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転生したら悪役令嬢の白豚パパでした!?~うちの子は天使で元恋人は最強騎士です?オーラを見極め幸せを掴め!~  作者: 緒沢 利乃
領地経営編 ②

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セシル、幼少のころ Ⅲ

母に連れられて訪れたオールポート伯爵邸のお茶会は、表面上何事もなく穏やかに過ぎて行った。


ただ、僕はずっと恐ろしい者の吐息を感じ、罪深い者の手を肩に感じていた。

そう、母の言葉は嘘ばかりだったのだ。


オールポート伯爵家はハーディング侯爵家の寄り子貴族ではない。領地は隣同士だが、お互いの産業や特産品などが違い過ぎて、二家が交流を持つ理由が全くなかった。


ましてや、オールポート伯爵家の寄親は、祖父の代から少々仲が悪く、敵対まではしていないが不干渉な関係だ。


そんな伯爵家とハーディング侯爵家嫡男の兄との婚約の話などあるわけがない。しかも、オールポート伯爵家は一人娘、つまり婿入りを希望している。


衝撃の真実をお茶会で値踏みする視線を送るオールポート伯爵夫人から聞き、自分の立場を理解して怖気が全身に走った。

兄の婚約者候補ではない。母は兄の婚約者など気にしていない。

オールポート伯爵令嬢は僕の婚約者候補なのだ!


「セシル。ほら、見てごらんなさい。ルチア様ったら、とってもかわいいわ。貴方の白金色の髪もいいけど、彼女の黒い髪も素敵ね」


「ありがとうございます。ハーディング侯爵夫人」


サラサラと母の手が僕の髪を撫でていく。その髪をうっとりとした眼で見つめるオールポート伯爵令嬢。


この日から、母は僕が領地に戻ると父の目を盗みオールポート伯爵家へと僕を連れ出そうとするようになる。僕は父が許さないと断るが、母の味方であるメイドや従者たちに騙され、何度かオールポート伯爵家へと訪れてしまった。


……主家の子息に睡眠薬とか薬を盛る使用人の存在が信じられない。そのことを母に抗議すると、本当に悲しい顔をして僕を責めた。


「あの子たちはセシルのためを思ってしたのよ? その忠義が貴方にはわからないの?」


そんなものは忠義とは言わない。僕は母との会話を本当に諦めた。もう母には、人の言葉は通じない。狂人なのだ。

しかし、その狂人と話が通じるのがオールポート伯爵令嬢であるルチア・オールポートだった。


主に僕の話題で二人は盛り上がる。母は彼女をとっても気に入っていた。やや爵位が低いことが気になったらしいが、オールポート領の領地運営に問題がないことは母を安心させたのだ。


「だって、セシルに苦労はさせたくないもの」


苦労をしたくないのは母だ。この人は窮屈なハーディング侯爵夫人の立場を逃れ、僕をオールポートの魔女の生贄として、自分が社交界へと返り咲きたいだけだ。


当然、母が望む僕とオールポート伯爵令嬢との婚約は、父の反対にあった。僕の婿入りの話はいいが、相手が派閥外であることに難色を示した。表向きの理由として。


父や兄は、母が用意した婚約の話に警戒していた。もちろん、僕の気持ちも尊重してくれた。

僕は絶対にオールポート伯爵家に婿入りはしない。したくない。

ルチア嬢は母と同じタイプの女性だ。たいして交流もしていないのに、僕に執着する。僕の外側だけを異常なほど愛し、自分の思うままにしようとする。


それを「愛」だと勘違いして。
























母からの婚約話があまりにもしつこく、とうとう僕は領地に帰ることを止めた。


どんなに父に頼まれても帰らないと。意外にも賛成してくれたのは兄だった。


領地から王都に戻ってくる僕の様子から、兄は心配していたらしく、厄介な話も持ち上がったことだし、そろそろ領地に帰るのを止めたほうがいいと、父に申し出てくれた。


本人とのやり取りがなくなれば婚約の話も進まないだろうと、父も納得してくれて、僕はようやく穏やかな生活を手にすることができた。


母からの帰領を求める手紙はひっきりなしに送られてきたし、オールポート伯爵令嬢からの手紙も三日おきに届いた。母からの手紙には、「帰りたくない」と正直な気持ちを綴り、オールポート伯爵令嬢からの手紙は読まずに送り返した。


兄はいつのまにか母に対する気持ちに整理をつけ、次期ハーディング侯爵として恥ずかしくない青年へと成長をしている。僕は……僕はどうしたらいいのか。

母が画策したように貴族の次男など兄に子どもができたら用なしだ。なにかハーディング領に益のある人間になりたい。


兄に相談すると、微笑ましいとばかりに頭を撫でられまくり、褒められまくった。


「それなら、王都の学園に通えばいい。貴族子息のほとんどは通うが、そこで将来を考えるのもいいだろう。最初の一年間は共通の科目を学ぶが、その後は騎士科や領地経営、侍女やメイド、執事など各分野に分かれる。優秀な講師も揃っているし、どうだ?」


王都の学園。


母のせいで、僕は同年代の貴族子息たちと交流することが叶わなかった。学園に通えば、友人ができるかも……。

僕の胸は将来への期待で高鳴った。

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