28話:孤立無援の帝国
さらに、追い打ちをかけるように最悪の凶報が
舞い込む。
「カイル騎士長より緊急伝令! 東国境を突破した
先遣隊20万とは別に、西の軍事大国ガルディニアの『魔導機甲師団』15万が、地中を掘り進む魔導兵器を使って、すでに我が国の『喉元』……中央農地の手前まで迫っています!」
「なんですって!? 地中から!? そんなの、
私の陣形予測の範囲外よ!」
ルナが顔を真っ赤にして絶叫する。
東から20万、西から15万。さらに頭上は大砂塵で視界ゼロ、頼みの結界は消失。
まさに四面楚歌。建国以来、最大の、そしてあまりにも絶望的な不運の連鎖が、生まれたばかりの帝国を
容赦なく圧し潰そうとしていた。
誰もが絶望の淵に立たされかけたその時、
「……ハハ、面白くなってきたじゃねえか」
作戦室に、低く、しかし驚くほど不敵なアルスの笑い声が響いた。
「ア、アルス!? あんたこの状況で頭がおかしくなったの!?」
ルナが目を丸くして掴みかかるが、アルスの瞳には、絶望など微塵も浮かんでいなかった。
あるのは、裏切り者と侵略者に対する、底知れない「怒り」と「確信」だった。
「ルナ。不運が重なったってことは、敵は持てる手札を今この瞬間に『全部使い切った』ってことだろ?
だったら、ここからは俺たちの番だ」
アルスは『アイテムボックス』の空間を大きく
歪ませ、机の上に一本の、禍々しい輝きを放つ
漆黒の魔導トリガーを取り出した。
「裏切り者も、75万の軍勢も、まとめて後悔させて
やる。ルナ、お前の頭脳(作戦)を修正しろ。
西の15万も、東の20万も、俺が全員
『一歩も動けない檻』にぶち込んでやるからよ」
「修正しろって……簡単に言わないでよ、
このバカアルス!」
作戦室の温度は、外の大砂塵を忘れさせるほどに
熱く沸騰していた。
ルナ・コーラインは金髪のツインテールを振り乱し、大魔導書のページを凄まじい速度でめくりながら、
真っ赤な顔でアルスに怒鳴り散らす。
しかし、その手は一瞬たりとも止まってはいない。
「東から20万、西から地中を抜けて15万、
上空は砂塵で視界ゼロ。常識的な軍師ならこの時点で降伏文書を書いてるわよ! でも……」
ルナの瞳が、天才特有の冷徹な輝きを帯びる。
「でも、あんたのその『容量無限のゴミ箱
(アイテムボックス)』が本当に私の言う通りの物資を『爆速』で配置できるって言うなら……勝機は、
ゼロじゃないわ!」




