2話 開拓の始まりは、最強のサポートから
ガタガタと激しく揺れていた馬車が、ついにその動きを止めた。
ルミナスが錆びついた扉を押し開けて一歩を踏み出すと、冷たく乾いた風が彼女の銀髪を激しく揺らした。
視界に広がっていたのは、見渡す限りの赤茶けた大地。ところどころに不気味な黒い岩が突き出し、草木は枯れ果て、生き物の気配すら希薄な「死の荒野」――それが、彼女に与えられた新たなる領地、ガルザス領の現実だった。
「噂には聞いていたけれど……本当に何もないところね」
ルミナスは小さく息を吐いた。王都のきらびやかな街並みや、温かい部屋はもうどこにもない。ここにあるのは、どこまでも続く孤独と静寂だけだ。思わず肩をすくめた彼女の隣に、すっと人影が並んだ。
「何もないってことはさ、ルミナス。ここから何を作っても自由ってことだろ?」
アルスがいつもの気負わない笑顔で笑う。
彼は御者台から飛び降りると、大きく伸びをして周囲を見回した。
その琥珀色の瞳には、絶望など微塵もなく、むしろ新天地を見つけた冒険者のようなワクワクとした光が宿っている。
「アルス、本当に怖くないの? ここは魔物も出るって聞くわ。私一人ならともかく、あなたを巻き込んでしまって……」
「またそんなこと言う。俺が自分の意志でついて来たんだよ。それに……」
アルスはルミナスの目を真っ直ぐに見つめ、いたずらっぽく片目を瞑った。
「王都の連中は、お前の『雷』を壊すだけの不吉な力だと決めつけて追い出した。だけど、あいつらが大間違いだったってことを、これからこの場所で証明してやろうぜ。二人でさ」
その言葉に、ルミナスの胸の奥に灯った微かな不安は一瞬で消し飛んだ。
「ええ……そうね。見返してやりましょう、私たちの力で」
最果ての荒野で、二人の反逆の開拓劇が、静かに幕を開けた。




