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国を守る嘘  作者: アゴウオカダ
第一部 若き外交官編 第一章 偽りの戦線
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第八話 地下に眠るもの



「触れてはいけない場所」


老人の言葉が、アシュレイの頭から離れなかった。


---


翌朝。


アシュレイたちは、鉱山の奥へ向かっていた。


案内役は昨日の老人。


元鉱山組合長、バルド。


---


「本当に行くのですか」


バルドが聞く。


「危険だと分かっていて?」


---


アシュレイは歩きながら答えた。


「危険だから確認する必要があります」


---


「若いのに、随分と老いた考え方をしますな」


---


「褒め言葉として受け取ります」


---


バルドは笑った。


「そういうところは、父親に似ていますな」


---


アシュレイの足が止まる。


---


「父を知っているのですか」


---


「昔、何度か会いました」


---


父。


その言葉だけで。


アシュレイの表情がわずかに変わる。


---


「どんな人でしたか」


---


バルドは少し考える。


---


「不器用な人でした」


---


「不器用?」


---


「正しいことをしようとして、周りを困らせる」


---


アシュレイは苦笑する。


---


「それは……」


---


「あなたと似ています」


---


否定できなかった。


---


鉱山の奥。


人がほとんど立ち入らない区域。


---


壁には古い封印跡があった。


---


「これは……」


ミレイが近づく。


---


「帝国式でも、王国式でもありません」


---


カイルが壁を調べる。


---


「かなり古い」


---


アシュレイは周囲を見る。


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ここには不自然な点が多い。


---


失踪者たちは。


この場所を見つけた。


そして。


何かを知った。


---


「この先に何があるんですか」


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バルドは答えなかった。


---


代わりに。


小さな扉を開ける。


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地下への階段。


---


「昔から、この先には誰も入るなと言われていました」


---


「理由は?」


---


「分からないからです」


---


「分からない?」


---


老人は頷く。


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「人間は、理解できないものを恐れます」


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「だから」


---


「昔の人間は、恐れる理由だけを残しました」


---


階段を降りる。


---


しばらく進むと。


広い空間に出た。


---


そこには。


古い研究施設のようなものが残っていた。


---


「これは……」


---


カイルが息を呑む。


---


「遺跡?」


---


違う。


---


もっと新しい。


---


しかし。


現在のどの国の技術とも違う。


---


アシュレイは机の上を見る。


---


紙。


記録。


研究資料。


---


その中に。


一つの文字があった。


---


「魔道具技術……?」


---


ミレイが呟く。


---


リーヴェルト王国では、魔法は戦闘補助程度にしか使われない。


しかし。


一部の大国では。


魔法技術を応用した道具研究が進んでいる。


---


帝国が欲しがる理由。


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少しだけ見えた。


---


「これが目的ですか」


ギルが聞く。


---


アシュレイは首を振る。


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「分かりません」


---


「でも」


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「これだけは確かです」


---


彼は古い資料を見る。


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「三十七人は、この場所を見つけた」


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「そして」


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「誰かが、それを隠そうとしている」


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その時。


---


カチリ。


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小さな音。


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全員が振り返る。


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入り口。


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誰かが立っていた。


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黒い外套。


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顔は見えない。


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「ここまで来るとは思わなかった」


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低い声。


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ギルが剣を抜く。


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「何者だ」


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男は答えない。


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ただ。


アシュレイを見る。


---


「お前は」


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「父親と同じ失敗をする」


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その言葉だけを残し。


---


男は煙玉を投げた。


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視界が白く染まる。


---


「追いますか!」


ギルが叫ぶ。


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しかし。


アシュレイは動かなかった。


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逃げたことではない。


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最後の言葉。


---


父親と同じ失敗。


---


それが頭から離れない。


---


数分後。


煙が晴れる。


---


男はいなかった。


---


しかし。


床には一枚の紙が残されていた。


---


そこには。


短い文章。


---


『国を守るための嘘は』


『いつか国を壊す』


---


アシュレイは静かに紙を見る。


---


初めて。


彼自身の信念を否定する言葉だった。



毎日20時20分投稿予定です。


もしよければ、ブックマークと評価よろしくお願いします。

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