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第28話:灼熱の砂漠と、陽気な砂狐

アークライトの門を潜り、俺たちの新たな旅が始まった。目指すは、大陸南方に広がる『灼熱の大砂漠』。

これまでの旅とは違い、俺の隣にはエリアだけでなく、元『深淵の暁』の使徒であったセラもいる。三人になったパーティーは、どこか新鮮で、それでいて不思議な一体感があった。


俺たちは、街道を南下し、やがて活気あふれる巨大な港町へとたどり着いた。ここから大型の帆船に乗り、一気に南の大陸を目指すのが最短ルートだ。

初めて見る広大な海に、エリアは「綺麗です…!」と目を輝かせ、セラは潮風に吹かれながら、どこか遠い目をして自分の過去を省みているようだった。船旅の数日間は、穏やかな休息の時間となった。


南の大陸の玄関口であるオアシス都市『バハール』は、これまでのどの街とも違う、異国情緒あふれる場所だった。

灼熱の太陽、活気あるバザール(市場)、色とりどりの布をまとった人々、そしてラクダのような珍しい動物。俺たちは、その喧騒の中で、旅の目的地である幻の古代都市『サハラ・マハル』の情報を集め始めた。


だが、幻は幻。ほとんどの者が「おとぎ話だ」と笑うばかりで、有力な情報は全く得られない。

そんな中、俺たちはとある情報屋から、一人の人物の名を聞き出した。

「砂漠のことなら、砂狐すなぎつねのリナに聞くのが一番だ。あの女狐ほど、砂漠を知り尽くしている者はいない。金にがめついが、腕は確かだよ」


紹介された場所は、バザールの片隅で香辛料や珍品を扱う、小さな店だった。

店の奥から現れたのは、しなやかな身体つきに、ずる賢そうな笑みを浮かべた、狐の獣人の女性だった。彼女が、リナらしい。


「『サハラ・マハル』? はてさて、そんな夢みたいな話、どこで聞いてきたんだい? あたしはただの商人さ。おとぎ話には興味ないね」

リナは、そう言って俺たちをあしらおうとする。

だが、俺の【鑑定(真)】スキルは、彼女が懐に隠し持っている、羊皮紙の巻物――『サハラ・マハル』への古地図の一部を、はっきりと捉えていた。


俺は、カウンターに一つの袋を置いた。中には、黒鉄の迷宮の宝物庫から得た、極上の宝石が一つ。

「これは手付金だ。あんたが持つ『地図』で、俺たちをそこへ案内してくれ。成功すれば、この10倍は払う」


俺の言葉と、宝石の放つ尋常ならざる輝きに、リナの狐耳がピクリと動いた。彼女は、俺たちがただの冒険者ではないこと、そして、この話が莫大な利益を生むことを、商人としての鋭い嗅覚で嗅ぎ取ったのだ。

「……面白い。あんたたち、ただ者じゃないね。いいだろう、その話、乗った!」


こうして、砂漠の専門家であるリナを案内に加え、俺たち四人は、いよいよ灼熱の大砂漠へと足を踏み入れた。

砂漠は、想像を絶する過酷な環境だった。

昼は肌を焦がす灼熱地獄、夜は凍えるほどの極寒。突如として発生する巨大な砂嵐が、視界と方向感覚を奪う。


「来たぜ、砂漠の主のお出ましだ!」

リナがそう叫んだ瞬間、砂の中から、巨大な口を持つ魔物『サンドワーム』が何体も姿を現した。


「セラ、幻術で敵の注意を! エリア、みんなに加護を!」

俺の指示に、二人が即座に応じる。セラの幻術がサンドワームの感覚を狂わせ、エリアの治癒の光が、俺たちを砂漠の熱から守る。

俺は、その隙に地を蹴り、サンドワームの群れの中心に飛び込むと、【星砕き】を振るい、その巨体すべてを、一瞬で砂塵へと還した。


「ひゅー! やるじゃないか、あんたたち! こりゃあ、大儲けの匂いがぷんぷんするね!」

リナは、俺たちの連携と圧倒的な力に、驚きと興奮を隠せない様子だった。


数日間の過酷な旅の末、リナの案内と古地図が示す、砂漠の中心地へとたどり着いた。

そこは、巨大なクレーターのようになっており、その底に、流砂に半ば埋もれながらも、かつての栄華を偲ばせる、壮大な古代都市の白い尖塔が、陽光を反射して輝いていた。


「間違いない…あれが幻の都、『サハラ・マハル』だよ…!」

リナが、興奮した声で叫ぶ。


だが、俺たちの目に映ったのは、美しいだけの光景ではなかった。

古代都市全体が、禍々しい紫色の結界に覆われ、その周囲には、明らかに人の手で配置されたと思われる、おびただしい数の魔物が徘徊している。


「どうやら、先客がいるみたいだな」

俺は、遺跡の中心部で揺らめく、見覚えのある黒いローブの一団を睨みつけた。

「しかも、随分と手厚い歓迎の準備をしてくれてるじゃないか」


『深淵の暁』。奴らもまた、この場所にたどり着いていたのだ。

灼熱の砂漠に沈む古代都市を舞台にした、三つ目の封印を巡る争奪戦の火蓋が、今、切って落とされようとしていた。

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