【コラム】俵屋宗達の「風神雷神」は、古代インドの神様だった?
日本の絵画や仏像でもおなじみの「風神雷神」。
大きな風袋を担ぐ風神と、背中に連太鼓を背負ってバチを構える雷神の姿は、誰もが一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
実は、あの二神のダイナミックな姿の「一番最初の原点」こそが、今作でご紹介している『リグ・ヴェーダ』に登場する風神ヴァーユと雷神インドラなのです。
数千キロを旅した「二神一体」の物語
『リグ・ヴェーダ』の第135讃歌などでも描かれている通り、古代インドにおいて「風」と「雷」は、疾風怒濤の勢いでともに駆けつける最高の相棒(二神一体)として讃えられていました。
この二神のイメージは、古代インドからシルクロードを渡り、仏教の伝播とともに中国、そして日本へと東へ東へと旅をします。その途中で、世界各地の美術や文化と融合していきました。
* 風神のルーツ(ヴァーユ \rightarrow 風天 \rightarrow 風神)
ヴァーユは仏教に取り込まれて「風天」となり、ギリシャ神話の風神が持つ「風を吹き出す大きな袋」のイメージと合体しました。これが、日本の風神が持つあの「大きな風袋」の由来です。
* 雷神のルーツ(インドラ \rightarrow 帝釈天・執金剛神 \rightarrow 雷神)
インドラは仏教の最高峰の守護神「帝釈天」となると同時に、最強の雷撃を振るう怒りの姿は「執金剛神」や「雷神」へと発展しました。中国に渡った際、雷の轟音を視覚的に表現するために「背中に丸く並べた太鼓を叩く」というビジュアルが完成したとされています。
なぜ日本でこれほど愛されたのか?
台風や雷雨など、自然の猛威とともに生きてきた古代の日本人にとって、暴風雨を鎮め、農作物に恵みの雨をもたらしてくれる「風と雷のペア」は、極めて身近で尊い存在でした。
太古のインドで詩人たちが謳いあげた「風と雷のダイナミズム」は、日本の気候風土と完璧に重なり合い、三十三間堂の国宝「風神・雷神像」や、俵屋宗達の傑作「風神雷神図屏風」へと美しく結実していったのです。
数千年の時を超えて響くビート
私たちが普段何気なく目にしている風神雷神の躍動感あふれる姿の奥には、太古のインドの詩人たちが感じ取った、自然への畏怖と讃歌が脈々と息づいています。
そう考えると、何千年も前の言葉が急に身近で、ドラマチックなものに思えてきませんか?
本編の讃歌に描かれる、紫の駿馬を駆る風の疾走感と、雷撃を手に突撃する英雄の気迫を、ぜひ日本の風神雷神の姿と重ね合わせながら楽しんでいただければ幸いです。




