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転生したら悪役令嬢の白豚パパでした!?~うちの子は天使で元恋人は最強騎士です?オーラを見極め幸せを掴め!~  作者: 緒沢 利乃
陰謀編 社交シーズン春②

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伯爵、未来に涙する

大嫌いな令嬢と実の母親に嵌められて、意に沿わぬ結婚と望まぬ子どもの父親にさせられたセシル君が深い闇に落ちていたころ、ベンジャミンは元凶の一人である父親を追い払った……気ではいたが、所詮領地屋敷から王都屋敷へと移動させただけ。職位も執事長からヒラの執事にさせたが、王都屋敷にはヴァスコ以外は父の知己ある使用人がいて、かなり偉そうだったらしい。そこへヴァスコがウキウキモードで破滅させポイッとオールポート伯爵領の隅っこに捨ててきた。結局、ベンジャミンではなくヴァスコが後顧の憂いを払ったと言える。


「コーディたちのこともそうです。あんなの、セシル様との子どもが……と女が押しかけてきたときに処理するべきです」


フンッと腕を組んでヴァスコが苦々しい顔をする。確かにね、ベンジャミンは自称後妻のイライザとその連れ子ニセ乳のモニカに、まんまと屋敷に入り込まれて、コーディという小悪党にその身を追われてしまった。俺がセシル君の中で目覚めたとき、あいつ下働きだったもんな。


「まったく情けない。あげくに嫡子であるシャーロット様さえも守れない。え? 私ですか? 社交シーズンに貴族だと勘違いしてやらかすあいつらの尻拭いと秋の税務報告の辻褄合わせに奔走していましたが? 私がいなかったらあちこちの貴族から不敬罪で訴えられ文無しになっているか、税金が払えずに爵位を取り上げられてますよ」


「……納得」


そうだよな……あのおバカさんたちが少なくても数年、オールポート伯爵家で好き勝手できたのは、対王家や対貴族の防波堤があったからだよ。……ん? なんか、わかってしまったかも……。


「あの……さ、ヴァスコ……お前、あのニセ乳ちゃんかコーディに、シャーロットちゃんの婚約者のことで何かけしかけた?」


恐る恐る問うた俺の言葉にニイッと口角を上げるヴァスコの表情に、俺はあらぬところがヒュンとした。


「何も……。ええ、私は何も言ってませんよ? まさか、私があの小娘の耳にシャーロット様の地位を奪いたければ婚約者を誘惑すればいいなどと、囁く訳がありません。そんなことになったら平民のお家乗っ取りで……あの者たちの首が飛びますよ」


ニーッコリ。……俺がハーディング侯爵家の助けを借りて「ざまぁ」してやったと思ったあの事件。ほとんどヴァスコが張った蜘蛛の糸に奴らが引っ掛かっていたなんて……。ガクッ、俺……頑張ったのにぃ。


「それでも、まさかあの小娘とぼんくら息子を結婚させてしまうなんて。セシル様もなかなか」


「お前に褒められてもあんまり嬉しくない」


ちなみに、ヴァスコが勤めたかった他の貴族家、ウェントブルック辺境伯家はルイス殿とルーカスとの継承位争いが楽しみだったのと、ハーディング侯爵家は手広く事業を手掛けてて単純に面白そうだったから。


能吏な人の考えってわからないわー。そりゃ、思う存分、自分の能力をフル回転させたいって思うのかもしれないけど、わざわざ揉めそうな家に首を突っ込みたがるって……。


「あれ? じゃあ、もうオールポート伯爵家にはトラブルがなさそうだから、ヴァスコは退屈を持て余しているのか?」


性格に難ありだが、やっぱり超優秀なヴァスコに辞められると困る。ベンジャミンよりも強い存在だなんて、手放したくない。


「いえいえ。私はたとえセシル様の記憶が戻っても、オールポート伯爵家に仕えるつもりでございます。そうですねぇ、老いぼれて仕事ができなくなったら、サレルノの施設にでもお世話になります」


「サレルノの施設って、昼間は子どもの世話があるぞ? 軽作業もあるし……」


オールポート伯爵家からの給金を貯めてあるなら、どっかに一軒家でも買ってのんびりと老後が送れるのでは? だが、ヴァスコは本物の微笑みで緩く頭を横に振った。


「ふふふ。一人では寂しいですし……。その前にノーマンを執事長として相応しくなるよう叩き直さないと。ベンジャミン殿は優秀ですが、何と言っても師匠があの父親ですからね」


ヴァスコの見立てではシャーロットちゃんは女伯爵としての能力は申し分ないが、貴族としてはいささか純真すぎる。そして婚約者も真っ直ぐの気性で腹黒いことや裏工作などは考えもつかないタイプだと。うん、その人物評は合っているな! その二人のフォローをすべき執事長が、二人と同等のお人好しでは、伯爵家の未来は真っ暗だという。……やべぇ、俺もそんな気がしてきた。


「ディーンが執事長として残るならまだしも……ノーマンでは悪党に騙されて終わりです」


ピシャリと言い切るヴァスコに、ディーンは性格が悪いと評価されたと誤解して鼻にシワを寄せる。


「ベンジャミン殿は優秀ですが、家のためという目的を勘違いしている気がします。家だけを守っても仕方ない。結局はその家の人。人なのですよ、セシル様。ベンジャミンが苦慮して守ったオールポート伯爵家は虫の息でした。貴方という犠牲を生んでも守れなかった。なのに……記憶を失ったセシル様は見事にオールポート伯爵家を復活させた。貴方の周りには人が集まっている。あんなにオールポート伯爵家には戻りたくないと意地を張っていたディーンさえも」


「ちょっ、ヴァスコさん!」


「……記憶が戻って貴方がいなくなってしまうのは寂しいことですが、きっと……貴方のことは忘れないでしょう。残された者たちは貴方の思いを追いながらオールポート領で生きていくと思いますよ」


「そうかな? そうだったらいいな」


えっへん! 俺も結構頑張ったからね。サレルノだって領都クレモナだってヴァゼーレだって。俺が俺としていられなくなっても、ずっとずっと頑張っていってほしい。


「……俺は……セシル様がいなくなったらオールポートの屋敷は出ます。でも……サレルノかクレモナか、どこかはわからないけど、セシル様が残していったものを……俺が引き受けようと思ってます」


「ディーン……。ズビッ。バカ、お前。泣くようなこと言うなよ」


ズビビッと鼻が出ちゃっうだろう。


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