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リグ・ヴェーダ 詩訳 ― 火の神が歌う世界の始まり  作者: はまゆう


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第1巻 第158讃歌 アシュヴィン双神讃歌(ディールガタマスの難局生還篇)

1

二人のヴァス神(善神)よ、

思慮に満ちた二人のルドラ神よ、

強大なる補強者たるおふたりよ、

我らの傍らに立つ時、

我らに授け給え。

ウチャティヤの息子アウチャティヤが、

汝らに乞う富を。

偉大なる助け手よ、

汝らが惜しみない援助をもって、

前進して来る時に。

2

ヴァス神たちよ、

汝らの恩恵に対して、

誰が何を贈り得ようか。

牛の場所(祭壇)にて、

汝らが崇拝を通して与えてくれるものに対して。

我らのために、

富に満ちた理解(叡智)を目覚めさせ、

我らの切望を満たす心をもって、

来たり給え。

3

かつてツグラの息子のために、

汝らの海を渡る強大な戦車が仕度され、

水の中に置かれたように。

我もまた汝らの庇護と保護を得んことを。

翼ある飛翔をもって、

英雄が己の軍勢を求めるように。

4

我のこの称賛が、

ウチャティヤの末裔を護らんことを。

翼をもって飛ぶこのおふたり(双神)が、

我を疲弊させ尽くさぬように。

十重に積み上げられた木が、

我を焼き尽くさぬように。

汝らのために固定され、

それが立つ地面を噛む時に。

5

母性あふれる河川らは、

ダーサ(敵対者)らが我を固く縛り、

投げ入れた場所であるのに、

我を呑み尽くしはしなかった。

トライタナが我の首を切り裂こうとした時、

そのダーサは自らの胸と肩とを負傷させたのだ。

6

ママターの息子、

ディールガタマスは、

人間の第十の世代(晩年)において、

長寿を得た。

彼は目指す終わりへと届こうと励む、

水らのブラフマン(司祭)であり、

水らの御者(導き手)である。



解説

作者である大賢者ディールガタマス(ウチャティヤの息子 / マーマテーヤ)の個人的な危機と奇跡の救出劇が歌われる、ヴェーダの中でも屈指にドラマチックな一曲です。奴隷ダーサたちに縛られ川に投げ入れられ、木で焼かれそうになり、刺客トライタナに首を切り落とされそうになりながらも、アシュヴィン双神の加護によって生還した壮絶なエピソードが歌われています。

* 1–3節:海を渡る戦車と、惜しみなき恩寵

1〜3節では、絶体絶命の危機に瀕した詩人が、かつて海で溺れかけたツグラの息子ブジュユを救ったアシュヴィン双神の「水上の戦車」の奇跡を引き合いに出し、強力な保護と救援を切願します。

* 4–6節:火責め・水責め・暗殺を生き延びた長寿の詩人

4〜6節はヴェーダ聖典の中でもきわめて具体的な伝承が語られるハイライトです。敵対するダーサ(奴隷・非アーリヤ人)やトライタナによって縛られ、川へ投げ込まれ、木で焼かれそうになり、首を撥ねられそうになるという凄惨な試練に見舞われながらも、神々の威光によって刺客は自らを傷つけ、川は彼を飲み込まず生還を果たしました。「永劫の暗闇」を意味する名を持つディールガタマスが、人間の第十世代(晩年)まで生き抜き、命の水の導き手となった勝利が歌われます。

4–5節の「あらゆる火責め、水責め、裏切りの刃を神威によって退け、刺客の刃をそのまま敵の胸へと跳ね返す」という逆転劇はとてもドラマティックです。


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