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転生したら悪役令嬢の白豚パパでした!?~うちの子は天使で元恋人は最強騎士です?オーラを見極め幸せを掴め!~  作者: 緒沢 利乃
領地経営編 ③

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117/125

領主、ヴァゼーレに到着

俺たち一行は騒がしい領都クレモナを後にして、ガタンゴトンと馬車を走らせる。


ヴァゼーレへと続く東側領地へと延びる街道を五台の馬車と十五騎の馬が走り抜ける。まだ日が落ちきらないうちに小さな町に入り、いくつかに分かれて宿屋に泊まった。

俺は慣れない馬車の長時間移動で疲れはて、食事もそこそこにベッドに入って体を休めた。ダイエットどころではない、体がギシギシするのだ。


朝、固いベッドの上で、寝る前にストレッチだけでもすればよかったと後悔することになる。疲れがとれるどころか、全身の筋肉が強張っている気がする。筋肉なんてないでしょ、と笑った奴は出てこい!


宿屋の朝食を食べ、朝日と共に出発する。泊まった町を過ぎると田舎の長閑な風景が広がる。つまり、山と草原、畑や牧場があるだけ。代り映えしない風景を横目にただ移動するのは……苦痛だった。


そして二日目の夜、村に立ち寄り空いている敷地を貸してもらってテントを張った。今日の夜はここで野営をする。伯爵の俺だけは村長の家に泊まればと、しつこく誘われたが断った。

とにかく、疲れていて人の顔色を窺って外面よく振る舞える自信がなかったのだ。


「う~。辛い」


「大丈夫ですか? セシル様、まだヴァゼーレには遠いですよ」


ディーンが俺の寝支度を手伝いながら余計な一言を漏らす。うるさいっ、こんなところでリタイアなどするものか。ちゃんとヴァゼーレまで辿り着いてみせるわっ。


でもなぁ、この白豚伯爵セシル君の体になって、とにかくため込んだ脂肪を減らさなきゃと頑張ってきたが……、実はお貴族生活にどっぷり浸かっていたんだなぁと実感しました。

オールポート家の調度品って高級品なんだよ。ソファーもふかふかで寝具も上等。甘やかされた体は、狭い馬車の長時間移動と庶民レベルの固い寝具に悲鳴を上げた。


「うっ、情けない」


前世の俺なら多少の不便は耐えられたんだけど……。

白豚がいじけていると、なにやら外が騒がしい。ディーンが様子を見にテントを出て行ったと思ったら、速攻戻ってきた。


「セシル様。行きましょう」


「なんだよっ」


「村の住人が客人が珍しいと食事と酒を持ってきてくれました!」


へ? なに……こんな辺鄙な場所にある小さな村の住人が? だって、ぜったい生活は苦しいよな? なのに……もてなしてくれるのか?

恐る恐るテントから顔を出すと、真ん中に大きな焚火があり、粗末な服を着た村人が、大柄な騎士の間を酒を注いでまわっていた。

ぷ~んと肉が焼ける美味しい匂い。きゃらきゃらとかわいく笑う子どもの声が疲れた耳に優しく響く。


「セシル様~」


「こっちに肉串がありますよーっ」


クラークとハリソンに手を振って、俺は小走りにテントから飛びだした。

























賑やかな晩餐後は、テントに入るなりゴロリと横になってぐっすりと眠っていたみたいだ。


「う~うん」


テントから出て、朝日を浴び腕も体も伸ばす。気持ちいい~! どうやら体の強張りと疲れが癒されたようで、体調も気持ちもすこぶる快調です!


「おはようございます、セシル様」


騎士たちが手早く野営撤収の準備をしていた。


さあ、今日はヴァゼーレに到着だ。状況を把握しているはずの文官はおらず、荒くれ鉱山夫たちに支配されているヴァゼーレに、悪政を強いていた領主一行が来るとなれば、どんな手荒な歓迎を受けるのやら。

あまり、考えたくはないが仮にも伯爵様に向かって、いきなり武力行使はしないだろう。俺は些か呑気な気持ちで、見送りの村人たちに手を振り馬車に乗りこんだ。


えっ……と、ヴァゼーレの鉱山町は、確かに山間の町で三角州の形をしている。町の入り口には堅牢な鉄門があり、屈強な兵士が門番として立っていた。

兵士? いや、これ鉱山夫だろう? いかつい兜に金属製の胸当てやら脛当てやらあるけど、腹筋はモロ出しってスタイルは、古代ローマの剣闘士のようだ。


そして、その鉄門の向こうに群がるガラの悪い男たち、鉱山夫だろうけど。その男たちがギャーギャーと騒いでいる。

そう、シュプレヒコールにもならない、ただの罵声。そして「帰れ」コール。

うう、くじけそうです。ハリソン、助けて。

グイグイとハリソンの背中を押して、奴らの矢面に立たしてやる。


「セシル様、何やってんですか」


「俺の繊細なハートが壊れそうだ。ハリソン、お前の出番だろう? ここに知り合いはいないのか?」


俺の言葉にハリソンは目を眇めて鉄門の向こう側にいる奴らを見回した。騎士団長の一瞥に何人かの男はそっと目を逸らしている。

しかし、ハリソンに気づく奴らがいないのだが? お前、本当にここにいたの? 小遣い稼ぎに宝石の採掘してたんでしょ?


ひょこと俺がハリソンの背中から顔を出し、様子を窺っていると、鉱山夫たちの後ろからゆっくりと登場してくる男がいた。その男の場所を空けるためにスウーッと左右に人波が割れる。


「……よぉ、ハリソン。生きてたか」


「やっぱり、ここを牛耳ったのはお前か」


のっそりと現れたハリソンと同体格の男。伸ばし放しの茶髪を後ろで一つに括り、袖なしのチュニックにダボダボのズボン、むき出しの腕は筋肉で盛り上がりめちゃくちゃ太い。片手に酒瓶を持ち、ニヒルに口の片端を上げて笑っている。もちろん無精髭は生えているし、お約束の右目に傷あり。


……山賊のお頭ですか?


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