16話:凍りつく空気
「おいおい。せっかく綺麗に作った俺たちの街を、
力ずくで奪うって?
随分と物騒なことを言う聖騎士様だな」
アルスが肩をすくめ、背後の大きな扉に向かって
声をかける。
「おいカイル、キルト。
外で聞いてただろ? 出てきていいぞ」
その言葉が終わるか終わらないかのうちに、
部屋の側面の重い扉が開き、重苦しい足音とともに
二人の影が姿を現した。
「ばっちり聞いてましたよ。ルミナスさんたちを
脅すなんて、勇者(見習い)として、いや、
この街の住民として絶対に見過ごせませんね」
身の丈ほどもある巨大な大剣を肩に担ぎ、かつての
大人しかった姿からは想像もつかないほどの、
凶悪なまでの闘気を全身から放つ勇者カイル。
「僕の最高傑作である警備隊の制服を、
踏みつぶすって? ……ふーん、いい度胸だね。
その白銀の鎧ごとバラバラに切り刻んで、
新しい床拭き雑巾の素材にしてあげようか?」
指先から、肉眼では見えないほど極細で鋭利な
「鋼糸」をパチパチと鳴らし、底冷えするような
冷酷な目を光らせる冒険者キルト。
部屋に現れた二人の放つ圧倒的なプレッシャーに、
バルドの背後にいた精鋭騎士たちの顔色が、
一瞬で土気色へと変わった。
「な、なんだこの圧力を放つガキどもは……!?
聖騎士たるこの私を前にして、そのような虚勢が
通じると思うな!」
バルドは必死に声を張り上げたが、その背中には
冷や汗が大量に流れ落ちていた。
「虚勢かどうか、試してみるかしら?」
ルミナスが静かに立ち上がると、彼女の瞳が、
深く、美しい紫色の雷光に染まった。
部屋の窓の外、ルミナリアの空が、瞬く間に
どす黒い暗雲に覆われ始めていた。




