第92話 『竜の里』
「………あの、ラングさんって、一人でここに来たんですか?」
「否、俺には仲間が五人ほどいる」
「なら、なんで一人で………」
「実は俺、みんなと逸れてしまってな。でも、あいつらのことだ。死んではいないと思う」
「………あいつらが裏切るとは少しも思ってない。でも、もし裏切ったらもうそいつは『敵』でしかない。ただそれだけだ」
そんな話をしながら俺たちは、森の中を何度も曲がりながら進む。
それから数分が経過すると、奥に何かが見えてきた。
「あれが竜の里か?」
「はい、ここまできたらもう真っ直ぐ歩いても迷うことはありません」
普通は曲がって歩いた方が迷うんだがな。
森を抜けると、その先は確かに竜の里だった。
竜どもが一斉に俺たちに視線を向ける。
怪しまれている。
が、襲い掛かってくれば俺が殺すだけの話だ。
みんな何故か擬人化できている。
何故だ?確か魔物は人と契約しないと擬人化できないんだったはず。
もうすでに誰かと契約してるとでもいうのか?
あ、でも確か魔物には、位の高い魔物が『擬人化できる領域』を作ることができると聞いたことがある。
だから竜王がこの領域だけで擬人化できるようにして、竜の里にしたんだろう。
なんてくだらない考察したけど……………竜王はどこだ?
周りを一斉に見渡すが、竜王らしき人物はどこにも見当たらない。
噂だと竜王は、黄金の肌を持ち、その巨体は、上級の巨人族をも上回るそうだ。
巨人族の身長は最高でも100メートルだ。
どれほどでかいんだって話だよな。
でも、所詮は噂。
こんなものを信じるほど、俺は愚かじゃない。
「竜王はどいつだ?」
「ここにはいないようです」
「え、ならどこにいるんだ?」
「すいません。ここ以外に竜王がいるという情報は聞いたことありませんので……」
「マジか………」
少しの間考えると、俺はあることに気がついた。
あいつらを殺せば、危機を察知して竜王が戻ってくるんじゃないか、と。
「行くぞ、チハル」
「え、い、行くんですか?」
俺はチハルを無理矢理連れて竜の里に向かって飛び降りた。
その瞬間、竜どもが一斉に槍などの武器を握り、攻撃の構えをとる。
なんかこの感じ、久しぶりな気がする。
俺は一瞬だけ力を抜く。
数秒経つと、一瞬で近くにいる竜を闇で消し去った。
竜どもから緊張の汗が滲み出る。
「ほら、どうした?かかってこないのか?」
挑発すると、竜どもは顔を真っ赤にして襲い掛かってきた。
次々と向かってくる竜を華麗に避け、後ろを振り向かずに闇で消滅させる。
本気を出してきたのか、竜は元の姿に戻って俺を睨む。
「ようやく、やる気出してきたようだな」
久しぶりの感覚だ。
いつぶりだろう、こんなに楽しく感じたのは。
竜どもと同時に俺は走り出すと、いきなり空から巨大な竜が降りれ来た。
地面につくと砂ぼこりが立ち上がる。
まさか、こいつが竜王か?
竜王の大きな瞳に映る俺の表情はニヤリと楽しそうにしていた。




