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リグ・ヴェーダ 詩訳 ― 火の神が歌う世界の始まり  作者: はまゆう


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第1巻 第157讃歌 アシュヴィン双神讃歌(朝の目覚めと生命の医神篇)

1

アグニ(火神)は目覚めた。

スーリヤ(太陽神)は地上より昇る。

強大にして燦然たるウシャス(曙光)は、

そのすべての光をもって輝き渡った。

アシュヴィン双神は、

走行のために己の戦車を仕度した。

サヴィトリ(刺激神)は、

民を様々の道へと動かした。

2

アシュヴィン双神よ、

汝らがその強大なる車を仕度する時、

おふたりよ、

我らの活力(権力)を、

蜂蜜とバターで潤し給え。

我らの信仰(献身)に、

戦いにおける勝利の力を与え給え。

我らが英雄たちの略奪戦(戦い)において、

富を勝ち得んことを。

3

我らの近くへと来たる、

讃えられしアシュヴィン双神の三輪の車。

蜜を積み、

速足の駿馬たちに引かれる車。

三つの座席をもち、

裕福にして、

あらゆる歓びを授けるもの。

それが我らに、

牛らに、

そして人々に、

幸い(福祉)をもたらさんことを。

4

アシュヴィン双神のおふたりよ、

我らに向けて栄養(糧)をもたらし給え。

蜂蜜の露を滴らせる汝らの鞭をもって、

我らを振りかけ潤し給え。

我らの命の日々を延ばし、

我らの過ち(罪)を拭い去り給え。

我らの敵を滅ぼし、

我らの仲間、我らの友となり給え。

5

汝らは生物の雌の内に、

生命の胎児(種子)を蓄える。

汝らはそれを、

すべての生きとし生けるものの内部に置く。

きわめて強大なるアシュヴィン双神よ、

汝らは送り出した、

火を、

森の君主たち(樹木)を、

そして水らを。

6

汝らは我らを癒やすための、

薬を持つ医術の師(医神)であり、

御者の巧みな技術を持つ、

戦車の御者である。

力強きおふたりよ、

祭品をもたらし、

自らの心をもって、

汝らの前に贈り物を注ぎ出す者に、

支配権(権力)を与え給え。



解説

朝の訪れとともに火神アグニが目覚め、太陽スーリヤが昇り、ウシャス(曙光)とサヴィトリ(刺激神)が動く中、三輪の戦車で駆け巡るアシュヴィン双神。蜜の鞭で人々を潤し、万物に生命の種子を宿らせ、名医(医神)として病や罪を癒やすという、輝かしい生命力に満ちた一曲です。

全6節という軽快かつ力強い構成の中に、朝の訪れを告げる宇宙の躍動と、生きとし生けるものへ生命力を吹き込むアシュヴィン双神の慈悲が鮮やかに描かれています。

* 1–3節:世界が目覚める朝と、三輪の聖なる戦車

1〜3節では、アグニの点火、太陽の昇騰、黎明の輝き、人々の活動という「朝の全景」がダイナミックに提示されます。その中でアシュヴィン双神は、蜜を満載した「三輪・三座席」という独特の神秘的な戦車を駆り、人々と家畜に幸福をもたらすべく駆け出します。

* 4–6節:甘露の鞭と、万物に生命の種子を宿す医神

4〜6節では、双神の具体的な恩寵が歌われます。蜜の露を撒き散らす「甘露の鞭」で命を力づけ、病や過ちを洗い流す「医神(医術の師)」としての側面、さらには雌の体内に生命の種子を宿らせ、火や水や樹木を世界へ放つという「万物の生命の源泉」たる神性が力強く宣言されます。


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