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第23話:古代の遺産と、七つの厄災の序曲

「世界の各地に、まだ同じような封印が、七つ存在する…」


エリアが読み解いた古代の日誌の内容に、俺は思わず口笛を吹いた。

「はっ。面白くなってきたじゃないか。どうやら、俺たちの旅は、まだ始まったばかりってことらしいな」


目の前の状況に顔を青くするエリアとは対照的に、俺の心は、新たな冒エンへの期待に奮っていた。

ひとまず、俺たちは目の前にある「お宝」をいただくことにした。魔像が遺してくれた、広大な宝物庫の探索だ。


そこは、まさに伝説の具現だった。

眩いばかりに輝く金貨や宝石の山。壁には、使い手を選ぶような強力な魔力を秘めた武具が並び、棚には、今や失われた古代の魔法や技術が記された書物が、埃をかぶって眠っている。


俺はエリアに、彼女の清らかな魔力に呼応する、美しい白銀のローブと、治癒魔法の効果を何倍にも増幅させるという『世界樹の杖』を見繕ってやった。

「こ、こんなすごい物を、私が…?」

「仲間が強いに越したことはないだろ? これで、あんたもただ守られるだけじゃなくなる」

俺の言葉に、エリアは決意を新たにしたように、力強く頷いた。


残りの財宝や書物は、金銭的価値すら計り知れないものばかりだったが、俺はそれら全てを【アイテム収納(大)】の中へと吸い込んだ。


そして、最後に残った問題が、俺が確保した『深淵の心臓』だ。

紫黒の水晶は、収納空間の中でもなお、不気味な脈動を続けている。


「アルトさん、それは…ギルドに報告して、国に管理してもらうべきでは…?」

エリアが、当然の提案をする。

だが、俺は首を横に振った。

「いや、やめておこう。こんな物騒なものが存在すると知れば、これを悪用しようとする馬鹿が必ず現れる。下手をすれば、国同士の戦争の火種にもなりかねない」


俺は、静かに続ける。

「誰にも知られず、誰にも使わせない。それができるのは、世界で俺たちだけだ。俺たちが管理する方が、よっぽど安全さ」


その決断は、途方もなく重い責任を伴うものだった。だが、エリアは何も言わず、ただ、俺を信頼しきった瞳で頷いてくれた。


『黒鉄の迷宮』から脱出した俺たちは、アークライトのギルドへと帰還した。

俺とエリアがカウンターに現れ、依頼達成を告げた瞬間、ギルドマスター・マードックの目が点になった。


「…い、今、なんと言ったかね?」

「だから、依頼は完了したって言ってるんだ。これが、討伐の証拠だ」


俺は、【アイテム収納】から、魔像の紋様が刻まれた装甲の破片を、ドンとカウンターに置いた。

Aランク級の未踏破ダンジョンを、たった二人で、出発してからわずか一日で踏破して帰ってきたのだ。マードックが驚くのも無理はない。


「き、君という男は……わしの想像を、いつも、いつも軽々と超えてきおるわ…!」


マードックは、呆れを通り越して、もはや楽しそうに笑っていた。

俺は、ダンジョンマスターが封印の守護者だったことは伝えたが、『深淵の心臓』と七つの封印のことは、報告書には書かなかった。マードックは、俺が何かを隠していることに気づいているようだったが、何も聞かずに依頼完了を承認してくれた。


破格の報酬である金貨1000枚と、街中の冒険者たちからの、もはや神を見るかのような畏敬の視線。

測定不能エラー』のアルトという名は、この日、アークライトの生ける伝説となった。


だが、俺はそんな名声に興味はなかった。

手に入れた金で、俺たちは街のはずれに、静かで暮らしやすい家を一軒買った。鍛冶師のバルガスに最高の酒を届け、【星砕き】の活躍を報告すると、彼は自分のことのように喜んでくれた。エルフの里にも、エリアの母親が全快したことと、俺たちの無事を知らせる手紙を送った。


そうして、穏やかな日々が数日過ぎた頃。

新しい家の書斎で、俺とエリアは、あの古代の日誌を改めて広げていた。


日誌には、七つの封印の場所を示す、謎めいた詩と、不気味な紋様が描かれた地図が記されている。


「この詩が示すのは……おそらく、この場所…」

エリアが、地図の一点を指さす。そこは、アークライトから遥か北方に位置する、険しい山脈地帯だった。

『風鳴きの山脈』。一年中、風が鳴き止むことのない、過酷な場所だという。


「次の目的地は、決まったな」

俺がそう言うと、エリアは、母親を救ってくれたアルトへの恩返しと、今度は自らの意志で世界を救うという、新たな目的を見つけ、力強い瞳で俺を見つめ返した。


「はい! どこへでも、お供します!」


過去の因縁は、終わった。

だが、俺たちの本当の物語は、まだ始まったばかりだ。

世界の真実に迫る、壮大で、過酷な旅。その第二章の幕が、今、静かに上がろうとしていた。

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