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転生したら悪役令嬢の白豚パパでした!?~うちの子は天使で元恋人は最強騎士です?オーラを見極め幸せを掴め!~  作者: 緒沢 利乃
社交シーズン春①

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伯爵 帰る

ようやく王都での社交を終えて、オールポート領へ帰る日がきた。

ま、まあ、社交つっても夜会で何人かおっさんと挨拶したあと、手紙を出したぐらいだけどさ。


兄上であるハーディング侯爵とは、夜会のあとも領地経営のアドバイスや共同事業、人材補充についてこまめに文のやりとりを交わしている。

いや、兄ちゃんさ……セシル君大好きなのはわかったから、毎日手紙を送ってくんなよ。


その、些か重い愛情の賜物で、ホテルの従業員以外にも人材をわんさかと紹介してくれた。その者たちは直接オールポート領へ行っているから、俺とは現地で会うことになるだろう。

ちょっとハーディング領の領民がこちらに流れてくるのもどうかなぁ? と危惧していたが、ほとんどが「オールポート領はヤバい」と住んでいた地を離れていった元領民なので、Uターン組と言っていいだろう。


おかげで、役所の慢性人手不足のブラック臭プンプンの状態も緩和できそうでクラークも喜ぶな。ただ、俺がそっちに帰ったら西側領地のテコ入れが本格的に始まるから、あいつは休めないかも。……ま、しょうがないか!


クレモナ商店街にもカフェ店とパン屋が開店できる。店をトビーたちの希望通りに改装している間は、トビーたちの認知度を高めるために広場に屋台を出してもらう。

そこで人気のメニューを店で提供すればいいし。お客の意識調査もできて一石二鳥だぜ。


改装するのはオールポート領の大工に頼む。もちろん、西側領地に造る予定の工場と職員の寮と託児所と高齢者用の住居もだ。

領内を潤すために、領内で経済を回さないとね。


あ……そうそう、税金の問題もあったな。兄上からの助言を活かしてクラークたちと話し合い、早急に決めなければ。


フンフンッとこれからの計画を考えて興奮している俺に、対面に座っているベンジャミンは冷めた目を向ける。


「なんだよ?」


「いいえ。これまで停滞していた……いいえ没落一歩手前だったオールポート領も、活気づくなと思いまして」


ベンジャミンは冷めた目を俺に向けたまま、俺がポロポロと口から零すアイデアを商業ギルドの申請書に書き込んでいく。

悪かったよ。書類仕事を全部丸投げして。


「忙しくなると思うけど、協力してくれよ。シャーロットちゃんの後継者教育や淑女教育もあるし……」


淑女教育については兄上が家庭教師を手配してくれた。正確には兄上の伴侶である誰かさんがだ。

どうも、家族に結婚を反対されたのを、唯一人俺だけが賛成して父上たちを説得したらしい。

そのため、兄上の奥さんも俺には好意的。今度、オールポート領を訪れるときは奥さんも子どもも連れて来るって約束してくれた。


子ども……俺の甥っ子トレヴァー・ハーディング君、御年10歳。

うわああああっ、楽しみだなぁ。シャーロットちゃんにとっても従弟だし、仲良くなれればいいな。


「ハーディング侯爵のパートナー様は社交界で有名でございます。有名なデザイナーで、デザインしたドレスは王家の方々も御愛用だとか」


「マジか? 王家御用達じゃん」


兄上の奥さんすっげえな! でも、なんで結婚反対されたんだろう?

毒親の母親ならまだしも、父上も反対してたっつーし?


「それは、ハーディング侯爵様にお聞きください」


ベンジャミンはコホンとわざとらしく咳払いすると、手元の書類へ集中するフリをする。


なんだよーっ、ケチんぼ。俺、記憶喪失設定なんだぞ? 実家のことなんてこれっぽっちも知らないつーの。

俺は頬を少し膨らまし、馬車の窓から代わり映えのしない草原の風景を眺めることにした。

















王都からほど近いオールポート領。

俺の巨体に怯える馬も頑張って馬車を牽き、帰ってきました我が屋敷!


屋敷の前には、ディーンが単騎で先触れに行ってくれたからか、使用人たちが並んで出迎えてくれる。

ライラとマリーの姿があり、ジャコモもコック帽を片手に立っていた。

少し離れたところに庭師の爺ちゃんの家族。爺ちゃんには王都土産とは別に花の種やら苗やらを買ってきたからシャーロットちゃんと庭造りを頑張ってほしい。

ピシッと緊張した面持ちで立っているのはノーマンだ。

ベンジャミンもディーンも不在の中、不安なこともあっただろうが、よく留守を守ってくれた。ちゃんと褒めてあげないとな。ベンジャミンは決して褒めないだろうし。


そして、胸の前で両手を祈るように握っているシャーロットちゃん。

少しは体力がついたかな? ちゃんとお肉を食べて運動しているかな? 随分と表情が柔らかくなってお肌もツヤツヤになったと思うけど。


……俺、白豚がいなくて淋しいって思ってくれたかな?

俺のこと家族だって思う日はあったかな?


ほんの少し離れていただけなのに、俺の中には不安な気持ちがあるみたいだ。

自分の「(オーラ)」は見えないけど、きっと例のグレー色の水玉模様が俺の「(オーラ)」に混じっているはず。


ガタンと大きく揺れて馬車が止まる。先に下りたベンジャミンが手を差し出す。

その手をしっかりと握って、ゆっくりと馬車を下りると、使用人たちは一斉に頭を下げた。


「「「お帰りなさいませ、セシル様」」」


うわーっ、なんか、グッとくる。俺……ちょっとは認めてもらえたかな?

白豚が情けなくも厚い脂肪が乗った瞼の裏で目を熱くし口元をブルブルと震わせていると、シャーロットちゃんが一歩前に出てくる。


「お帰りなさいませ、お父様」


いい子ーっ! 本当にこの子はいい子だよーっ! ずっと放っておいた白豚パパなのに、そのまま王都に行って帰ってくんなクソジジイって言われても仕方ないのに。

ハニカミながらの「お帰りなさい」って、全世界の父親が切望するシチュエーション!

感動で胸がいっぱいになるよおぉぉぉぉぉっっっっっ!


「た、ただいま。シャーロットちゃん。みんな」


俺の後ろに控えて立つベンジャミンもディーンも。イヤイヤながらも世話をしてくれたメイも。本当にありがとう!

ジーンと感動している俺に、さらに嬉しい言葉が。


「お父様……少しお痩せになられましたか? 顔のラインがはっきりしてきました」


「そおおおおおぉぉぉぉぉぉ? 本当に? いやったあぁぁぁぁぁぁぁい!」


ひゃっほう! と喜んで終わればよかったのに……。


「えー、そうですか? 毎日見ているとわからないですけどね? シャーロット様の目の錯覚では?」


ディーン、お前……しばらく禁酒でもしてろっ!




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