第1巻 第135讃歌 ヴァーユ・インドラ神讃歌(二神一体篇)
1 聖なる草は敷き詰められた。
ヴァーユよ、
私たちの宴へ来たり給え。
数千の馬群とともに、
手綱を握る馬群の主よ、
数百万の駿馬とともに。
神聖なる雫は、
神なる汝が
誰よりも早く飲み干すために、
高く掲げられた。
甘美なる祝汁は、
汝の歓喜のために、
汝に力を授けるために、
立ち上るのだ。
2 石によって清められ、
ソーマは汝のために流れる。
美しい輝きを身に纏い、
溜め池へと、
目も眩む光を纏って流れる。
汝のために、
ソーマは注ぎ出される。
神々と人間の中での、
汝に割り当てられた分として。
馬たちを駆り、
ヴァーユよ、愛をもって、
心を寄せて
私たちの元へ来たり給え。
3 数百の馬群とともに、
数千の馬群とともに、
この厳かな儀式へ来たり給え。
聖なる糧を味わうために、
ヴァーユよ、
贈り物を味わうために。
これこそが、
太陽とともに輝き渡る、
旬の分配物なのだ。
控えし祭司たちに運ばれ、
清らかな祝汁が捧げられる。
ヴァーユよ、
清らかな祝汁が捧げられるのだ。
4 馬群に引かれた戦車が、
汝ら二人を
運んでくる。
私たちを護り、
整えられた糧を味わうために。
ヴァーユよ、
贈り物を味わうために。
心地よき風味の祝汁を飲み給え。
最初の一杯は、
汝ら二人に与えられたもの。
ヴァーユよ、
その華麗なる恵みとともに、
二人して来たり給え。
インドラよ、
恵みとともに二人して来たり給え。
5 私たちの歌が、
汝らを厳かな儀式へと
連れてきますように。
絶大な生命力を持つこれらの雫を、
人々は美しく飾り立てた。
力強き快速の駿馬の如くに。
私達に心を寄せて、
これを存分に飲み給え。
私たちを助けるために、
ここへと来たり給え。
飲み給え、インドラ・ヴァーユよ、
石で絞られたこれらの祝汁を。
力を授ける御方よ、
胸が歓喜に満たされるまで。
6 汝らのために絞られ、
水の中で整えられた
これらのソーマの祝汁は、
控えし祭司たちに運ばれ、
汝らに捧げられる。
輝かしく、ヴァーユよ、
それらは捧げられる。
濾過器を速やかに通り抜け、
汝ら二人のために、
ここに注がれるのだ。
羊毛の上を滑り落ちる、
望みに満ちたソーマの雫、
羊毛の上を滑り落ちるソーマが。
7 ヴァーユよ、
眠りこける者たちを
すべて通り過ごし給え。
そして絞り石の音が
響き渡るあの家へと、
汝ら二人して入り給え。
然り、インドラよ、
二人して内へ入り給え。
歓びに満ちた処女(乙女)は
見出され、
溶かしバターは流れる。
豊かな荷を積んだ馬群とともに、
私たちの厳かな儀式へ来たり給え。
然り、インドラよ、
儀式へ来たり給え。
8 心地よき祝汁の捧げ物へ、
馬を駆って来たり給え。
勝利の祭司たちが取り囲む、
あの聖なるイチジクの木へ。
彼らが今も、私たちのために
勝利者でありますように。
ただちに牛たちは乳を注ぎ、
大麦の粉は整えられる。
汝のために、ヴァーユよ、
牛たちが痩せ衰えることは決してない。
汝のために、
彼らが干上がることは決してないのだ。
9 汝のこれらの牡牛たちは、
強靭な腕を持つヴァーユよ、
汝の流れの渦の中で、
速やかに飛翔する。
その威力を増大させながら。
馬もなく、
荒野を突き進み、
誰の叫び声も
止めることのできぬ快速。
それらは、太陽の光線の如くに、
その途上で制御しがたく、
両手をもってしても、
抑え込むことは困難なのだ。
解説
最速の風と最強の武力が手を組み、祭壇の熱気と光の渦の中へとなだれ込んでくる、絶大な躍動感に満ちた構成の讃歌です。
* 1–6節:光を纏う酒と、二神一体のパイプライン
1〜3節では、何千何万という馬群を率いて駆けつけるヴァーユの圧倒的なスケールが描かれます。2節で絞られたソーマが「目も眩む光を纏って流れる(clad in its refulgent light)」という視覚表現や、6節で羊毛の濾過器をすり抜けていく雫の繊細な美しさは、言葉の質感として非常に洗練されています。4〜5節では、ヴァーユだけでなくインドラも同じ戦車に同乗し、「最初の一杯(the first draught)」を分かち合う、二神一体の最も強力な同盟関係が示されます。
* 7–9節:眠りを切り裂く音と、制御不能な光線の駿馬
7節の描写が極めて印象的です。風の神は「眠りこけている無知な者たちの家(all the slumberers)」を容赦なく通り過ごし、覚醒して「絞り石の音を響かせている家」にだけ、インドラとともに舞い降ります。意識を研ぎ澄ませている者だけが、神の訪れ(インスピレーション)を享受できるという鋭い対比です。そして9節、ヴァーユの駆る馬たちは「太陽の光線のように、誰の手をもってしても制御不能な快速(hard to be checked, like sunbeams)」として描かれ、圧倒的なスピード感とともに讃歌を締めくくります。
7節の「怠惰に眠りこけている奴らの家は全部無視して、絞り石の音を響かせて覚醒している家(表現者)のところにだけ舞い降りる」という表現、そして9節の、ヴァーユの引き連れる情熱は「太陽の光線のように、何者にも抑え込むことはできない」という描写、4000年近く経っても古さを感じさせないですね。




