第10話 『闇の呪い』
「人の家の前で何をしてるんだ?」
声の下の方を見ると、黒いローブを着た男が建物のドアの前で立っていた。
こいつが黒の魔術師か。
見た目はちょいイケメンの赤髪、そして結構若い。見た目は十六歳くらいだ。
五十年前に世界を破滅に追いやったんだよな?
いったい、今何歳なんだ?
「お前は、ケリウスか…?」
「ああ、そうだが。それより、ここで殺し合いはやめてほしいんだが。その死体もほったらかすなよ?」
「そうか、わかった。後で消し炭にして片付ける」
「ここに来たってことは俺に用があるのか?」
「ああ、お前の力が欲しくてな」
「とりあえず、ここで話するのもなんだから中に入れ」
俺は剣を抜いて、言われた通り建物の中に入った。
壁には本がぎっしりと詰まれている。
さっきまで食事をしていたのか、食べかけのパンが乗った皿がテーブルに置いてあった。
ケリウスはテーブルの前のソファに座った。
「まあ、そこのソファに座れよ」
俺はケリウスが指差した、向かい側のソファに座った。
「お前、名前は?」
「ラング・ガンデイルだ」
「俺の名前はわかってるよな」
俺は小さく頷く。
「で、何の用だ?」
ケリウスは手を組み、それに顎を乗せて話した。
「お前、五十年前に世界を破滅しようとしたんだよな」
「ん?ああ、そんなこともあったな。あいつに負けてできなかったからもう諦めたんだけど」
ケリウスは思い出話でもしてるような言い方をした。
そんなの、俺にはどうでもいいけどな。
「しかも『闇の呪い』ってやつで世界を破壊しようとしたんだろ?」
「ああ………なんとなくお前が言いたいことはわかった。その『闇の呪い』をかけて欲しいってことだろ?」
「よくわかったな。で、それって貰うことができるのか?」
「できねえな。まあ、闇ならできるぜ。分与魔法でな。ただ、膨大な魔力を失うことになる」
「それは誰のだ」
「俺のに決まってるだろ」
「なんだよ。じゃあ、使っていいじゃねえか。俺が苦しむわけじゃないんだし」
「………フフッ、心が腐ってるな。俺とそっくりだ」
ケリウスは苦笑まじりにそういうと、上を見上げた。
過去になんかあったような仕草だな。
「わかった。お前に闇を分けてやるよ。ただし、条件がある」
「条件?」
「そうだな。なんで闇が欲しくなったかを教えてほしい。それに俺が共感したら、闇をやる」
「………わかった。話すとそのときのことを思い出すから、あまり話したくはないが、仕方ない」
これも強くなるためだ。
「俺はこの前、ある村で過ごしていたんだ——」
そして今までにあった、村人に裏切られたこと、奴隷にされたこと、母さんが殺されたこと、俺がこうなった原因をすべて、ケリウスにぶちまけた。
くそ、あのときの感情が蘇りそうだ。
気をぬけば、思わずこいつを殺してしまうかもしれない。
「………そんなことがあったのか。人間が嫌いになった、か。なら、俺も嫌いってことか」
「まあな。俺はあくまで強くなるためにお前と話してる。本来ならお前とは少しも話したくない」
「そいつはちょっと悲しいな。でも、そんなことがあったならそう思うのも仕方ないか。俺も人間嫌いだし」
ケリウスは立ち上がると、俺の前に立った。
手を俺の頭に向けると手から黒い靄、闇を出した。
っ!なんだ、これは!
俺の中の苦しみに悲しみ、憎しみや恨みの心が大きくなっていく。
なるほど。復讐心を大きくし、最終的に悪にする。
これが『闇の呪い』か。
「ハァ…ハァ……終わったか」
「ああ、これで呪いをかけ終わった。それにお前にはもう闇が使える。全属性の中で闇が一番強いといっても過言ではないからな。損はないだろう」
ケリウスは少しフラッとしながら言う。
魔力を多く消費したのだろう。
強い、か。
試してみるか。
俺はケリウスに手を向けて、闇を放った。
すると、ケリウスの周りにバリアが張られて、大きな音をたてて闇を弾いた。
「何!?」
「やるとは思ってたよ。でも、あいにく俺も強くてね」
ケリウスはバリアを解いてニヤッとしながら言った。
俺は手をゆっくりと下ろす。
「……わかった。お前は殺さないでおいてやるよ」
これは本心だ。
理由は、倒せないから、ただそれだけ。
別に特別な理由などはない。
「これで強くなったんだよな」
「ああ、かなり強くなったと思うぞ」
じゃあ、次は魔術学院に入学して、攻撃系魔法をすべて覚えるか。
「じゃあ用事はすんだし、そろそろ魔術学院に行くか」
俺は外に出ようと、ドアの向かった。
すると、ケリウスが言った。
「なあラング、お前、魔王になる気はないか?」




