第52話 『魔の左手』
アリアが持っていた剣は空を舞い、地面に突き刺さる。
後ろにはルシアがなぜかこっちに手を向けている。
アリアは風を起こしながら空を飛んでいた。
「危なかったな。何か嫌な予感がしたんだよ」
「ケリウス、まさかお前が来るとは思ってなかった」
自分から涙が流れているのがわかった。
なんか、久しぶりに涙を流した気がする。
この涙は、どんな感情で流してるのか、わからない。
悲しいから?苦しいから?それとも嬉しいから?
わからない。
でも、涙を流してるってことは、このどれかだろう。
まさか、俺にまだこんな感情が残ってたとわな。
でも、俺は強くならないといけない。
こんな感情があると、俺は強くなれない。
だから、この感情が完全に消さないといけないな。
で、これはどういう状況なんだ?
ルシアが攻撃して剣を飛ばして、ケリウスが俺の前に来て、闇を放つが、アリアに飛んで避けられた、みたいな感じか?
そういえばルシアって、何で攻撃したんだ?
多分属性でだよな?
あれ、ルシアって何属性だっけ?
そういえばまだ訊いてなかった。
後で訊くか。
「ありがとな。ケリウス」
俺は目をこすって涙を拭き、体を痛めながらもゆっくりと立ち上がった。
「そういえば、魔石はどうした?」
「ちゃんと手に入れたよ」
「てことは、後はあいつを殺すだけだな」
「後少しでしたのにっ!でも、ちょっと増えたくらいじゃ、私には敵いませんよ!」
アリアは怒りを露にしながら綺麗に着地する。
地面から植物が生え、蔓が俺たちに纏わりついてきた。
「な、なんだよこれ!」
アリアは横から水の斬撃を出し、こっちに飛ばしてきた。
俺は数本の闇の剣を出し、蔓を一斉に切った。
斬撃に当たる寸前のところで、ぎりぎり避けることができた。
「危なっ!助かった。ありがとな、ラング」
「当たり前だ。大事な道具だからな」
「……フッ、そういうと思ったよ」
「最終手段です」
アリアはいきなり空を飛んだ。
見ると、手から火の玉を出していた。
その瞬間、いきなり雨が止む。
一体何をするつもりだ?
アリアは俺たちにニヤリと不敵な笑みを見せ、その火の玉を森に落とした。
その瞬間、森は一気に炎に包まれた。
「うわっ!」
「熱っ!」
最終手段ってこういうことか。
「あの人正気!?この森って、あの人の森みたいなもんでしょ?」
「俺を殺すためならこの森がどうなろうといいって判断だろうな」
火の勢いが増すのがわかった。
この森がどうなろうと構わねえよ。
早くあいつを殺してこの森を抜けねえとな。
炎が巨大になると、アリアが強風を起こした。
「何っ!?」
炎が俺たちを呑み込む。
「奥の手を出すしかないな」
その瞬間、黒い手のようなものが、ケリウスの後ろから出てきた。
その手は徐々に大きくなり、でかい炎を一気に掴みこんで消した。
「ケリウス、その手…」
「ん?ああ、これか。俺のスキル、『魔の手』だ」
魔の手……そんなスキルが存在したのか。
そのスキルがあれば……俺のこの左腕も…。
「ケリウス」
「ん?」
「確か、お前には付与魔法が使えるんだよな」
「あ、ああ、そうだが」
「だったら、その魔の手ってやつを、俺に付与してほしい」
「え、なんで」
「いいから早くしろ!」
「わ、わかったよ」
ケリウスは俺に手の平を向け、目を瞑る。
顔の表情が硬いことから、手に力を込めてることがわかる。
ケリウスは声をあげると、目をパッと開けた。
手からは黒い靄が放たれている。
その靄が俺の左腕のところに当たると、徐々に腕の形を作っていった。
やった。手が手に入った。
試しに動かしてみる。
「おぉ!動くぞ!ちゃんと思い通りに動いている」
「危ない!」
危機を察知し、瞬時に避ける。
「浮かれてたら死ぬかもな」
「早く倒すぞ」
「わかってる」
この力で俺が倒してやる。
「ありがとな、ケリウス。感謝するぜ!」
その言葉と同時に、俺はアリアに向かって飛んだ。
アリアが少し焦りながら、色んな攻撃をしてくる。
が、俺は避けたり、闇で吸い込んだ。
そしてついに、アリアの目の前につく。
その瞬間に、俺は左手を前に出した。
手はみるみるうちに大きくなり、アリアの体を握った。
「くっ!そんな、私が!」
「勝ったな」
俺は左手の親指でアリアの頭を潰した。
四方八方に血が飛ぶ。
呆気なく終わったな、神のくせに……。




