18話:天災の証明
「だけど――」
ルミナスの声が、低く、重く、謁見の間の全員の
脳裏に直接響いた。
「私がアルスと一緒に、この街の人たちと築き上げた『ルミナリア』を傷つけようとするなら……
私は、そのすべてを滅ぼす『天災』にだって
なってみせるわ」
ルミナスが掲げた右手を、容赦なく振り下ろす。
――ドオォォォォン!!!
総督府の遥か上空、暗雲の渦の中心から、大気を引き裂くような極大の紫色の雷柱が、屋根を透過して室内に向かって一直線に轟き落ちた。
だが、その雷撃はバルドたちを直撃しなかった。
バルドの目の前、わずか数センチの床に突き刺さる
ようにして放たれた雷撃は、彼らが身に纏う
白銀の鎧や聖剣の金属部分に激しく誘導され、
青白い放電となって四散した。
人間の処理能力を遥かに超えた超高電圧の衝撃波と
音響が、第一近衛騎士団の全員を文字通り
「消し飛ばした」
激しい光と、鼓膜を震わせる残響がようやく
収まった。
ルミナスの雷属性魔法は、すでに単なる破壊の
魔法ではない。
神業的な出力量のコントロール。
それこそが、彼女がこの一年で到達した
「天候操作」の領域だった。
「ひ、ひぃぃぃぃっ……! ば、化け物め……!」
唯一、金属製の装備を身につけていなかった
バルドだけが、腰を抜かしながらも意識を
保っていた。
しかし、そのプライドは完全に粉砕され、
涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃに汚しながら、
ただ後ずさることしかできなかった。
聖騎士長バルドが、一兵の損害も与えられぬまま
無残に敗走したという報せは、数日を待たずして
王国全土、そして周辺諸国へと駆け巡った。
ルミナリアの圧倒的な武力と、それを統べる
『紫電の女帝』の存在を知った他国は、
一斉に王国との国交を断絶。ルミナリアとの直接交易を求めて使者を派遣し始めた。
王国内では、ルミナスを理不尽に追放した
「アルートス伯爵家」に対し、怒り狂った国王からの激しい叱責とトカゲの尻尾切りが行われた。
伯爵家は全領地と財産を没収されて没落。
異母妹のセレナも、婚約者であったバルドが廃人同様になったことで未来を失い、かつてルミナスを罵った大広間で、今度は自分たちが血の涙を流して後悔することとなった。
王家もまた、ルミナリアの報復を恐れ、二度と最果ての地へ干渉する度胸を失った。




