第1巻 第155讃歌 インドラ・ヴィシュヌ讃歌(時空を回す車輪と不到達の足跡篇)
1
大いなる英雄と、
ヴィシュヌのために、
酒を注ぎ、
詩歌を高らかに歌え。
欺かれぬ二神は、
高き駿馬に駆られるごとし。
山々の高き嶺の上に、
その足を印して。
2
ソーマを捧げる者は、
汝らの凄まじい突進を遠ざける。
インドラとヴィシュヌよ、
全力を尽くして来たり給う時。
弓引くクリシャーヌの矢が、
死すべき運命の人間に
向けられようとも、
汝らはそれを、
遥か彼方へと逸らすのだ。
3
これらの奉納物は、
彼の力強き男気(勇気)を増す。
彼は天と地(父母)を引き寄せ、
甘露の流れを分け与える。
子でありながら、
父(天神)の高き名を低くし、
第三のものは、
天の光の高みに輝く。
4
我らは彼の男気を讃える。
強大なる者、
保護者にして害なき者、
恵み深く優しき者を。
命と自由のために、
大股に踏み出し、
三歩をもって、
地上の領域を跨ぎし者を。
5
死すべき身なる者が、
光を見る彼のふたつの足跡を追う時、
ただただ驚きに身を震わせる。
だがその「第三の足跡」へは、
誰も近づくことすら叶わない。
翼をもって空を飛ぶ、
羽ばたく鳥たちでさえも。
6
丸き車輪のごとく、
彼は素早く巡らせる。
九十の競走馬を、
四倍にして(三百六十を)。
膨大な姿へと育ち、
讃美を歌う者たちとともに。
もはや幼子にあらぬ若者は、
我らの呼び声に応じ来たる。
解説
第155讃歌は、大英雄インドラと大歩神ヴィシュヌの二大共闘神に捧げる全6節の壮大な讃歌です。
弓引く敵の矢を跳ね返し、天と地(父母)に恵みをもたらし、そして「90の4倍(360日=1年)」という時空の車輪を回すダイナミックなスケール感。4000年近い昔に90の4倍で1年という概念があったことも驚きます。
人間の目が追えるのは二歩目まで、羽ばたく鳥すら届かない「前人未到の第三の足跡」のという表現も興味深いです。
全6節の中に、インドラの武勇とヴィシュヌの宇宙的スケール、そして時間と天空を統べる深い哲学的象徴が鮮やかに融合した傑作讃歌です。
* 1–3節:共闘する二神と、矢を弾く神威
1〜3節では、山々の嶺に降り立つインドラとヴィシュヌの雄姿が描かれます。ソーマの酒を捧げる信徒を守るため、弓手クリシャーヌ(天空の護衛者)が射る危険な矢すら遠くへ逸らすという、圧倒的な保護の力が示されます。
* 4–6節:前人未到の足跡と、時を回す車輪
4〜6節は本讃歌の圧巻のクライマックスです。ヴィシュヌの三歩のうち、人間が感知できるのは第一・第二の足跡までであり、最高の「第三の足跡」は空を飛ぶ鳥すら届かない神聖不可侵の領域です。さらに6節では「90×4=360(1年の日数)」という時間の車輪を回す若者(神)の姿が描かれ、世界を統括する巨大な神性が高らかに歌われます。
5節の「誰もが二歩目までは目を奪われて追いかけられるが、最高峰の『第三の足跡』は鳥すら届かない絶対領域に聳え立つ」という描写は誰にでも届く分かりやすい面白さで読者を惹きつけつつ、作品の奥底には誰にも真似できない圧倒的な「独自の世界観(第三の足跡)」を秘めています。




