強極伝説 4 メルビーの女王……メルフィア
ケイタ達は軽食を終え、今日の予定を話し合っていた。
「せっかくここまで来たんだし、今日はここで泊まるか?」
ケイタがそう言うと、
「賛成なのじゃ!!」
陽毬が真っ先に手を上げる。
「ふふっ、陽毬ちゃん。今日はご機嫌ね」
ミィアが微笑んだ。
「なんか、みんなでお出かけするのも久しぶりだもんね……」
「なんか、宿屋街はこっちみたいだよ!」
ルカが、通りの先を指差す。
その隣では、ベルプリも笑顔で頷いていた。
「じゃあ、とりあえず宿を探すか……」
ケイタが腰を上げようとした――その時だった。
「なんだよっ!! ねーちゃん、しつこいぞ!!」
突然、大声が響く。
「待って、下さいな……」
少し離れた屋台の前で、一人の店主と若い亜人の女性が言い争っていた。
「なんだろうな……」
ケイタが眉をひそめる。
「ちょっと、行ってみるのじゃ!」
陽毬はそう言うと、返事も待たずにスタスタ歩き始めた。
「おいっ!」
「ふふっ……もう行っちゃったわね……」
ミィアが苦笑する。
ルカも肩をすくめながら頷いた。
ケイタは小さくため息をつく。
(やれやれ……)
その時だった。
(ケイタ、どうかした?)
頭の中に聞き慣れた声が響く。
(おっ……ライムか)
(なんか……しばらく、静かだったな?)
(うん。ちょっと考え事してた……)
(珍しいな)
(なんか……いつもの揉め事?)
(さあな……まだわからないな)
ケイタは、そう返しながら陽毬の後を追う。
「陽毬ちゃんって、本当にこういうの放っておけないわよね……」
ミィアが苦笑しながら言った。
「うん。でも、それが陽毬らしいよね」
ルカも楽しそうに笑う。
「まあな……」
ケイタも苦笑する。
実際、陽毬がこういう騒ぎに首を突っ込むのは今に始まった事ではない。
困っている人を見れば放っておけないし、面白そうな事を見つければ真っ先に飛び込んで行く。
良くも悪くも、一直線なのだ。
「でも、陽毬ちゃんがいなかったら、私達もこんなに色々な場所へ行かなかったかもしれないわね……」
ミィアがそう言うと、
「確かにそうかも!」
ルカが元気よく頷いた。
「むっ?」
先を歩いていた陽毬が振り返る。
「何か、言ったのじゃ?」
「いや、なんでもない」
ケイタが肩をすくめる。
「むぅ……怪しいのじゃ……」
陽毬は少しだけ頬を膨らませたが、すぐに目の前の騒ぎへと意識を戻した。
どうやら、あの屋台の方が気になるらしい。
そして――
この時、誰も気付いていなかった。
その小さな騒ぎが、
後にシュガースノー全体を、巻き込む事件へと繋がることを。




