイスペックなスキルを、俺はついに手に入れたんだ。
「……き……貴様、よくも…!」
殺意を向けてくる竜どもに向かって振り返る。
すると、竜は全員動かなくなってしまった。
その表情は恐怖に満ちている。
無意識に、俺は目を見開いていた。
ピコン!
―――――
スキル『威圧』を習得しました。
―――――
どうやらおまけで『威圧』も習得することができたらしい。
「死にたければかかってこい」
「「「………」」」
「だんまりか。その気になればおまえら全員皆殺しにできるんだぞ?」
それでも黙り続ける竜どもを無視して、俺はチハルを連れて竜の里を抜けた。
さて、また森に入ってしまったわけだが、さっさとみんなを見つけてここからずらかるか。
早速『竜王の加護』が役に立ちそうだ。
俺は目に力を入れ、遠くの場所に意識を集中させた。
すると、ケリウスたちが森の中を彷徨ってる光景が視界に映った。
「見つけた!あの先にいる!」
俺はケリウスたちがいた場所を指差し、そのまま真っ直ぐ進もうとすると、
「ま、待ってください!」
チハルに止められた。
「どうした?」
「ここは迷いの森ですから、真っ直ぐ進んでもラングさんの仲間のところにたどり着かないと思いますよ」
「確かにそうだな………チハル、あの場所まで案内してほしい」
「わかりました」
チハルにまた案内してもらうことになった。
くねくねと曲がりながら進むと、みんなの姿が視界に一瞬映ったのを俺は見逃さなかった。
「ケリウス!」
「ん?おぉ、ラング!」
「ラングさん!」
「一体どこに行ってたのよ」
どうやら俺だけ外れていたらしい。
「ラングも見つかったわけだし、今度こそ竜の里に行こうか」
「そうね」
「あ、そのことなんだけど………」
「?……どうしたんですか、ラングさん」
「実は、竜の里にはもう行ったんだ」
「「「…………えぇ!?」」」
「後、竜王ももう倒した」
「えええぇぇ!?」
「もう事は済んだってこと?」
「せっかく覚悟決めてたのに………」
「悪いな。みんな」
「まぁまぁいいじゃないですか。もう過ぎたことですし」
「ルーベスは優しいな」
「そ、そんなことないですよ!」
ルーベスは頬を赤く染めながら否定した。
何この子、超可愛いんですけど。
「ところで、ラング」
「なんだ?」
「あんたの隣にいる女の子は誰?」
「おまえらと逸れてしまった後に、出会ったんだよ。これから俺たちと旅をすることになった」
「え、えっと、鶴千春です」
「チハルか」
「よろしくね、チハル」
「は、はい」
みんなも見つけたことだし、次の場所に向かうか。




