第1巻 第154讃歌 ヴィシュヌ讃歌(全宇宙を跨ぐ三歩の歩み篇)
1
我は讃えん、
ヴィシュヌの大いなる業を。
地上を測り終え、
高き天の集い処を支えし者を。
大股に跨ぎ、
三たび、
その足跡を印して。
2
この偉業のゆえに、
ヴィシュヌは讃えられる。
山々を彷徨う、
恐ろしき猛獣のごとくに。
その三つの広大なる歩みの中に、
生きとし生けるすべての生命が、
住処をもつ。
3
讃歌よ、高まりて、
力となれ。
山々に住まい、
大股に歩む牡牛ヴィシュヌへ。
ただ独り、
三歩をもって測り終えし者へ。
広く遥かに伸びゆく、
この共有の住処(世界)を。
4
甘さに満ち、
不滅にして、
望むままに歓びをもたらす、
三つの足跡をもつ者。
ただ独り、
三重の領域を支える者。
地と、天と、
生きとし生けるすべての生命を。
5
我は至らん、
彼の愛されし館へ。
神々に仕える人々が、
歓喜する場所へ。
大歩の神の最高峰の足跡には、
甘き蜜の泉が、
深く湧き出ているのだから。
6
我らは行きたい、
汝らの住処へ。
多角の素早き牛らが、
集う場所へ。
大股に歩む牡牛の、
最上の館が、
そこから我らを、
雄大に照らし出している。
解説
宇宙を跨ぐ「三歩の偉業」と最高峰に湧き出る蜜の泉
全6節という研ぎ澄まされた構成の中に、後世のヒンドゥー神話(神話劇トリヴィクラマ)の原点となったヴィシュヌ神の「宇宙的スケール」が鮮烈に描かれた、ヴェーダ聖典屈指の名讃歌です。
三歩で全宇宙(地・空・天)を跨ぎ測り取ったという、あまりにも有名な「三歩の偉業」が描かれています。山々を疾走する恐ろしい野獣に例えられつつも、その最上の足跡には蜜(甘露)の泉が湧き出るという、圧倒的なスケール感と神秘的な美しさが横溢する一曲です。
* 1–3節:天と地を測り取る「三歩の歩み」と恐ろしい威光
1〜3節では、ヴィシュヌが三歩で全宇宙を跨ぎ測り、世界を支えたという壮大な大業が歌われます。「山々を徘徊する恐ろしい猛獣」に例えられる圧倒的な威圧感と、その足跡の中にすべての命の住処を包み込む包摂的な神性が、見事な対比で描かれます。
* 4–6節:不滅の甘露と、神々の光り輝く最高峰
4〜6節では、ヴィシュヌの残した「三つの足跡」の神秘が明かされます。最高の足跡(天界の頂点)には、神々を歓喜させる「甘き蜜(ミード/ソーマ)の泉」が湧き出ています。人々はその聖なる光輝の館を目指し、永遠の祝福を求めて祈りを捧げて締めくくられます。




