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転生したら悪役令嬢の白豚パパでした!?~うちの子は天使で元恋人は最強騎士です?オーラを見極め幸せを掴め!~  作者: 緒沢 利乃
オールポート家編

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拓海、親友の秘密を知る

そこは、白い部屋だった。


へ? 白豚生活も板についてきた今になって転生するときのお約束、神様とのご対面かと緊張が走ったが、フヨフヨと浮かぶ俺の下でベッドに横になっている親友の姿に、ここが病室だとわかった。


病室……そうか、とうとうこいつ、倒れちまったか。

満足にメシも食わずに仕事をし、高級寝具に包まれながらも寝不足で、そりゃ倒れるよね?


点滴されて横たわる親友の姿は、ずいぶんと窶れてイケメン度も少し、ほんの少し下がったように見えた。

爽やかだったはずの顔は苦悶の表情で、眉間に刻まれたシワはもう取れないかもしれない。


フヨフヨと移動して、指でぐにぐにと眉間を揉んでやる。

触感はあるが、奴の頑固なシワはちっともなくならなかった。


「……み」


ばか、お前。点滴打つほど弱っているのに俺の名前なんか口にするなよ。

いつまで俺のこと引きずっているんだ。俺なんて違う世界で白豚で伯爵で中学生ぐらいの美少女な娘までいるんだぞ?


お前も、もっと楽しく生きろよ。顔もスタイルも、頭もいいし内面もいいし、金もあるし……ってお前のスペックが良すぎて腹が立ってきたな!


ピンッとデコピンしてやったら、病室の扉がノックもなしに開けられて、ビビった俺はびゅんっと天井の端まで移動した。


病室に入ってきたのは着物を着たおばさんと仕立ての良いスーツを着た俺たちよりも少し年上の男。

こいつら……確か、理人の母親と兄さん、だったような?
















「あらあら、こんなに痩せてしまって」


着物を着た上品なおばさんが理人の頬をひと撫でする。


「……あんな会社でここまでになるとは、情けない」


フンッと鼻で笑い、眼鏡を手に取り神経質に拭いている嫌味野郎は理人の兄だ。確か親の跡を継ぐため縁故で会社に入り役員になっていると聞いたことがある。


どうにも、この二人が理人を心配して見舞いに来たとは思えなかった。こいつらが何がしでかさないように俺が見張ってなきゃ!


理人はあまり家族の話はしなかったが、噂では大企業の創業者一族で、俺たちの会社もそこそこ大企業ではあったが、海外展開がえげつないその企業と比べれば鼻で笑われても仕方がない。


次男だった理人は、親の跡を継ぐのは兄だとまったく関係のない会社に就職したと言っていたが、俺にはわかる。わかっちゃう。

あの実は小心者っぽい神経質で潔癖っぽい兄、たぶん理人のほうが出来が良かったと思う。んで、うるさい周りの雑音が無視できずに病んで弟いじめとかしちゃうタイプだ。


そして、このおばさんは子どもに興味のないタイプ。無関心だけど、自分の足を引っ張るのは許せないという自己中心な人。今も倒れた理人の心配なんかしていない。自己管理ができないで倒れた理人を侮蔑する目で見下ろしている。


なんだ、こいつら!

腹が立って、びゅん、げしっと拳も足も出してみるが、スカッと通り過ぎるだけでダメージは与えられない。

くそっ、やっぱり俺が触れるのは理人だけか。


「あら、目が覚めた?」


理人の瞼がピクピクと動いたあと、ゆっくりと目が開いていく。


「……あなたか……」


理人は掠れた声を発したら、母親たちに背を向けるようにぐるりと体を横向きに変えてしまう。


「迷惑をかけてしょうがないこと。理人、貴方会社を辞めなさい。もうそのまま退職するように手配するわ」


「しばらく別荘で休んだら、こっちの会社の入れ。それなりのポストは用意しておく。いいな」


二人とも理人の体を気遣う言葉などこれっぽちもかけずに、言いたいことだけ言うとさっさと病室を出て行ってしまった。


……なんだったんだ……あいつら。

ポカンと俺が閉ざされた扉を見ていると、ボスンと柔らかいものを叩く音が病室内に響く。


「?」


振り向くと、歯を食いしばり憤怒の表情で、握った拳を枕に叩きつける理人の姿が映った。

青白かった顔も全身を巡る怒りの感情で赤く染まっている。


……理人、実家嫌いだもんなぁ。むしろ家族という呪縛から逃げていたと思う。俺の家によく来て夕飯食ってたけど、「うらやましい」って連呼してたっけ。

男の基準に厳しい姉も妹も理人のことは気に入っていたし……ま、これだけ高スペックの男に対して恋愛感情抜きだったのが不思議だったけど。


大丈夫かな? 理人、お前……もう俺はいないけど、俺の実家にメシでも食いにくるか?

あまりお勧めしたくないけど、なんだったら姉貴か妹とでも結婚して、実家と縁を切ってウチの婿養子にでもなれば? 本当にあの姉妹はお勧めはしないけど。


フーフーと荒い息を吐いた理人は、そのまま崩れるように倒れた。


はわわわ、大変だっ!

ナースコールと思っても、俺の指ではボタンが押せないから、わたわたと俺は慌てる。


理人は仰向けになり、右腕で目元を隠す。

いーやあああぁぁぁぁっ! ばか、理人。点滴の針が抜けて血が……血が……いやあああああぁぁっ!

幽体でパニック状態になっている俺は理人の周りをぐるぐると飛び回る。


「……み。拓……海」


自分の名前を切なげに呼ぶ声にピタリと動きを止める。


「す……よ、み。なんで、なんで……死んじまったんだ……み」


あ……ごめん。ごめんな、理人。俺があんなバカ女にひっかかったから、こんなことになって。ごめんな、理人。

しょぼーんと落ち込む俺。


「……好きだよ、拓海。会いたい……会いたいんだ、拓海」


うんうん。俺も好きだよ、理人。俺も会いたいよ、理人。


「好きだ、拓海。……てる。……愛してる」


うんうん。うん? うん? へ? はへ? えっと……え?


え、えええええええぇぇぇぇぇぇぇぇっ!


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