25話:アルスの『バグ』に呆れる天才
「じゃ、じゃあ兵站はどうするのよ! 籠城戦になったら、10万の民の食料が数ヶ月で底を突くわ!」
ルナがなおも食い下がると、今度はアルスが肩を
すくめた。
「それも心配ない。俺の『アイテムボックス』に、
向こう3年分の大麦と乾燥肉、それから医療物資が
詰まってる。
時間停止だから腐らないしな。
なんなら、敵の陣営のど真ん中に、うちの特産品の
小麦粉を1万トンほど『不法投棄』して、
重さで圧殺することもできるぞ?」
「……は?」
ルナは口を半開きにして、アルスの顔と、陣形図を
何度も往復して見つめた。
「あんたたち……なんなのよ、そのチート性能は!
私が夜も寝ないで考えた完璧な軍略が、
ただの『物理と物流の暴力』で解決しちゃう
じゃない! もう知らない! 勝手にしなさいよ!」
涙目で大魔導書をポカポカとアルスの胸に
叩きつけるルナ。
しかし、その瞳には、かつて見たこともない
「規格外の主たち」への、深い敬意と好奇心が灯り始めていた。
「冗談はさておき、ルナ。お前の『戦術眼』
は本物だ。
アルスが真剣な表情で手を差し出すと、ルナはふんっと鼻を鳴らし、その手をパシッと叩いた。
「べ、別にあんたに褒められても嬉しくないんだからね! でも……まぁ、そこまで言うなら、私の最高の頭脳をこの国に貸してあげてもいいわ。
その代わり、勝ったらあの『魔導蓄電塔』の
研究をさせてよね!」
「ええ、歓迎するわ、ルナ。私たちの頼もしい
軍師さん」
ルミナスが微笑み、雷光帝国にまた一人、
頼もしすぎる(そして少し騒がしい)仲間が
加わった。
新興の帝国へ迫る、周辺4カ国の75万の軍勢。
しかし、彼らはまだ気づいていなかった。軍事の常識を遥かに超越した「魔力」「物流」、そして異国の
「天才の頭脳」がガッチリと噛み合った雷光帝国が、
すでに彼らを迎撃するための『完璧な檻』を完成させているということに。




