第三話 隠された真実
数日後。
王都には一つの発表が出された。
---
ヴェルナ自治区で発生した失踪事件。
その原因について。
---
「帝国側の不審な活動が確認された」
---
それが王国の公式見解となった。
---
街では様々な声が上がった。
---
「やはり帝国は信用できない」
「いつか攻めてくると思っていた」
「王国はもっと備えるべきだ」
---
人々の不安は広がった。
---
しかし。
---
戦争の気配は一時的に遠のいた。
---
理由は単純だった。
---
王国が「確認できた脅威」として帝国を警戒し始めたからだ。
---
誰も地下施設を知らない。
---
誰も、その奥に眠るものを知らない。
---
少なくとも。
---
今は。
---
「結果だけ見れば」
---
セドリックは資料を眺めながら言った。
---
「君の判断は成功しています」
---
王城の執務室。
---
アシュレイは向かいに座っていた。
---
「成功、ですか」
---
「帝国への警戒は高まった」
「しかし、軍事衝突には至っていない」
---
セドリックは淡々と言う。
---
「最悪の未来は避けられています」
---
「ならば」
---
アシュレイは尋ねる。
---
「問題はないと?」
---
セドリックは少し考えた。
---
「問題がないとは言っていません」
---
「ただ」
---
「国家運営では、全てを綺麗に解決することはできない」
---
その言葉は。
第一章で聞いたものとは違う重さを持っていた。
---
セドリックはアシュレイを見た。
---
「君は選びました」
---
「国全体の混乱を避けるために、情報を制限した」
---
「それは政治判断です」
---
アシュレイは黙る。
---
認めたくないわけではない。
---
ただ。
---
自分の中で整理できていなかった。
---
---
その日の午後。
---
アシュレイは王都の外れを訪れていた。
---
理由は一つ。
---
ヴェルナから来た避難者たちの確認。
---
失踪事件の影響で、一部の住民が移動していた。
---
そこで。
---
一人の老人と話すことになる。
---
「鉱山が止まるらしいな」
---
老人は言った。
---
「安全のためです」
---
アシュレイは答える。
---
老人は苦笑した。
---
「安全か」
---
「確かに命は大事だ」
---
「でもな」
---
老人は遠くを見る。
---
「鉱山が止まれば、仕事がなくなる人間もいる」
---
「家族を食わせられなくなる奴もいる」
---
アシュレイは言葉を失う。
---
「国は俺たちを守ろうとしている」
---
「それは分かる」
---
「でも」
---
老人は続ける。
---
「俺たちは、何も知らされないまま守られている」
---
---
その夜。
---
アシュレイは資料を読み返していた。
---
地下施設を隠したことで。
戦争は避けられた。
---
しかし。
---
別の場所で。
人々の生活に影響が出ている。
---
情報を隠したことで。
---
誰かを守った。
---
同時に。
---
誰かから判断する権利を奪った。
---
「……」
---
机の上には、二つの資料。
---
一つは。
王国への報告書。
---
もう一つは。
ヴェルナの住民記録。
---
どちらも本物。
---
どちらにも嘘はない。
---
しかし。
---
片方には書かれていないことがある。
---
アシュレイは初めて理解する。
---
嘘とは。
---
必ずしも偽りの言葉だけではない。
---
伝えなかった真実もまた。
---
誰かにとっては嘘になる。
---
---
翌朝。
---
灰色塔から連絡が届いた。
---
内容は短かった。
---
『内部情報の漏洩を確認』
---
『調査を開始する』
---
アシュレイはその紙を見つめる。
---
自分の嘘とは別の場所で。
---
誰かがまた。
---
真実を隠している。
毎日20時20分投稿予定です。
もしよければ、ブックマークと評価よろしくお願いします。




