15話:王都の嫉妬
派遣されたのは、王国の最高戦力として名高い
「第一近衛・聖騎士団」
その先頭に立つのは、贅沢な装飾が施された白銀の
鎧を纏う男――聖騎士長バルド・レインスト
だった。
彼は若くして聖騎士の座に上り詰めた天才であり、
同時にルミナスを追い出した異母妹セレナの
「婚約者」でもあった。
「ふん、不吉な魔女め。辺境の泥まみれの土地で少しばかり調子に乗ったようだが、王国の本物の武力というものを、その身に刻み込んでやる」
バルドは傲慢な笑みを浮かべ、数千の重装騎士を引き連れてルミナリアへと進軍した。
ある晴れた朝、ルミナリアの美しい白亜の城門の
前に、地響きとともに白銀の軍勢が現れた。
街道を進む商人の馬車を力ずくで排除し、王国の旗を掲げて傲然と進軍してくる騎士たち。
その横暴な様子に、街の住民たちに一瞬の緊張が
走る。
バルドは愛馬を駆り、総督府の正面玄関へと乗り付けると、出迎えた街の警備兵を冷酷に見下した。
「国を裏切った大罪人ルミナス、ならびにその一味に告ぐ! 聖騎士長バルド・レインストである!
速やかに門を開け、出迎えにこい!」
総督府の重厚な謁見の間の扉が開き、バルドと
その側近たちが、土足で大理石の床を踏み荒らし
ながら入ってきた。
部屋の奥、上座の椅子に静かに腰掛けているのは、
銀髪を美しく編み込み、キルトが仕立てた紫がかった漆黒のドレスに身を包んだルミナス。
そして、その傍らで冷ややかな視線を向けるアルス。
「久しいな、ルミナス。……いや、
伯爵家を勘当され、最果ての地で盗賊の真似事をしている犯罪者風情と言うべきか」
バルドは腰の聖剣の柄に手をかけ、侮蔑に満ちた
声を響かせた。
「バルド様。何の用かしら? 用件がないなら、
今すぐお引き取りいただきたいのだけれど。
ここはもう、あなたたちの国ではないわ」
ルミナスの静かで凛とした声が、室内の空気を
張り詰めさせる。
「黙れ! 不吉な魔女めが。貴様がこの地で王国の資産を不正に弄び、不当な街を築いていることは全て把握している。
国王陛下からの慈悲深き最終通告だ。
大人しく王都に戻り、その雷の力を国のために
差し出し、この街の全権利を国譲りせよ。
……さもなくば、この街を『反逆の徒』として包囲し、一人残らず力ずくで踏みつぶすまでだ」
バルドの背後に控える精鋭騎士たちが、一斉に威圧のオーラを放ち、抜剣の構えをとる。
王国の軍事力を背景に、この豊かな街の富、技術、
そしてルミナス自身の身柄を丸ごと奪い取ろうという、あまりにも浅はかで強欲な脅迫。
王都で「神童」と持て囃され、挫折を知らないバルドにとって、辺境の街など自分の一言でひれ伏す存在に過ぎないと思い込んでいた。
しかし、その脅迫に対しても、アルスは呆れたように大きなため息をつき、ルミナスはただ静かに微笑んだだけだった。




