強極伝説 3 シュガースノーへの到着
今日も、ここシュガースノーは賑わっていた。
白い綿菓子のような屋根が並び、甘い香りが風に乗って通りを駆け抜ける。
色鮮やかな菓子店が軒を連ね、通りには大勢の人々が行き交っていた。
⸻
「さあ〜〜いらっしゃい!!」
「シュガースノー名物!
白雪・わたあめなら当店、スノー屋で〜!!」
「雪山・クレープはいかがですか〜!!」
「本日限定!
ハニーミルク・キャンディがお買い得ですよ〜〜っ!!」
店員達の威勢の良い声が飛び交う。
子供達は菓子を片手に駆け回り……
恋人達は笑顔で店を巡り……
旅人達は珍しいお菓子に、目を輝かせていた。
まるで毎日が、祭りのようだった。
沢山の人々。
賑やかな街並み。
溢れる笑顔。
そんな穏やかな午後──。
その光景から少し離れた場所で……
不意に、淡い光が地面を走った。
⸻
ブゥン……
空気が震える。
次の瞬間。
巨大な魔法陣が音もなく展開された。
――そして、徐々に数人の人影があらわれる。
「白雪・わたあめなのじゃーー!!」
陽毬が、両手を広げながら叫ぶ。
「まだ着いてないだろ……」
ケイタが苦笑する。
「でも、すごいところね!」
少し先に、町並みが見えていた……
ミィアが目を輝かせた。
「素敵なところ!!」
「そうだな!」
「うん!」
皆の表情は自然と明るくなる。
――その時……
ルカだけは……小さく目を細めた。
(目的が果たせれば、いいけどな……)
シュガースノーへ到着した陽毬は、真っ先に目的地へ向かっていた。
「白雪・わたあめなのじゃーーっ!!」
一直線に、駆け出していく陽毬。
「おいっ!待てって!」
「ふふっ、元気ね」
ミィアが笑う。
数分後。
陽毬は巨大な白雪・わたあめを抱えて戻ってきた。
「買ってきたのじゃ!!」
誇らしげに掲げる陽毬。
ケイタ達も、それぞれ屋台で買った食べ物を手にしていた。
ルカは雪山クレープ。
ミィアは焼き菓子。
ケイタは串焼きのような菓子を頬張っている。
「それじゃあ──」
陽毬がわたあめを掲げる。
「いただきま〜〜す、なのじゃ!!」
ガブッ!!
豪快にかぶりつく。
「………………」
陽毬の動きが止まった。
「ん?」
ケイタが首を傾げる。
「…………」
陽毬は再び一口食べる。
「………………」
さらにもう一口。
「なんか……」
「ん?」
「思っていたのと、違うのじゃ……」
ケイタ達が、顔を見合わせる。
「そんな、自分の思い通りにはいかねえだろう」
ケイタが肩をすくめた。
「陽毬ちゃん……おいしくないの?」
ミィアが尋ねる。
「いや、美味しいのじゃ……」
陽毬は困った顔をした。
「でも……味が薄いのじゃ……」
「味が薄い?」
ルカが首を傾げる。
ルカは、陽毬からわたあめを少し受け取ると、口へ運んだ。
「確かに、甘いには甘いんだけど……なんか微妙だね」
「期待しすぎたのかもね」
ミィアが微笑む。
「むぅ……?!」
その時だった。
「お嬢ちゃん……やっぱり、そう思うかい?」
突然、近くから声がした。
振り向くと、一人のおばさんが立っていた。
「えっ?」
「おばさん……誰なのじゃ?」
陽毬が警戒する。
おばさんは、少し寂しそうに笑った。
「私はね……この前まで、屋台でわたあめを売ってたんだよ」
「えっ……わたあめ屋さん、なのじゃ?」
「ええ……この間までね……」
おばさんは、遠くを見つめる……
「でも……原料になる蜜が、とんでもなく高くなっちゃってね……」
「蜜?」
「ええ、そう……」
「仕入れが高すぎて……とてもやっていけなくなっちゃったの……」
陽毬は手に持ったわたあめを見る。
「だから……味が違うのじゃ?」
「う〜ん……どうだろうねぇ……」
「でも……昔を知ってる人は、そう言う人もいるかもね……」
そう言って、おばさんは少し寂しげに笑った。
その時。
「お母さん!!」
慌てた声が、飛んできた。
一人の女性が、駆け寄ってくる。
「またこんなところで、話し込んじゃって!」
「あらあら……」
「すみません」
女性は、ケイタ達へ頭を下げた。
「うちの母、話し好きなもので……」
「いや、別に構わないけど」
ケイタが答える。
「ほら、帰るわよ」
「うふふ……」
おばさんは、陽毬へ手を振った。
「じゃあ……またね、お嬢ちゃん」
「うむ!またね、なのじゃ!」
陽毬も、微笑んで手を振りかえした
そして、親子は人混みの中へ消えていった。
しばらく沈黙が流れる。
陽毬は手に持ったわたあめを見つめた。
「…………」
「どうした?」
「なんか……」
陽毬が小さく呟く。
「少し、気になるのじゃ……」
陽毬は、再びわたあめを頬張った……




