34' 先輩 Day3
・・・小倉さんは高馬君と別れ話をしてるみたい。ドリンクバーだけ頼み、アイスティーを飲みながら必死に耳を傾ける。
「・・・クソ野郎みたいなこと、言ってもいいか?」
「・・・なによ」
「・・・俺、お前のこと、多分、好きだ」
心臓が跳ね上がる。君は、私の彼氏じゃあないの?なんで小倉さんが好きと言ってるの?意味がわからないよ。君は、私を愛してるんじゃあないの?
「・・・・・・その先輩を独りにしたくなかったんだ」
・・・君は、高馬君は私が可哀想だから付き合ってくれたの?バイトで一緒に働くのも、ご飯を奢るのも作るのも食べさせるのも、ゲームもおしゃべりもドライブも、全部、私が可哀想だから付き合ってるの?違うよね。君は、君は、高馬君は私が好きだから付き合ってくれてるのだよね?そうだよね。小倉さんを傷つけないようにワザと優しい言い方をしてるんだよね、そうだよね。
「・・・じゃあ、最後に一緒にさ、写真撮らない?」
「・・・いいぜ」
「ほら、笑ってよ」
「はい、チーズ」
・・・高馬君と小倉さんのツーショット。私もスマホを開きデート中に撮った写真を見る。緊張したように少し強張ったような表情にも見える。でも、今高馬君が小倉さんと撮った写真、彼の顔は私すら見たことがないような、柔らかく、温かく、可愛くて、優しい顔をしてた。
その顔は、私のだ。その写真も、私のだ。
色々な考えがグルグルしていると、高馬君が席から立った。いつの間にか小倉さんじゃあない人が隣にいる。誰、誰なの?私も慌てて立ち上がえり、追いかける。
2人は普通に歩きながら喋ってるみたい。気が付かれないように距離を取ってるから話は全く聞こえない。私は舌打ちして煙草に火をつけた。
灰皿を探してきょろきょろしてるうちに見失った。バカ。携帯灰皿の持ち合わせもないし、火を塀で揉み消し、吸い殻を持ってガストの駐車場に戻る。
『支倉さん』
すぐさま既読、即返信。
『なに?』
『今週末、つまり明後日暇ですか?』
『もちろん』
『デートしません?』
!やっぱり高馬君は私が好きなんだ。小倉さんを傷付けないようにそうやって言ったんだ。
『うん。私も高馬君と話したいことがたくさんあるんだ』
将来の話とかね。車の中でもう1本火をつける。ついでに細君に電話を掛ける。
「三界の狂人」
「四生の盲人」
「なんの用だ?」
「ねぇ、小倉さんを殺してほしいな」
「・・・殺すはよっぽどの理由がないとできない」
「嫌いだからだよ。お金なら用意する」
「お金の問題じゃあない。USBはもう見たのか?」
「まだ見てない」
「まずはそれを見てからにしてくれ。それじゃ」
・・・確かに、殺すは言いすぎちゃったな。もう2度と高馬君に関わらないと約束してくれたら、幾らでもあげるし、いい男だって紹介してあげる。高馬君の人生って名前の本の中に、君はもう、いらないの。君は高馬君の幼少期を彩った負けヒロインとして、すみっこでじっとしてて。




