最強魔王vs101人の勇者たち――始まる!
「お前たちの微力を尽くして証明してみせるがいい! この俺の愚かなる蛮勇を!」
その言葉は号砲だった。俺の挑発によって怒りが臨界点を超えた生徒たちが俺へと押し寄せる。
「おおおおおおおおおおおおおおおおお!」
その目は俺への敵意に燃え上がっている。
「臆せずついてこい! アルカシオン!」
俺は前へと出た。
最初の五人組が俺の前に現れる。きらびやかな鎧に身を包み、手に持った光り輝く剣からは何かしらの力を感じる。いずれも聖剣であろう。
先頭の男が口を開いた。
「先陣はグービルバルフィス侯爵家の嫡男がもらった! もちろん、この俺の一振りで終わりだがな! 調子にのった一年生が! 上級生の力に恐れおのの――!」
「長い」
俺の一撃がグービなんたらの胸板を貫いた。
「ぐふぉぉあ!?」
悲鳴と同時、グービなんたらの身体が光となって消えていく。
ふむ……。
死なないってのは気を遣わなくていいね!
「お、おのれ、! グービルバルフィスをよくも!」
残った四人の勇者たちが一斉に襲いかかってくる。
「我らは生徒会に次ぐ優勝候補のチーム! 不意打ちで初戦を飾ったくらいでいい気になるな!」
四本の刃が俺に襲いかかる。
そのすべてを俺は素手であっさりと払いのけた。
「戦わずしてキルビスに膝を折った連中が吠えるなよ」
確かにそれなりの使い手なのだろう。
ラーロットよりも格段に動きが速い。
だが、そんなことに何の意味がある?
俺という高みにはるかに届かないものの優劣など、この俺が気にする必要があるのか?
「邪魔だ」
一瞬の四連撃。
身体をくの字に折った瞬間、四人の勇者たちが光となって消えた。
「つ……強……」
後ろでアルカシオンが息を呑む。
アルカシオンと喋っている暇はなかった。一〇人の勇者たちが俺とアルカシオンを取り囲む。
「油断は禁物だ! 気をつけろ! グービルバルフィスのチームを一蹴した男だ!」
油断するな?
気をつけろ?
ははっ! そんな心持ちだけでこの俺の進撃を止められればいいんだがな!
俺はあっという間に一〇人の勇者を叩き伏せる。
「くっ! こっちに来おった!」
アルカシオンの声。
新手か!
一人の勇者がアルカシオンと斬り結んでいた。別の勇者が横合いからアルカシオンへと襲いかかる。
アルカシオンにかわす余裕はない!
俺は地面を蹴りつけ、一瞬で間合いを詰めた。
近づく勇者を一撃で仕留め、そのままの勢いでアルカシオンと斬り結んでいる男に肉薄、右腕をつかむ。
「そいつに傷をつけられると困るんだよ」
俺はつかんだ腕を支点に男を投げ飛ばした。
「うおお!?」
豪快な音ともに男の身体が地面にめり込む。全身を粉砕するほどの衝撃を受け、男の身体が光の粒子に変わった。
「す、すまん……オウマ!」
「いいさ、別に」
「せやけど、うちのことは気にするな! うちも戦う!」
「ダメだ」
「……え?」
「キルビスをぶん殴ってやりたいんだろ? お前を無傷でキルビスのところまで連れていくのが俺の仕事だ。温存しろ」
「せやけど! この数やで!? うちも役に立たんと……!」
「一〇〇が一〇〇〇だろうが問題ない」
そこで俺はぴんと閃いた。
「そうか、数だな。役に立ちたいのなら倒した敵の数でも数えておいてくれ。今で一七だ」
俺たちの会話はそこまでだった。
一〇を超える新手の勇者たちが俺たちに迫ってくる。
「守りながら戦うのも面倒か」
言うと、俺はアルカシオンの襟首をつかみ、思いっきり空へと投げ飛ばした。
「うううえええええええええええええええええええええええええええええ!?」
アルカシオンの悲鳴が天高く上っていく。
「あまり時間が無い! そぅら、行くぞ!」
俺が勇者たちを倒した頃――
「うううわああああああああああああああああああああああああああああ!?」
アルカシオンの悲鳴が空から降ってきた。
俺はアルカシオンの身体をキャッチする。
「意外と悪くないな。次からもこれで行くか?」
ぶるぶると身体を震わせたアルカシオンが首をぷるぷると振る。
「ご、ごめんやけど……堪忍して……」
そうか……。
結構いい案だと思ったんだけどなあ……。
一帯の勇者は全滅したのか、周りには誰もいなくなっていた。
三〇人くらいは倒しただろうか。
キルビスたちは丘のほうへと歩いていった。そちらへ向かえば追いつけるだろう。
俺たちは丘を目指して歩き出した。
「オウマ……」
「ん?」
「うちがキルビスと戦うって……本気なん?」
「そうだが? お前、言ってたじゃないか。キルビスをぶん殴ってやりたいって」
「せやけど……あんたがリーダーやろ? キルビスを倒して名声を上げるのはあんたのほうが――」
「いいんだよ。俺は名声なんて興味がない」
俺の盟友アールグレイブの血を侮辱した罪。その代償は払ってもらおうじゃないか、キルビス・アーガイル。
俺はね、かなり腹が立っているんだよ。
別に俺がぶん殴ってもいいんだが……。
だけど、それは俺よりお前のほうがふさわしいんだ、アルカシオン。これはお前の役割なんだ。
アールグレイブの忘れ形見であるお前の――。
「気合いを入れろよ、アルカシオン。だいぶ弱ってはいるが、キルビスは強い。返り討ちになんてあうなよ?」
俺の言葉にアルカシオンは神妙な顔でうなずいた。




