第68話 『狂魔の呪剣』
ケリウスはヒュドラの近くまで来ると、剣を思い切り握り振り出した。
が、斬撃が出る前にヒュドラの一匹がケリウスに向かい、剣を噛み砕いてしまった。
「なにっ!」
そのヒュドラは首を振ってケリウスを飛ばす。
そして次に、俺に目を向けた。
ケリウスの方に目を向けると、ケリウスはうつ伏せになって動く気配がない。
頭から血を流しているが、もしかして、死んだってわけじゃあないよな?
「ケリウス!」
「ラングさん!余所見しないでください!」
ルーベスに言われ、ヒュドラに目を向ける。
気づけばヒュドラはさっきより俺に近づいていた。
距離を置こうにも足に激痛が走って立つことができない。
俺は座ったまま後ずさりをするが、どんどん距離が迫っていく。
「く、くそ!来るな!」
がむしゃらに闇を放つが、全部食われていく。
なんで、なんで効かない!
効かないとわかっていても、攻撃せずにはいられなかった。
そんなことを繰り返し、ついには背中が壁についてしまった。
ヒュドラは俺が射程距離内に入ったのか、動きを止める。
そして全部の首を俺の方に向かわせた。
そのとき俺は『死ぬ』という恐怖を感じた気がした。
俺の人生もここまでか……………ん?
俺の目を向けた先には、台に刺さった『狂魔の呪剣』があった。
まだ希望はある。
その瞬間、ヒュドラが口から俺が放った闇を出して俺に向かって放ってきた。
片方の足で少し移動し、何とかぎりぎり避けることができた。
俺は呪剣に一番近いルシアを呼ぶ。
「ルシア、その剣でヒュドラに攻撃してくれ!」
「わ、わかったわ」
ルシアが剣に向かって走ると、それに気づいた一匹のヒュドラが首だけでルシアに向かってきた。
ヒュドラがルシアに噛みつこうとする寸前で、ルシアは剣を握りしめた。
その瞬間、俺は何が起こったのか、理解することができなかった。
ルシアが剣を握りしめた瞬間、ルシアに噛みつこうとしたヒュドラの首が落ちたのだ。
気づけば全部の首も斬り落とされてた。
そしてルシアが構えをとっている。
も、もしかして、これは……ルシアがやったのか?
「ルシア……?」
振り向いたルシアの表情は変わっていないが、どこか雰囲気が違う。
目が凍り付いている。
こいつ、本当にルシアか?
「あ、ありがとな、ルシア。助かった」
「どういたしまして。私、久しぶりに剣を扱ったからちょっと不安だったけど、まだまだ衰えてないわね」
少し雰囲気が変わったか?
見た目や口調自体は変わってないけど、声が低くなったような、大人しめになったような、まるでオーラが変わったようだ。
さっきまでの明るさとは違う、クールさがある。
「……どうしたの…?」
「…………いや、なんでもない。そうだ。よかったからその剣ルシアにやるよ」
「本当!?ありがとう」
「………そういえば、お前って過去になんかあったのか?」
「過去?」
「お前の過去のことだ。前に聞くの忘れたからな。この際だから聞こうと…………」
「わかったわ。教えてあげる。私の過去」
すると、ルシアは自分の過去について語り始めた。




