表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/30

第27話:贖罪の誓いと、砂漠に沈んだ古代都市

暴走した嵐が静まり返った『風の神殿』で、俺たちは事後処理にあたっていた。

元凶である裏切り者の聖職者は、全ての力を失い、ただ虚ろな目で宙を見つめているだけだった。もはや、彼自身が、長年抱き続けた絶望の抜け殻となっていた。


「この方は…私が責任を持って、里の者たちと共に…」

元『深淵の暁』の使徒であったセラが、そう申し出たが、俺はそれを制した。

「裁きは、俺たちの仕事じゃない。あんたの仕事は、その知識と力を、これから世界を救うために貸してくれることだ。それが、あんたにできる一番の償いになる」


俺の言葉に、セラは驚いたように目を見開き、やがて、その瞳から大粒の涙をこぼしながら、深く、深く頭を下げた。

「…ありがとうございます。この命、必ずや、世界のために…貴方のために使います」


こうして、俺たちのパーティーに、三人目の仲間が加わった。

聖職者は、麓のドワーフたちに引き渡された。彼が犯した罪は、山の民のルールに従って裁かれることになるだろう。


アークライトへの帰路、パーティーの雰囲気は以前とは少し違っていた。

エリアは、最初こそ元敵組織の一員だったセラに、少しだけ警戒心を抱いていたようだった。だが、セラが自分の罪を悔い、真摯な態度で俺たちに尽くす姿を見て、徐々に心を開いていった。

闇魔法や隠密行動に長け、冷静沈着なセラと、光の魔法で人々を癒し、心優しいエリア。対照的な二人は、しかし、不思議と良いコンビになっていった。


アークライトの我が家に戻った俺たちは、早速、作戦会議を開いた。

テーブルの上に、俺たちが『黒鉄の迷宮』で見つけた古代の日誌と、セラが『深淵の暁』から持ち出した機密文書を広げる。


二つの情報を照らし合わせることで、驚くべき事実が次々と明らかになった。

『深淵の暁』は、俺たちが考えていた以上に巨大な、世界規模のカルト教団であること。

彼らは、俺たちが確保したような『厄災の心臓』を集め、それらを触媒にして、太古に封じられた『大いなる厄災』そのものを、完全に復活させようとしていること。

そして、彼らもまた、残りの五つの封印の場所を血眼になって探していること。


「これは、時間との戦いになりますね…」

セラの分析に、俺とエリアは頷く。


「次の封印の場所は…この日誌の詩と、教団の暗号地図を重ねると…ここだ」

俺が指し示したのは、大陸の南方に広がる、広大な砂漠地帯。

『灼熱の大砂漠』。そして、その中心に、かつて栄華を誇り、今は流砂の底に沈んだと伝えられる、幻の古代都市。


「『サハラ・マハル』…」

エリアが、その名を呟いた。


次の目的地が決まれば、やることは一つ。新たな旅への準備だ。

砂漠の過酷な環境に備え、耐熱効果のあるマントや、大量の水を確保できる魔法のアイテムを買い揃える。


その準備の傍ら、俺は手に入れた二つの『厄災の心臓』の解析を始めていた。

『黒鉄の魔像』から得た闇のエネルギーと、『風の神殿』で得た嵐のエネルギー。性質の全く違う二つの強大な力を、俺は【鑑定(真)】スキルでその構造を理解し、【魔力操作(極)】で慎重に制御する。


そして、【星砕き】を触媒にして、二つのエネルギーを合成する実験を試みた。

剣の刀身の上で、闇と風が渦を巻き、やがて、空間そのものを切り裂くような、黒い刃を生み出す。まだ不完全で、制御も難しいが、俺の力は、また新たな次元へと進化しつつあった。


全ての準備を終えた日。

旅立ちの前夜、セラが俺の部屋を訪ねてきた。


「アルトさん。今更な質問ですが…貴方は、一体何者なのですか? その底知れない力は、まるで神話に出てくる英雄のようですが…」

その問いに、俺はただ、昔を懐かしむように笑った。


「ただの元Dランク冒険者だよ。パーティーの荷物持ちで、足手まといだった男さ」


セラは、その言葉を信じはしなかっただろう。エリアも、隣でくすくすと笑っている。

だが、それでいい。俺が何者であろうと、俺たちの目的は変わらない。


「行くぞ、二人とも」

俺は、新しい仲間たちに向き直る。

「世界の運命を変える旅の、続きだ。次は、砂漠の古代都市で、派手にやらかしてやろうぜ」


新たな決意を胸に、三人となった俺たちのパーティーは、灼熱の太陽が待つ南の大地へと、その歩みを進めるのだった。

壮大な旅の第三章が、今、幕を開ける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ