7話:最強の辺境、爆速で大都市になる
勇者カイルたちの定住から数ヶ月。ガルザスの荒野には、かつての静寂を吹き飛ばすような活気が満ちあふれていた。
ルミナスとアルスの二人が最初に着手したのは、仮住まいに過ぎなかった拠点を「本物の都市」へと昇華させるための建築資材の開発だった。
アルスが『鑑定』によって荒野の地層深くから発見した、特殊な魔導結晶を含む粘土や石材。
それにルミナスが緻密にコントロールされた
『雷属性』の魔力を流し込む。超高電圧による
一瞬の分子結合の強化いわば「魔導焼き固め」を行われた白亜の石材は、大地震や上級魔物の突撃すら
無傷で耐え抜く、圧倒的な硬度を誇るオリジナル建材『ルミナイト』へと生まれ変わった。
この頑丈な石材が次々と組み上げられ、ガルザスの地に、国をも揺るがす奇跡の土台が築かれつつあった。
「最果てのガルザス領に、どんな魔物の襲撃も完全に防ぐ紫の結界と、白亜の街があるらしい」。
そんな、おとぎ話のような噂が、まず各地の食い詰めた名もなき冒険者たちの間で囁かれ始めた。
当時の王都や中央都市のギルドは、貴族の息がかかった一部の上級冒険者が利益を独占し、新人や中堅の
冒険者たちは危険な依頼を不当な低報酬で押し付けられるのが常態化していた。
命を落としかけ、ボロボロになりながらも日々の糧を得るのに必死だった彼らにとって、その噂はまさに蜘蛛の糸だった。
半信半疑のまま、彼らは吸い寄せられるように最果ての地を目指し始める。
飢えと疲労でボロボロの衣服を纏った開拓民や冒険者の第一陣が、ようやくガルザスの境界へとたどり着いた。
彼らが目にしたのは、噂に違わぬ、淡い紫色の
雷光を帯びた巨大な防壁だった。
恐る恐る門をくぐった彼らを迎えたのは、
アルスが『アイテムボックス』から取り出した
ばかりの、湯気を立てる温かい麦のスープと、
焼きたてのパン。
そして、すでに完璧に整備された頑丈な石造りの家屋だった。
「ここは天国か……? 俺たちは、もう怯えなくていいのか……?」
涙を流してスープを啜る領民たちに、ルミナスは
優しく微笑みかけ、その手についた傷を微弱な電流による活性化魔法で癒していく。
その温かさに、移住者たちはこの地に骨を埋めることを誓うのだった。
人口が瞬く間に千人を超えた頃、アルスは本格的な都市計画を始動させた。
普通の都市であれば、何年もかけて測量し、膨大な人手で開削する道路や水道。
しかし、アルスにはそれが不要だった。『鑑定』に
よって数キロ先までの地脈を完全に読み解き、
どこに地下水脈があり、どこに強固な岩盤があるかを瞬時に弾き出す。
設計図は全てアルスの頭の中に構築され、それを形にするのは彼の『アイテムボックス』だった。
王都を出る前に仕込んでおいた大量の掘削道具や、旅の途中で収納した大量の土砂・石材を、
空間からピンポイントで「配置」していく。
まるで巨大なパズルを合わせるように、一晩で完璧な大通りと下水道の基礎が完成していった。




