第1巻 第152讃歌 ミトラ・ヴァルナ讃歌(足なき乙女と神聖なる謎篇)
1
汝らの着る衣は、
豊かな脂に満ちている。
汝らの深慮は、
途切れることがない。
ミトラとヴァルナよ、
あらゆる偽りを打ち破り、
汝らは永遠の法に、
深く従うのだ。
2
神々のこの威力を、
誰も理解し得ない。
賢者が発した、
砕く言葉は真実だ。
恐ろしき四角の雷鎚は、
三角の武器を撃ち倒し、
神々を憎む者は、
真っ先に倒れて滅び去る。
3
足なき乙女は、
足ある生き物に先立つ。
ミトラとヴァルナよ、
誰がこの仕業に気づこうか。
未だ生まれざる子は、
この世界の重荷を支え、
法を全うし、
偽りを打ち破る。
4
我らは見る。
乙女らに愛される彼を。
常に前進し、
決して落ちぬ者を。
解けぬ広大な衣を、
その身に纏う者を。
ミトラとヴァルナの、
歓びに満ちた栄光を。
5
馬にあらずして生まれた、
解き放たれし駿馬。
背を高く躍らせ、
いななきつつ飛翔する。
若者たちは愛する、
思考を超えた神秘を。
ミトラとヴァルナの内に、
その栄光を讃えながら。
6
マーマテーヤに恵みを与える、
乳牛たちが、
祈りを愛する者を、
この世で繁栄させんことを。
儀礼に長けた者が、
食物となり、
アディティ(無縛の神母)を呼び、
我らを助けんことを。
7
ミトラとヴァルナよ、
愛と崇拝をもって、
この奉納物により、
神々たる汝らを歓ばせたい。
我らの祈りが、
戦いにおいて勝ち栗となり、
我らを栄えさせる、
天の雨をもたらさんことを。
解説
神秘の謎掛け(アニグマ)と、偽りを打ち砕く神々の深慮
全7節という構成の中に、古代ヴェーダの深い哲学的比喩と神秘主義が凝縮された、非常に深遠で美しい讃歌です。
* 1–2節:絶対的な「法」と、邪悪を討つ雷鎚
1〜2節では、永遠の法を護持する二大神の絶対性が歌われます。賢者の放つ真実の言葉は武器となり、「四角の雷鎚が三角の武器を砕く」という象徴的なイメージで、神意に背く邪悪や偽りが徹底的に排斥される様が鮮烈に描かれます。
* 3–5節:足なき乙女と、思考を超える飛翔の神秘
3〜5節は本讃歌最大のハイライトであり、古代の謎掛け(アニグマ)に満ちています。「足なき乙女(歩む足を持たぬ夜や黎明の光)」が生きとし生けるものを導き、「未だ生まれざる子(胎内にある命、あるいは夜明け前の太陽)」が世界の秩序を支えるという、極めて詩的なヴィジョンが広がります。馬の血統によらず生まれた駿馬(太陽や火の比喩)が天を駆ける様は、まさに人間の思考を超えた「神聖なる神秘」です。
* 6–7節:無縛の母への祈りと、恵みの雨
最後は、詩人マーマテーヤ(ディールガタマス)への祝福と、神母アディティへの呼びかけを通じて、人々に勝利と繁栄、そして大地を潤す恵みの雨をもたらすよう神々に切願して締めくくられます。
3節や5節に見られる「目に見える現象の裏に潜む、思考を超えた真理と神秘」という表現、4000年近い昔にすでに人類はそういうことを言葉にしていたことに驚きます。




