第1巻 第134讃歌 風神ヴァーユ讃歌(最速の目覚め篇)
1 ヴァーユよ、
快速の駿馬たちに
汝を速やかに
私たちの宴へと
運ばせ給え。
私たちが注ぐ祝汁を、
あのソーマの最初の一杯を、
誰よりも早く
飲み干すために。
私たちの歓喜の賛歌が、
真実を見極め、
高く歌い上げられて、
汝の心を歓ばせますように。
馬たちに引かれた
戦車とともに、
ヴァーユよ、
この贈り物のもとへ、
祭祀を行う者の
贈り物の元へと来たり給え。
2 歓びをもたらすあの雫が、
ヴァーユよ、
汝を歓ばせますように。
霊妙にして、
完璧に整えられ、
天へと向けられた、
牛乳と混ざり合い、
天を求める力強き雫が。
望みを叶える
あの霊妙なる助けが、
私たちの熟練した力に
付き従いますように。
固く結ばれた馬たちが、
私たちの祈りを
叶えるためにここへ来る。
彼らは私たちの歌う賛歌に、
その声を合わせるのだ。
3 二頭の赤毛の駿馬を、
ヴァーユは繋ぐ。
ヴァーユは二頭の
紫に輝く駿馬を、
快速の足を、
戦車へと繋ぐ。
梶棒を引くために、
最も優れた駿馬を、
梶棒へと繋ぐのだ。
知性を目覚めさせ給え、
まるで恋人が、
眠れる愛する者を
揺り起こす如くに。
天と地を照らし出し、
暁の女神たちを
輝かせ給え、
栄光のために、
暁の女神たちを
輝かせ給え。
4 汝のために、
輝かしい暁の女神たちは、
遥か彼方の空で、
その美しい衣を、
驚異の光線の中に
広げゆく。
生まれたばかりの光線に、
鮮やかに彩られながら。
汝のために、
不老不死の蜜を出す牛が、
すべての豊かな財宝を、
乳の如くに注ぎ出す。
汝はマルート(Marut)の
軍勢を、
あの胎内から、
天の胎内から
生み出したのだ。
5 汝のために、
清らかで、輝かしく、
速やかに流れる
ソーマの雫が、
そのみなぎる力をもって、
自らを混ぜ合わせんと
急ぎ足で進む。
水と混ざり合わんと、
急ぎ足で進むのだ。
疲れ果てた臆病者さえも、
汝に幸運を祈り、
速やかに逃げ去ろうとする。
汝はその掟によって、
あらゆる世界から、
然り、至高の神々の
世界からさえも、
私たちを護るのだ。
6 誰よりも先を行く
ヴァーユよ、
汝は誰よりもまず最初に、
これら捧げられた
ソーマの祝汁を
飲む権利を持つ。
注がれたあの祝汁を
飲む権利を持つのだ。
然り、罪の汚れから
自らを解き放ち、
汝を呼び求める、
すべての部族によって
注がれた祝汁を。
汝のために、
すべての牛は乳を搾られ、
ソーマと混ぜるための乳を、
バターと乳を注ぎ出すのだ。
解説
目に見えぬ速さで空間を支配し、万物を覚醒させる「風」の神格化であり、自然の圧倒的な生命力と洗練された美意識が融合した、極めて鮮烈な構成の讃歌です。
* 1–3節:最速の紫の駿馬と、愛の目覚め
1節から、ヴァーユが「最初の一杯(the first draught)」を飲む特権を持つ者として、最速で駆けつける様子がプロットされています。3節のビジュアルが秀逸で、風の神が戦車に繋ぐのは「赤毛」と「紫(purple)」の駿馬です。この色鮮やかな手綱を捌きながら、神が人々の知性を揺り起こす描写を「まるで恋人が眠れる愛する者を揺り起こす如くに(as when a lover wakes his sleeping love)」と表現するセンスは、官能的でありながらどこまでも上品で、息を呑むほどの美しさに満ちています。
* 4–6節:光の衣の広がりと、至高の防壁
4節では、風が吹き抜けることで、遥か彼方の空で暁の女神たちが「光の衣」を鮮やかに広げていく夜明けの光景が、パノラマのように描かれます。さらに5節、風の掟は地上の人間だけでなく、「至高の神々の世界(the world of highest Gods)」からさえも人間の領域を護る絶対的な境界線(防壁)として機能します。6節で、すべての部族が罪を洗い流し、清らかな乳を搾って最速の風の神を迎える結びは、静謐でありながら圧倒的な調和を感じさせます。
3節の、暗闇を吹き飛ばして新しい朝の知性を目覚めさせる描写を、「恋人が、ベッドの中で眠っている愛しい人の肩を優しく揺り起こす瞬間」に重ね合わせる比喩、昔から人間はそんなに変わらないようですね。




