強極伝説 5 女王の誘い
「教えて下さいな。あなたが知っている事だけで構いませんわ」
「だから……何も知らねぇよ!!」
「商売の邪魔だ! あっち行け!!」
屋台のオヤジは、今にも掴みかからんばかりの勢いだった。
「待つのじゃ、オヤジさん!! 暴力はいけないのじゃ!!」
たどり着いた陽毬が、さっそく口を挟む。
「なんだ? お嬢ちゃん……こいつの仲間か?」
「いや、知らない人なのじゃ」
「でも、話せばわかるのじゃ」
「あのね、巫女ちゃん……邪魔はしないで欲しいのですわ」
「ええっ、なのじゃ……?!」
陽毬は目を丸くした。
そこへ、ケイタ達がやって来る。
「オヤジさん、すまない……俺、じゃない、私の連れなんだ」
「私がよく言っておくから、勘弁してやってくれ」
そう言いながら、ケイタはそっとオヤジに少しの金額を渡した。
「そ、そうか……まあ、そういう事なら仕方ねぇな」
「商売の邪魔だから、あっちでやってくれ」
そう言うと、オヤジはすぐに客引きを再開した。
「あなた達は、なんですの?」
メルフィアが警戒した様子で尋ねる。
「私、大事な用をしているんですわ。邪魔はやめて欲しいのですわ」
「いや、あのオヤジさんは何も言わないと思うよ」
「商売仲間には、彼らなりのルールがあるからさ」
「それより、何を調べてるんだ?」
「そうなのじゃ! わらわ達も手伝ってもいいのじゃ?」
陽毬も身を乗り出す。
しかし、
「いえ、結構ですわ」
メルフィアは即答した。
「これは、私達の問題ですわ」
そう言うと、ぷいっと顔を背け、その場を立ち去ろうとする。
その時だった。
(ねえ、ケイタ……あの子、なんか凄いパワーを持ってるね?)
ライムの声が脳内に響く。
(おっ、ライム。突然だな?)
(なんか、興味があるのか?)
(うん……なんか、あの子引っかかる……)
その様子を、メルフィアは訝しげに見つめていた。
そして――
何かを思いついたように、突然笑顔になる。
「なんか、話が聞きたいのですわ?」
「じゃあ、少し私と一緒に来て下さいな」
そう言うと、メルフィアはケイタの腕に手を回し、そのまま胸を押し当ててきた。
「ええっ!? ちょ、ちょっと……」
慌てて腕を引こうとした瞬間――
誰かに、耳を引っ張られた。
「いてててててっ!!」
振り返ると、ミィアがニコニコしながら耳を引っ張っている。
「あ、あのミィア……耳がちぎれるんだけど?」
「あっ、ごめんなさい♪」
「ケイタさんの顔が赤いから、熱でもあるのかと思って」
(熱と耳は、関係ないだろ……)
ケイタは心の中でツッコミを入れた。
「ところで、あなたのお名前は?」
ミィアは笑顔のまま、メルフィアへ尋ねる。
メルフィアは少し怪訝そうな顔をしたが、素直に答えた。
「メルフィアですわ」
「わらわは、陽毬なのじゃ!」
「で、この無愛想なのがコマなのじゃ」
「誰がコマだよ!!」
ルカが軽く、陽毬の頭を小突く。
「人の名前を勝手に変えるな!!」
「むっ! 痛いのじゃ!」
「この罰当たり者め!!」
陽毬が抗議する中、
メルフィアは全員の顔をじっくりと見渡していた。
まるで、一人一人を観察するかのように。
やがて――
「皆さん、全員で……少し一緒に来てくださいな」
「ここでは、ゆっくり話が出来ませんわ」
(ケイタ……なんか企んでそうだね?)
(そうだな……)
(でも、ついて行った方が手っ取り早そうだ)
(まあね……)
ライムも納得したようだった。
「まあ、いいよ」
「どこへ行きたいんだ?」
「付いて来て欲しいのですわ♪」
そう言うと、メルフィアは森の方へ歩き出す。
ケイタ達は顔を見合わせ――
結局、その後を追う事にした。




