27話:反撃のカウントダウン
ルナの言葉に、ルミナスは目を見開き、やがてクスッと愛おしそうに笑った。
「ええ……。お願いね、ルナ、アルス」
「最高の軍師殿がついたんだ、負ける気がしねえな」
アルスは立ち上がり、コートを羽織ると、ルナに向かって不敵な笑みを浮かべた。
「ルナ、お前の『千陣の戦術眼』で、敵の15万を
一番ハメやすい地形へ誘導しろ。
兵器でも罠でも、必要な物資は俺の『アイテムボックス』から無限に供給してやる」
「ふん、言われなくてもそのつもりよ! 行くわよ、
アルス! 天才の戦術ってやつを、あの烏合の衆に刻み込んであげるんだから!」
女帝ルミナス、まさかの能力低下。
最大の危機を前に、雷光帝国は「異国の天才軍師」と「影の支配者アルス」による、未知数の知略戦へと
突入する。
「――報告します! 北部第3から第7セクターの
『紫電結界』、完全に消失!
出力がゼロになりました!」
作戦室に響き渡る通信兵の悲鳴。
ルミナスの魔力回路の過負荷に伴い、これまで
都市全体を絶対的な力で守り続けていた淡い
紫色の結界が、ガラスが砕けるような音を立てて
次々と消滅していった。
「くっ、最悪のタイミングね……!」
ルナはトレードマークのツインテールを激しく
揺らしながら、机の上の魔導マップを叩いた。
結界の消失は、そのまま『雷光帝国』が完全に無防備な状態の生肉として、75万の飢えた狼たちの前に
晒されたことを意味していた。
不運はそれだけに留まらなかった。
窓の外を見上げたアルスの顔が険しく歪む。
さっきまで晴れ渡っていた空に、突如として不自然なほどの分厚い「大砂塵」が巻き起こり、街全体を
茶褐色の闇が包み込み始めていた。
「大気中のマナが急激に乾燥していく……。アルス、これ、ただの異常気象じゃないわ。
敵の4カ国連合の中に、超一級の『天候魔術師』
がいる!」
ルナが魔導書をめくりながら歯噛みする。
湿度が急激に奪われたことで、仮にルミナスが
無理をして雷を落とそうとしても、
空気の絶縁破壊が起きず、電撃が著しく減衰して
しまう。
敵は、ルミナスの能力低下を正確に見抜いた上で、
彼女の『紫電』を完全に封殺する環境を魔法によって強制的に作り出したのだ。
「どうして……どうして私たちの結界の構造や、
ルミナス様の状態が、こんなに正確に敵に割れているのよ……!?」
ルナが焦燥に駆られて声を荒らげる中、
アルスは冷徹に『鑑定』のログを遡っていた。
「……ネズミだな」
アルスの声は、凍りつくほど冷たかった。
「旧王国の崩壊時に、大量の難民に紛れて入り込んできた『商業連合ルクレシア』の潜入工作員だ。
街のインフラを無償で提供していた裏で、
蓄電塔のデータやルミナスの定期的な魔力供給の
周期を盗みやがった」
どれだけ高度な技術を誇ろうとも、人の悪意までは
完全には防げない。
信頼していた領民の中に裏切り者がいたという
事実は、作戦室の空気を重く沈めさせた。




