第1巻 第179讃歌 ラティ(愛)讃歌(アガスティヤとローラパームドラーの情愛篇)
お待たせ。第1巻 第179讃歌を届けるぜ!
今回贈る第179讃歌は、『リグ・ヴェーダ』の中でも異彩を放つ**「ローラパームドラー(妻)とアガスティヤ(大聖仙)」**の夫婦対話歌だ。
長年の修道に没頭して冷淡になった夫アガスティヤに対し、妻ローラパームドラーが「老いが身体の美しさを損なう前に、愛を交わし子孫を残してほしい」と訴えかけ、アガスティヤが禁欲と愛欲(生殖と家庭の義務)の調和を受け入れる様子が歌われている。
※英文の原本では3〜4節がラテン語に翻訳されていたが、今回はサンスクリット原典の語義に忠実に現代日本語の逐語訳へと復元・変換して組み上げたぜ!
今回も1語1語の意味を正確に写し取る**「現代語の逐語訳」で短尺改行ビートを保ちつつ組み上げ、解説パートはカクヨムの読者へ向けた丁寧な「です・ます調」**で整えておいたぜ。カクヨムのエディタへ、そのまま叩き込んでくれ!
第1巻 第179讃歌 ラティ(愛)讃歌(アガスティヤとローラパームドラーの情愛篇)
1
【ローラパームドラー】
「多くの秋(歳月)を、
我が身は夜に朝に、
老いをもたらす夜明けらを通じて、
骨折って勤しんできた。
老いは我らの身体の美しさを害する。
されば夫らは、
己の妻らに近づくべきなのだ」
2
【ローラパームドラー】
「かつて神々とともに、
不滅の真理を語りし、
法を全うする古の男たちすらも——
彼らは決定(修道)したが、
終わりを達成しなかった(命を絶やさなかった)。
されば今、
妻らは己の夫らに近づくべし」
3
【アガスティヤ】
「神々が助け給う労苦(修道)は、
無益(徒労)ではない。
我らはあらゆる闘争(試練)を克服しよう。
百の術策(技法)の戦いにおいて、
互いに結合する二つの部分(男女)を動かしつつ、
我らが打ち勝たんことを」
4
【アガスティヤ / 語り手】
「祈りに耽り、(欲望を)抑制する我に、
あちらから、あるいはこちらから、
欲望(愛情)が襲いかかった。
ローラパームドラーは、
己の牡牛(夫アガスティヤ)を引き寄せたのだ。
思慮なき(狂おしき)彼女は、
息荒く佇む思慮深き(不滅の)男を飲み込む」
5
【弟子】
「我らの心の中に飲み込まれた、
最も近くにあるこのソーマに我は乞う。
我らが犯したあらゆる罪を宥め給え。
まことに、死すべき人間は、
多くの欲望に満ちているのだから」
6
【語り手】
「アガスティヤは、かくのごとくに、
強き努力(道具)をもって労苦し、
子孫と、命と、力を望みつつ、
大いなる威力の聖仙は、
双方の形態(修道と家庭)を慈しみ、
神々から己の祈りの成就(真実の祝福)を獲得したのだ」
解説
第179讃歌は、『リグ・ヴェーダ』の中でも異彩を放つ「ローラパームドラー(妻)とアガスティヤ(大聖仙)」の夫婦対話歌です。
長年の修道に没頭して冷淡になった夫アガスティヤに対し、妻ローラパームドラーが「老いが身体の美しさを損なう前に、愛を交わし子孫を残してほしい」と訴えかけ、アガスティヤが禁欲と愛欲(生殖と家庭の義務)の調和を受け入れる様子が歌われています。
※3〜4節の性描写部分は英語訳原文ではラテン語に翻訳されて伏せられていましたが、本書ではサンスクリット原典の語義に忠実に現代日本語の逐語訳にしました。
全6節というコンパクトな構成の中に、ヴェーダ時代における「禁欲的修道」と「家庭・生殖の義務」という二つの価値観の相克と見事な調和が描かれた、極めて人間味あふれる名讃歌です。
* 1–3節:老いゆく美しさと、妻の情熱的な訴え
1〜3節では、長年夫に仕え修道を支えてきた妻ローラパームドラーが、老いによる容姿の衰えを憂い、「古の大聖仙たちですら命を絶やさず妻を愛した」として夫アガスティヤに夫婦の愛を求めます。アガスティヤも神々の保護を確信し、妻の愛を受け入れます。
* 4–6節:欲望の受容と、「双方の務め(二つのヴァルナ)」の達成
4〜6節では、修道に身を捧げていた聖仙アガスティヤが妻の熱意にほだされ、生殖の生命力を解放します。6節の「双方の形態(二つのヴァルナ / 両者の生活)」とは、聖仙としての神事(精神)と、家長としての生殖・繁栄(世俗)の双方を完璧に全うしたことを意味しており、神々から真実の祝福を得て締めくくられます。
1–6節の「極限まで精神(修道)を研ぎ澄ませたヒーロー(アガスティヤ)が、パートナーの熱い愛と現実の生(命の継承)を受け入れることで、より完璧で強大な完全体へと昇華する」という人間味溢れる讃歌です。




