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6話:『紫電・天雷崩壊』

巨猪の群れが、本能的な恐怖から動きを止めた。

しかし、もう遅い。


『紫電・天雷崩壊ヴィオレ・カスケード』!

ルミナスが掲げた手を振り下ろした瞬間、暗雲から極大の紫色の雷柱が、文字通り


「天から降り注いだ」。

ズドドドドドドドォォォォン!!!


この世のものとは思えない大轟音。

激しい紫の閃光が世界を真っ白に染め上げ、カイルたちは思わず目を瞑った。凄ましき衝撃波が押し寄せるが、それはすべてアルスの空間障壁に吸い込まれ、

ルミナスたちの背後にいるカイルたちには微風すら届かない。


落雷は一発では終わらなかった。何十本もの紫の雷が、まるで意思を持つかのように

『グラトニー・ボア』の群れだけを正確に、蹂躙するように撃ち抜いていく。


数十秒の地獄の後、光と音がようやく収まった。

カイルが恐る恐る目をあけると、そこには信じられない光景が広がっていた。


あれほど絶望的だったAランクの魔物の群れは、

影も形もない。肉片一つ残さず、ただ大地が丸く黒焦げになり、うっすらと紫色の電気が地面を這っているだけだった。


「……うそ、だろ……」


カイルの口から、掠れた声が漏れる。


自分たちが命を懸けて、それでも全滅を覚悟した絶望が、たった一人の少女の、わずか一撃で完全に消滅させられたのだ。

これが、国家規模の宮廷魔術師ですら不可能な「雷属性」の真の威力だった。


ルミナスは静かに息を整えると、何事もなかったかのようにパチパチと指先を鳴らし、残った電気を霧散させた。


「あーあ、綺麗さっぱり消えちまったな。少しは肉を残してくれたら、今日の晩飯にできたのに」


アルスが緊張感のない声で笑いながら、空間の障壁を閉じる。


「ごめんなさい、アルス。少し加減を間違えちゃったわ」


「まあいいさ。あいつらの牙や皮は、あとで黒焦げの地面から拾える分だけ俺の『アイテムボックス』に回収しておくよ。いい素材になるしな」


平然とそんな会話を交わす二人を、カイルはただ呆然と見上げていた。


カイルは震える足でなんとか立ち上がり、ルミナスの前に歩み出た。その足は恐怖ではなく、圧倒的な

「憧れ」と「畏怖」で震えていた。


「あんた、一体……何者なんだ……? なんでこんな化け物みたいな強さの人が、こんな辺境にいるんだよ……」


後に世界を救う勇者カイル。彼が初めて「本物の強者」を目撃し、その胸に生涯消えない北極星のような目標を刻んだ瞬間だった。


ルミナスは長い銀髪をかき上げ、少しだけ困ったように微笑んだ。


「ただの、行き場をなくしてここに流れてきた、伯爵家の元令嬢よ。……ねえ、アルス?」


「ああ。王都のジジイどもに『無能の不吉者』って言われて追い出された、ただの居候二人組さ」


アルスの言葉に、カイルは驚愕のあまり目を見開いた。これほどの規格外の力を持つ者を「無能」

と呼んで追い出すなど、王都の人間は全員狂っているのではないか、と。


「俺はカイル。冒険者だ。……もし、行く当てが

ないなら、いや、ここに住むつもりなら、俺たちを

あんたたちの手下にさせてくれ!

命令なら何でも聞く!」


カイルは深く頭を下げた。彼の仲間たちも、慌ててそれに倣う。


「ふふ、手下なんていらないわ。でも、そうね……」


ルミナスはアルスと視線を合わせ、悪戯っぽく笑った。


「ちょうど、この街を大きくするための『人手』が

欲しかったところなの。手伝ってくれるかしら?

未来の勇者様」


こうして、最果ての地に眠る二人の怪物のもとに、最初の「住人」となる冒険者たちが加わった。

この出会いが、後に大陸全土を揺るがす

『雷光都市ルミナリア』の、そして最強の勇者パーティーの誕生へと繋がっていくのだった。

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