第1巻 第136讃歌 ミトラ・ヴァルナ讃歌(天の秩序と調和篇)
1 豊かで、最も優れた敬意を、
讃歌と供物を、
不眠の眼を持つ二神へ、
最も甘美なるものを、
恵み深き二神へと捧げよ。
油の流れる川をもって崇められ、
あらゆる祭祀で称えられる主たち。
彼らの高貴なる帝国の権能は、
何ものにも冒されず、
その神性は、
決して侵されることはない。
2 広大なる太陽のために、
より広やかな道が切り開かれた。
聖なる法の道は、
その光線によって保たれる。
(万人の)眼は、
バガ(Bhaga)の光線によって
保たれるのだ。
天に揺るぎなく据えられた、
ミトラ(Mitra)の館、
アリヤマン(Aryaman)と
ヴァルナ(Varuṇa)の館。
そこから彼らは、
称賛に値する大いなる生命力を、
人々が称えるべき
生命の権能を授けるのだ。
3 輝かしく、天なる、
人々を支える母アディティ(Aditi)とともに、
日ごとに来たり給え。
眠ることなく見守る汝らよ、
日ごとに来たり給え。
燦然たる力を、
汝らは手に入れた。
恵みを授ける主、
アディティの息子たち(Āditya)よ。
人間を動かす者、
慈悲深きミトラとヴァルナ、
人間を動かすアリヤマンよ。
4 このソーマが、ミトラと
ヴァルナにとって、
最も甘美なるものでありますように。
祝杯の席で、
彼はその分を享受する。
神々の中で、
神として分かち合いながら。
すべての神々が心を一つにし、
今日、歓びとともに
これを受け入れますように。
それゆえ、王たちよ、
私たちが求めるものを成就させ給え。
義なる者たちよ、
私たちのあらゆる望みを。
5 敬意をもって、
ミトラとヴァルナに仕える者、
その者を傷つけることなく、
苦難から丹念に護り給え。
惜しみなく差し出す者を、
苦難から護り給え。
己の掟に従い、
真っ直ぐに歩む者を、
アリヤマンは手厚く護る。
称賛の言葉で彼らの奉仕を飾り、
讃歌をもって
それを美しく彩る者を。
6 私は高貴なる天(Dyaus)を、
天と地を、
ミトラと、恵み深きヴァルナを、
慈悲深く、情け深き
あの御方を崇めよう。
インドラを称えよ、
アグニを称えよ、
バガと、天なるアリヤマンを称えよ。
私たちが長く生き、
付き従う子孫に恵まれますように、
ソーマの助けとともに、
豊かな子孫に恵まれますように。
7 神々の助けとともに、
今も傍らにあるインドラとともに、
私たちがマルート(Marut)とともに、
自ら輝く者とみなされますように。
アグニ、ミトラ、ヴァルナが、
私たちに庇護を与えてくれますように。
私たちが、そして私たちの
豊かな領主たちが、
これを得ることができますように。
解説
雷神インドラの武勇とは対照的に、宇宙の絶対的な法則(法)と、天空から万物を見守る秩序の神々を描いた、極めて品格高く整った構成の讃歌です。
* 1–3節:不眠の見張り手と、太陽の切り開く道
1節の「不眠の眼を持つ二神(the watchful Twain)」という表現が極めて象徴的です。ミトラとヴァルナは、人間の善悪や世界の調和を昼夜問わず監視する不眠の守護者です。2節では、太陽の運行さえも彼らの司る「聖なる法(holy law)」に従って整えられ、天上に揺るぎない館を構えている様子が静かに描かれます。3節で登場する母神アディティは「無限・無縛」を意味し、その息子たち(アディティヤ神群)が燦然たる力で世界を支えています。
* 4–7節:真っ直ぐに歩む者への手厚い保護
5節のプロットには、詩人の倫理観が色濃く反映されています。神の掟に従い「真っ直ぐに歩む者(acts uprightly)」や、言葉を美しく飾って歌を捧げる者は、いかなる苦難からも手厚く庇護されます。6〜7節では、天と地、インドラ、アグニ、マルートといった主要な神々が総出演し、秩序ある世界で人間が健やかに子孫を繁栄させ、安全な庇護のもとで暮らしていく平穏な祝福で結ばれます。
この讃歌では世界の秩序と調和を司る二大神「ミトラ(契約・友情の神)」と「ヴァルナ(宇宙の法・秩序の神)」を軸に、アディティ(無限の母神)の子ら「アディティヤ神群」を称える全7節の讃歌で、暴風や雷撃の激しさとは一味違う、澄み渡る天空の秩序と、完璧な守護をもたらす神々の威厳が、静かに描かれています。




