第83話 『アレフに復讐』
走ってから数分が経つと、ルシアは立ち止まった。
「ここよ」
ある部屋の扉を指差し、ルシアは言った。
「ここがアレフって奴の部屋か……」
「そうよ………」
ルシアに目を向けると、彼女は手に拳を握りしめていた。
きっと、怒りや恨み、憎しみの感情を懸命に抑えているんだろう。
俺もたまにあるからよくわかる。
「入るぞ」
みんな真剣な表情で頷く。
俺は扉に手をかけると、バンッと勢いよく開けた。
その瞬間にみんな一斉に入り、攻撃の構えをとる。
「…………」
だが、その部屋には誰もいなかった。
「………いない?」
「そのようだな」
俺は構えを崩し、安堵のため息をついた。
「本当にここであってるのか?」
「あってるわよ。この光景、何度か見たことあるから」
部屋の中を見回しながら、ルシアは言う。
するとケリウスが、
「じゃあ、やっぱりどこかに出て行ったとか?」
「なら、この城にいないってことか?」
「城の中にはいるかもしれませんよ」
そんなことを話していると、急に後ろから気配を感じた。
振り返ると、扉の前に騎士の恰好をした女が立っていた。
「私の部屋で何してんのよ」
「誰だ!」
「私?アレフよ」
その名前を聞いた瞬間、ルシアがピクリと反応したのを、俺は見逃さなかった。
後ろ姿を見ているのに、負のオーラを感じる。
「ん?あぁ、あんたルシアじゃない。久しぶり。生きてたのね。てっきりもう息絶えたかと」
「アレフ………」
その声は、地獄の底から湧き出ているような雰囲気を放ち、いつものルシアとは違っていた。
怒りに満ちている。
今は、ルシアに全部任せた方がいいかもしれない。
「あんたのせいで私は!」
ルシアはアレフの前に近寄り、胸倉を掴み、
「人生を狂わされた」
恨みの籠った冷たい声で言い、アレフを睨む。
「汚い手で触るんじゃないわよ」
アレフはルシアを睨みながら、バシッとルシアの手をどける。
「魔人ごときが私に逆らおうなんて一億年早いんだよ!」
剣を抜くと、アレフはそう叫びながら剣を振り、ルシアに向かって斬撃を飛ばした。
だが、ルシアはグルギヴァで手に入れた『呪剣』を腰から抜き、斬撃を切って消した。
「なにっ!?」
「今のあんたに、勝ち目はないわよ」
「く……ふざけんな!」
アレフは怒りに任せてルシアに襲い掛かる。
だが、ルシアが剣を一振りしただけで、アレフが手に持っていた剣は俺手しまった。
そして、そのまま押し倒し、アレフを見下す。
「なんで、私がこんな目に……こんなことがあってはならない!あんたみたいな奴が調子に乗るんじゃないわよ!」
俺もそろそろ我慢の限界なんだ。
さっさと仕留めてくれ。
「黙れ、クズ」
ルシアは冷え切ったその鋭い目でアレフを睨み、何度も踏みつける。
「う、うぅ」
「わかる?!あんたにわかる?!この痛みが!私は今まであんたに、こんなに痛みを与えられてきた!その痛みが、あんたなんかにわかる?!」
不気味な笑いを見せながら、何度も蹴る。踏みつける。
なんだか楽しそうに見える。
ルシアは剣を下に向け、アレフの腹目掛けて下ろす。
剣が刺さり、そこから血が噴き出す。
「許さな……いわよぉ………あんたは絶対に私…が、呪い殺してや……」
アレフは苦しみ、もがきながら、死んでいった。




